蛾 | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

フジキオビ、九州脊梁山地にて自己初採集(2022.5.3)

GWに入る頃からやや肌寒い気候が続き山間部への出動は控えていましたが、今日辺りから気温が
上がるようなので九州(脊梁)山地のマイポイントに行って来ました。
山中でもさすがに5月ともなれば若葉の薄い緑がほぼ全山を覆うようになっています。

気温が上がり始めた頃にネットを構え、山道を歩き始めた途端に地面近くを飛ぶ何か白いチョウの
ようなものが視界に飛び込んで来ました。
「ん?」と目を凝らすとチョウではなく南方でよく見たモンシロモドキ類のような雰囲気で飛んでいます。
しかも、翅脈の黒条がやたら太く目立つ・・・

「おお、フジキオビだ!」とピンときたのでサッとネットを振るも空振り。慌てて2回、3回と振り直した
ところで捕獲成功。
果たして、ネットの中には目も覚めるほど美麗な、夢にまで見たフジキオビ(♂)が入っています。
しかもド完品。

「やった、フジキオビだ!」
もちろん自己初採集。チョウの珍品を採った時よりも遥かに大きな喜びが込み上げました。
昔から一度は採ってみたかったものの、日本産昼蛾の珍品というポジションを保っているので
なかなか出会うチャンスが無かったわけです。

本州・四国にもあまり産地が無いし、一応九州にも居ることにはなっているけれど、殆ど記録は
無いんじゃなかろうか。
まさか九州で、しかも地元のマイ・フィールドで採る日が来るなんて夢にも思いませんでした。
ううう、感無量・・・

その後は勿論フジキオビのみに照準を合わせてその辺りを徘徊しましたが、ボロ♂を追加したのみで
やはり珍品なんですねえ。
ただ、この時期に、この辺りで、こんな条件の下で、あんな飛び方をしているということを確認できた
だけでも大収穫です。

このフィールドでの楽しみがまた一つ増えました^^

ありゃ、オオミズアオ屋久島亜種が羽化しちゃった@@(2017.10.14)

昨日のこと、部屋の片隅から断続的に「ガサ、ガサ」という音がしているのに気付きました。
「何だろう?」
どうやら先日ようやく繭を作り終えたオオミズアオ屋久島亜種が入った箱の中から音が聞こえるようです。

箱を開けて中を見ると、一つの繭の中で羽化した成虫が繭を突き破ろうと頭部をしきりに突き当てて
いるのでした。
「え? もう羽化しちゃったの@@」

オオミズアオは基本的に年2化で、去る7月に捕獲した夏型から生じた次世代なので来年に春型として
羽化するのだろうと思っていました。
今羽化したということは、屋久島産は年3化ということなのだろうか・・・

驚くことに結構強固な繭の繊維を僅か数分でかき分けて頭部が現れてきたので、慌ててデジカメを
掴みシャッターを切りました。
ピントが少し外れているのは虫の動きが早く、捉えるのがやっとだったからです。
クシヒゲ状の触角が細いので♀ですね。



頭部が現れると数秒で体全体が脱出してしまったので、僅か数枚の写真を撮るのが精一杯でした。
羽化直後は柔らかい無防備な体なので、天敵に襲われる前に素早く安全な場所を探して翅を伸ばす
必要があることを本能的に知っているのでしょう。

そして本日、新たに3♂が羽化してきました。
これをどう見るべきか。

虫は室内で飼育すると越冬するはずのものが秋に発生してしまうことがしばしば起こります。
今回のケースはこれなのか、あるいは3化目なのかちょっと判断に迷うところです。
屋久島では例えばミヤマカラスアゲハ(の一部)が間違いなく4化していますからオオミズアオが
部分的に3化であっても不思議ではないと思料します。
この辺りは確かめることが困難で、今後の課題にしたいと思います。

羽化した♂。
屋久島亜種らしい、マコトに素晴らしい黄色の翅^^

秋型だろうが異常羽化だろうが、ビカビカの屋久島亜種の標本を入手出来たので、これでイイのだ^^
♂も♀も標本が揃ったので、懸案だった問題が一つ片付きました。

最後に、一部の方への業務連絡です。
今季一回目のオークション出品を次週明けに行うとしていましたが、諸事情から1週間延期して
23日(月)にさせて頂きます。
ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

いよいよ繭を作り蛹化を始めたオオミズアオ屋久島亜種(2017.9.18)

飼育中のオオミズアオ屋久島亜種の終齢幼虫がいよいよ蛹への変態を始めました。
現在、ほぼ全てが繭を作り終えて中で蛹化したか、繭の作成中といった段階に入っています。

これは終齢になりたての頃の幼虫集団。餌替え時の一コマ。
巨大モスラが苦手という貴方。虫の楽しさを少々逃しちゃってますよ。

そして丸々と太った繭作成直前の終齢幼虫。中指以上の大きさにまで成長しています。
体がやや透き通った薄い色となり、アゲハチョウ類と同様にドロッとした軟便を排泄したら最終の
喰い込み完了、いよいよ繭の作成準備に取り掛かります。


次の段階になると幼虫は著しく黒化が進み、2~3割体長を縮ませます。
そして適当な場所(ホントにテキトー^^)を選び、糸を吐きながら繭を紡ぎ(つむぎ)始めます。
枝の途中で近くの葉っぱを綴り合わせたり、根本まで下りて糞ガードのティッシュの中に潜り込んで
そのまま綴ったり・・・

これは飼育ネットの壁に接した葉を綴っている幼虫。
緑色だった体色が褐色を帯びているのが判りますね。

上記のように繭を作る場所は様々ですが、クスサン(繭の俗称:スカシダワラ)のように何も無い所に
剥き出し状態で繭を作ることはありません。ヤママユガやシンジュサンの繭に近い感じですね。
繭の状態の例。テキトーの極致^^

餌立てのペットボトルの表面を一部使って作った繭があったので引き剥がしたところ。
透き通った繭の壁面を通して、「く」の字状になった前蛹が見えます。

事故で繭を作り損ねた前蛹をティッシュで作った寝床に転がしておいたら問題無く蛹化しました。
蛹頭部に現れた触覚の形状(クシヒゲ状)から♂と分かります(襟巻のように見える^^)。
♀ならこれが「糸状」となります。


これは蛹化直後の別個体。これも♂ですね。
コロンとした蛾の蛹もカワイイもんです^^(蛾の蛹の形は大体がこんな感じ)

飼育を始めて1カ月半。やっと終わりが見えてきました。
大量の餌の調達はちょっと苦労しましたが、成果物(=繭)が出来てくると充実感で一杯になります。
来春の羽化が実に楽しみ。なんたって屋久島亜種ですから^^

マルマル・モリモリ。終齢となったオオミズアオ屋久島亜種の幼虫(2017.8.30)

連チャンの「蛾」カテゴリーです。
一体、何屋なんじゃ、ワシ。

現在飼育中のモスラ(^^)、オオミズアオ屋久島亜種の幼虫が遂に終齢に達してきました。
孵化してほぼ1カ月、マルマル・モリモリとした図鑑等でもよく見慣れた形状の巨大幼虫に成長して
います。

たまには1泊採集で家を空けることもあるので餌替えのタイミングが難しかったり、真夏の飼育
なので蒸れやウィルス対策に余念がありませんが、なんとかここまで漕ぎ着けました。
本種の飼育は実に中学生時代以来なので、この形、懐かしいことこの上無し。

ちょっと前までの容器飼いの様子。
特にこの時期は密閉なんかして飼っちゃダメよ。

大型モスラの場合、やはり大変なのは大食漢であることで、狭い容器では中に入れた食草(今回は
ソメイヨシノ)が直ぐに食い尽くされるのである程度成長したら大型の飼育容器を用意しなければ
なりません。

その強い援軍がコレ。
じゃーん、100均の洗濯物入れです^^


これの秀逸さはかつてフチグロトゲエダシャクの飼育記事で語ったとおり。
安さ(そりゃあ100円だもの)、大きさ(本来の用途のため大容量)、通気性(穴だらけ)という
およそ大量飼育を目的とした飼育設備に求められる要素をほぼ完璧に備えた大ヒット商品(飼育系
虫屋にとって^^)なのです。

餌替えの場面。
もっと大きく、大きくなーれ。こっちは親鳥のようにせっせと餌運ぶからね^^



次のブログ登場は繭を作った頃かな^^

九州高山帯のヨシノキシタバ(2017.8.29)

数日前の月齢が良い頃、九州山地高山帯のナイターに行ってきました。
狙いはカトカラ(シタバ蛾種群)の中でも人気の高いヨシノキシタバです。

本種はブナ食いからも分かるように基本的には北方地域のカトカラなのですが、九州にも拘らず
マイポイントでは何故かほぼ例年姿を拝むことが出来ます^^
僕も首都圏在住中に何度もトライしたことがあるので事情はよく知っているのですが、本州でも
割と確実とされる産地(もちろんブナ帯)でも数は少なく、灯火に飛来しても単発の珍品というのが
蛾屋さんの一般的な認識です。

九州のブナ帯というのは本州に比べれば極めてチンケなものですが、マイポイントでは何故か
比較的密度が高いのです。条件さえ良ければまず外すことは無いくらいかな^^

しかも本州産に比べて一回り大型であるだけではなく、♀の変異が多いことに加えそのハデハデしさが
強烈ときています。
本州の蛾好きの友人から標本を懇願されることが多いのですが、当然と言えば当然の代物なのです。

本種を目的にしたナイターは年中行事なのですが、どうも九州本土の虫の発生具合(真夏の虫の)は
あまり良いとは言えない状況で、今年のヨシノキシタバは殆ど幕に来てくれませんでした。

そうした中でも来てくれた♀。


本種はカトカラの中でも美しい上、唯一♂と♀の斑紋様式が異なっており、それも魅力の一つと
なっています。
♂はそろそろ破損やスレが目立ち始めていますが、♀は丁度ビカビカの時期でラッキー^^
(♂は撮り忘れました・・・)

他に来たカトカラで面白いのがシロシタバ。
本州の蛾屋さんは見向きもしない(?)駄カトカラですが、九州では極めて珍品。
新鮮なるも残念ながら左前翅にカケがあるので採集せず。

これも面白いジョナスキシタバ。
九州産は少ない上、白化しており本州産を見慣れているとかなり異様に見えます。
当個体は黒帯紋が発達しているのでさらに異様。

今年は都合で真夏のカトカラ・ナイターには一度しか行けませんでしたが、離島生活予定の来年も
8月は地元(熊本)で過ごすつもりなので続けてしっかり狙うことにします^^

久々に多産した屋久島のサツマニシキ(2017.8.19)

今夏は屋久島において多くの虫が比較的多産しましたが、本邦最美麗蛾の一つ、サツマニシキも
久々に多く発生して目を楽しませてくれました。
 
メルマガ49号でも詳しく書いたとおり、今年はネキ・ポイントのリョウブの花が3年振りに
開花したのも本種を目にする機会が多かった理由の一つと言えます。
サツマニシキはリョウブの花を好んで訪れるからです。

下は2013年夏、リョウブの花を訪れたサツマニシキ(遠目注意^^)

これは今シーズン、林縁で見つけ思わず採集しそうになったサツマニシキ。
例によって展翅道具等も無いので諦めましたが・・・


久し振りに泡を吹く姿が見たくなり、リョウブの花に来ていたヤツを手に持ったところ。
ぶくぶく、ブクブク、BukuBuku・・・

以前、石垣島で♀を捕まえた際には翅の付け根以外に脚の先端部からも泡が吹き出してビックリ
したことがありましたが、今回は同様に♀なるも泡は翅の付け根部分からしか噴出しませんでした。
亜種が異なるほど産地が隔たると体の構造も違ってくるのだろうか・・・

(参考)
脚の先端から泡を出した石垣島産の♀

本種は4亜種に分かれていますが全ての亜種のビカビカ標本を持っている人なんて居るのかしら。
いずれはその全ての飼育を目論んでいますが、材料集めも含め相当大変そう。無理かな?

オオミズアオ屋久島亜種の飼育を開始(2017.8.11)

かなり久し振りの「飼育室から」です^^

7月の屋久島ではナイターにオオミズアオ屋久島亜種が比較的飛来しました。
オオミズアオと言えば全体的に翅の地色が全面スカイブルーの美麗大型蛾として知られますが、
基本的に普通種なので標本箱の面積を相当に食ってしまうこともあり、あまり数多く標本に
されることは少ないようです。

そう言う僕も標本としては型を見る程度、本州産と九州産を1~2頭ずつ持っているだけだったと
思います。
しかし屋久島亜種となるとちょっと話は別。茶色(黄色)味が強く、何時か機会があれば
ビカビカの標本を得るために飼育してみたい蛾の一つでした。

従来飛来してくるのは何時も♂ばかりでしたが、今回図らずもハラボテの♀が飛来したため
急遽飼育を決意。
生かしてビニール袋に入れておいたところ、数十個の大きな卵を残してくれました。

それらは1週間の内には全て孵化、用意したソメイヨシノの葉に迷うことなく食い付きました。
ソメイヨシノは神社や公園など何処にでもあるので、調達が楽なのはとてもヨロシイ^^

早々と2齢、3齢となった幼虫達。

しかし、しかし、しかし、大変なのはこれから。
1匹が食う量はハンパないからイバラの道が待っているのも事実。
これが分かっているから実は今から憂鬱なのよねえ・・・

3齢になると図鑑等にあるような典型的なオオミズアオの幼虫の姿となります。
デカくなるんだ、これが・・・

なお来年度からは南の島に定住するので、思う存分に飼育が出来ます。
「飼育室から」カテゴリーからの発信も頻発すると思うので、飼育ファンの方はお楽しみに^^
勿論、カミキリを中心に甲虫類の幼虫の飼育もやりますよ。

八重山の美麗蛾、アカマダラヨトウ(2017.1.26)

展翅したいなあ、と思っていても時間・余裕の無い現況においては諦めざるを得ない蝶や蛾がかなり
存在します。
その一つが本日の話題、蛾の美麗種の一つのアカマダラヨトウです。

本種はハマユウ(ハマオモト)の葉や茎を食しますが、ハマユウを食べる蛾としては本土域にも多い
ハマオモトヨトウの方が著名で、本種は分布域が限られていることもあり一般的ではありません。
ただ、気象状況等の要因でたまには北上するようで、星のように存在する(^^)虫屋さんブログに
時々は登場するようです。

昨年西表島のポイントを歩いていると、林縁にポツンと立つハマユウを発見しました。
近付いた際に一べつすると若葉と茎の部分がグシャッと何者かに食われています。
「ああ、あれか・・・」
犯人は分かっています。いつかは一杯飼育して、一杯展翅してやろうと目論むアカマダラヨトウです。

ふと気付くと、葉っぱの先に羽化したばかりと思しき成虫が留まっているではないですか。
やはりキレイだなあ。


この時もグッとこらえて採集はしませんでした。
蛾の採集用具はもちろん展翅用具も持ってきていないし、その時間もありませんから。
「八重山在住時には見てろよ、ヒドイからな・・・」
一体何に対して恨み言を言っているのか分かりませんが、とりあえずは涙を呑んで諦めた次第。

なお本種の幼虫は複数頭が見られることが多いのですが、この株では1頭しか確認できませんでした。

一方、かつて波照間島で見たハマユウはと言うと・・・
やはり、飼育するならこんな株を見つけなきゃいけません。

こうした美麗蛾や蝶の飼育。そして「生」展翅。
早ければ来年からは出来るかなあ。

オキナワスカシバとか(2016.5.29)

西表島の原生林でベニボシカミキリの来そうなオキナワウラジロガシの古大木を見ていると、
たまに出会うのがオキナワスカシバ。

珍しいとも言われているようですが、そうでもないような^^
僕は毎年複数回は目にしますね。勿論しょっちゅう出会う虫でもないのですが。

現ステージは蝶・蛾の現地での生展翅が出来る状況にないためいつもスルー。
ハグルマヨトウ等と共に、早くたくさん展翅したい沖縄の蛾の一つではあります。

前種とは全く関係はありませんが、西表島で結構目に付くのがこれ。
日本最大のムシヒキアブ、メスアカオオムシヒキ。
オオバギの葉上に留まる♀。♂はやや小型で青いので、赤っぽい♀とは一見して区別出来ます。

石垣島では草原に近い環境でよく見ていましたが、西表島では原生林内のやや開けた小道や
ちょっとした空間によく居ます。
優雅に上下に大きく揺れながらダイナミックに飛ぶ姿には結構感動します。

本種の悪食さを現したのがコレ。
なんで♀同士が連結しているんだろうと近づいてみると・・・

なんと、共食い。ブスリとやられた方は息も絶え絶えでした。
自分と同じ大きさのもの、しかも同種に襲い掛かるとはスゴイ@@

何の因果で同士討ちしなきゃいかんのか・・・

虫も大変だねえ。

妖艶な石垣島のサツマニシキ(2016.4.10)

石垣島の原生林内の山道を歩いていると、目も覚めるような煌(きら)びやかなものがヒラヒラと
舞い降りてきました。
日本産昼蛾、否、全ての国産蛾の中で最も美しい種類と思しきサツマニシキです。

注目度が高いと見えて日本産は4亜種に分けられており南に行くほど白化が顕著となります。
八重山亜種は「薩摩錦」ではなく、ヤエヤマニシキと別名を与えたくなるほどブライトンな美蛾です^^

これまでなかなか発生初期のビカビカの個体と巡り合わなかったのですが、これは良い個体です。
とても大きな♀で、もちろんキープ^^

驚いたのは、羽根の付け根の「ブクブク」は予期していたものの、それとは別に各脚の先端部分からも
黄色い液体を分泌したこと@@
(シャッターチャンスを逃し、ほとんどが滴ってしまった)

これまで羽根の付け根のブクブクは数個体で確認していたものの、このパターンは初めてです。
逆に羽根の付け根部分からの噴出は殆どありませんでした。♂と♀の違いでしょうか?

(参考)
バブル崩壊^^

さらに驚いたのは、ティッシュで作った三角紙の中で蘇生して多くの卵を産卵したこと。

本種、特に最も美しい八重山亜種は将来飼育を試みる予定でしたが、正直これは想定外です。
これからも遠征は続くので大量の幼虫を抱えることは残念ながら不可能。
うーん、実に残念。

何かイイ手はないかしら。

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