謎多きフタオチョウ(2021.10.11) | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

謎多きフタオチョウ(2021.10.11)

「謎多き」とは書いたものの、要は自分を含む蝶屋(虫屋)がこの蝶に未だ慣れていないということ
なんでしょうね。
図鑑ではオオムラサキやゴマダラチョウなど「身近な」タテハチョウの並びにあるので、生態も
似たような蝶なんだろうと思っていましたが、さにあらず。実に掴み難いヤツという印象です。
よく考えると、日本全土に居るような種類と比べると相当にかけ離れた存在なのだから、生態様式が
似ていないのは当然なんですよね。先入観をゼロにして付き合うべき蝶だと今は認識しています。

僕はこの1年しか見て来ませんでしたが(しかもたまに見ていた程度)、5~6月の幼態期、そして
6~7月の「2化目と言われる」成虫期には相当多くの個体を目にするものの、それ以外の時期には
ほとんど目に付きません。
今では自分なりに化数や発生パターン、大体の生態を組み立ててはいますが、ここではそれらを
述べないことにします。僅か1年の観察ですし、謎が残っている方が面白いですしね。
一つだけ大胆なことを言うと、冬期以外はほぼ周年成虫が居るというのが正解なのかなあ。
「1化目と言われる」母蝶の産卵期が実はかなり長期に及ぶことがこの蝶の生活史を分かり難く
している理由の一つのような気もしています。ミカドアゲハのような要素もありそうだし(ボソボソ)。

話を膨らませると「奄美での発生は自然拡散なのか」とか、「食樹としてのクワノハエノキへの
依存度が高まっているらしい?」とか壮大なナゾもありますがこれらも各自色々と考えてみると
実に面白いですよ。ただその前に現地でよく観察することをお勧めしますけどね。
一つ言っておけば前にも述べたようにアカボシゴマダラの脅威にはなり得ないということです。
6~7月に目の高さで両者がバトルし合う有名公園(木が低い人為空間のため、生態写真がよく
撮られる)、そしてバナナトラップの上で競合しているだけです。
大部分の人達はそれらに惑わされているわけ^^

ちょっとだけ今の様子を記しておきます。
10月初旬、クワノハエノキ中木の下枝で見つけた終齢幼虫。

5月の幼虫に比べると「仮面」の外側のツノがやや強く湾曲しているような感じも受けます。
やはり生きている時の仮面の黄色い縁取り、ツノ表面に付くコバルトブルーの小突起が美しいなあ。


この葉の近くではアカボシゴマダラの若齢幼虫も見つかりました。
競合が心配? 未だ言う人が居るだろうなあ^^

一方5月に幼虫が多かった自宅近くのヤエヤマネコノチチを見るも幼虫は全く居ません。食痕も無し。
ただ、蛹殻をなんと5個(寄生・捕食されたと思しきものも含む)も見つけてしまいました。全て目の
高さより下に付いています。


これらはそれなりに古く、少なくとも「3化目と言われる」9月頃に羽化したものではありません。
僕が幼虫を探していた5月には絶対に無かったので前年のものでもありません。間違いなく
今年6~7月の「大量」羽化期のもの(寄生されたり捕食されたのもその時)と思われます。
5月に僕は終齢幼虫しか採っていなかったので、その際に木の上部で若齢~中齢だったものが
僕が終齢幼虫探しを終えた後に下りて来て蛹化したものでしょう。
幼虫の出現期間は思っていたより長期に及ぶし、個々の成長速度も結構異なることも分かりました。
また蛹は探し難いと早合点して全くやりませんでしたが、なんだ探せば幾つかは容易に採れたんだな。

本種との付き合いは一旦ここで切りますが、地元九州に於いて地植えしたヤエヤマネコノチチや
クワノハエノキが十分に育った後に人工交配による周年飼育をいずれ試みてみたいと思います。
何たって僕はフタオ・コレクター(アフリカ区を除く)なので^^

もっと詳しく知りたい事や
理解できなかった事などございましたらお気軽にご連絡下さい。

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