飼育室から | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

クモマツマキチョウ、全て蛹化完了(2022.5.9)

飼育中の八ヶ岳産クモマツマキチョウが数日前までに全て蛹化しました。
卵の到着から蛹化まで1カ月弱、想定より多少日数は掛かりましたが、採集の合間に手軽に
飼育出来る種類だと分かり収穫でした^^

アブラナ科の切り枝(水揚げバカ良し^^)で飼えるので庭が要らない、餌のナノハナやカラシナは
身近の何処にでもあり数も豊富で餌切れの心配が無い、幼虫は餌から離れないので蛹化時にだけ
注意すれば放し飼い出来る(真のメンテナンス・フリー)、小型種なので省スペース、そして成虫は
可憐で綺麗と利点が多く、飼育を手掛ける人が多いのをよく理解出来ました。

問題はやはり幼虫若齢期の共食いで、これを如何に最小限に抑えるかが本種飼育のキモです。
僕にはこれからの課題ですが、人工交配からの大量採卵、そしてある程度の共食いを想定しての
安直飼育が最も効率の良いやり方のような気がしました。
いずれにしても、未だ多くの遠征を控えている僕には5年後、10年後の取り組みになるので
ユキワリツマキの作出も含めて色々とシミュレーションが出来たのは有意義だったと思います。

カラシナの主茎で蛹化したクモツキの蛹達。

一部は逃亡抑止策として囲った段ボールの真っ平の部分で蛹化しました。

餌場を離れてしまえば段ボール壁で蛹化するしかないのですが、これは全体の極一部であり9割以上は
茎の上で蛹化しました。このことは想定外だったので少々驚きましたね。
逆に考えれば餌場を離れない個体が大部分なのだから、何らかの工夫をすれば全てを茎上で蛹化させる
ことが出来そうです。囲いが要らなくなるのはラクで良いですね^^

なお餌に紛れて入って来たモンシロチョウは全部で4頭で、茎で2頭、壁で2頭蛹化しました。
この歳でモンシロを飼育することになるとは思わなかった(放し飼いだけどね^^)

さて、クモツキは蛹のハンドリングもラクで、特に水分を与えたりせずとも翌春によく羽化します。
ただ九州の平野で灼熱の夏を過ごさせ来春まで保管するのは不可能です。最高気温が25℃を
越える日も出てきたので近いうちに阿蘇の山の中あたりに疎開させようと思います。
気持ち的には人工交配して累代したいのですが、来春には遠征を予定しているのでそれは不可能。
この蛹達はとりあえず羽化後標本にしておきたいと思います。

クモマツマキチョウの幼虫、終齢へ(2022.4.28)

現在飼育中の八ヶ岳産クモマツマキチョウ幼虫の第一陣が終齢となっています。
ナノハナやカラシナの実をバリバリ食って一気に大きくなってきました。
クモツキの飼育は初めてですが、この姿を見たかったので楽しい毎日を過ごせています^^

現在の飼育の様子。九州の平野部では殆どのナノハナやカラシナは結実して実も堅くなったものが
殆どですが、運良く身近に遅咲きのカラシナの一群が見つかり飼育の援軍となってくれました。
奥の大きな実に終齢幼虫、手前の未だ花が残る若実に若齢幼虫がいます。

幼虫の齢数が二段階になってしまったのはちょっとした手違い(卵の送り手の^^)なのですが、
餌も実が小さいもの、大きいものの二通りを取り分けなければならないので結構面倒。
若齢期の共食いが極めて激しいことは知っていましたが、実態はどんなものだろうという興味から
敢えて過密的に飼ってみたところ見事に幼虫数が半分になりました。
「おお、なるほど、やはりそうなのか」
数の半減は予想していたのでショックよりは「有名な事実」を確認出来てむしろ嬉しいくらい。

実をバリバリ食い込む終齢幼虫達。見るのが面白く、飽きません^^



これらはそろそろ蛹化準備に入る頃になっているので、そろそろダンボール箱に収容する等の
対策をしなければならないなあ。クモツキやツマキは蛹化する際には食草を離れ何処かへ行って
しまうので何かで囲う必要があるのです。
なお、若齢幼虫の写真は二つ前の記事にあります。

ところで、採って来た餌に「モンシロチョウのような」幼虫が付いているのですが、これは単なる
モンシロチョウなのでしょうか?実は現地で餌を採っていてもこれは割と見つかります。
「え? ナノハナやカラシナだからモンシロチョウが付いていても良いんじゃない?」と思われる方も
多いでしょう。でも、これらは葉ではなく実をバリバリ食べているんですよ@@

最初はタダツマキかなと思ったのですが、ツマキならクモツキ幼虫に似ているはずなのに明らかに
モンシロ幼虫の方に似ているのです。あるいはスジグロとかヤマトスジグロでしょうか?
これらが葉ではなく実を食べることについて、蝶屋(飼育屋)さんの世界では当たり前のことかも
しれませんが、自分には初めての事なのでかなりの違和感を感じています。
下の写真はクモツキ幼虫と共にカラシナの実に留まる姿。

保育社の生態図鑑で調べて見ると、モンシロチョウの項に「幼虫は葉を食い尽くすと花や実を食べる」
との記述が在りました。へえ、モンシロって実も食べるんだ。
幾つか飼育して確認してみますか。種類としてはツマラナイけど、面白いなあ。

クモツキの次の報告は蛹化した頃に行いたいと思います。

クモマツマキチョウ幼虫、早いものは3齢幼虫に(2022.4.21)

この歳になって初めてクモマツマキチョウ(八ヶ岳産)の飼育を手掛けています。
僕は半分蝶屋、半分甲虫屋で、蝶屋としては採り屋であるとともに飼育屋でもあります。
一体幾つ屋号を持っているのか自分でも関心する次第ですが、蝶の飼育材料としては真っ先に
やるべきクモツキにやっと取り組むことが出来て楽しい毎日です。

ゼフ飼育もそうですが、クモツキ等は飼育期間および展翅、あるいは累代操作が早春から初夏に
なってしまうので南西諸島への遠征を行わない年にしか手掛けることが出来ません。
4年の奄美生活を終えて少し本土でゆっくりしようとの思いから今春は遠征をしないと決めたので
やっとクモツキ飼育のチャンスが巡って来たという次第。

で、いきなり今の状況です。
昨日は阿蘇の根子岳周辺へ餌のナノハナ(本来は近似種のカラシナが良い)を採りに行って来ました。


ナノハナの生け花が常に視界に入るので、セロトニン効果で精神衛生上とても良いですね^^

元々は卵を入手したのですが、早いものは既に3齢幼虫になる個体も現れ始めました。体長にすれば
1.5cmといったところでしょうか。

本種は共食いが激しいので孵化直後~暫くは一茎に1頭ずつ各々を隔離して飼育する必要があり
面倒なのですが、この大きさになるともう共食いの危険はありません。
下の写真の幼虫達は未だキケンがアブナイ^^、かな。


クモツキの幼虫は成長が早く3週間ほどでカタが付くので、共食いの時期だけ注意すれば飼育は楽です。
ナノハナ類は極めて水揚げが良いですしね。
もう少しでバリバリと食い込む見応えのある終齢幼虫となるので楽しみです^^

奄美産ツマベニチョウ飼育中、もとい釣り堀作戦実施中(2021.10.16)

現在ツマベニチョウの最終化、あるいは来春の第一化になる幼虫を飼育しています。
今秋はツマベニチョウの発生が良いようで数本のギョボクの葉に幼虫が結構見られます。
奄美最後の秋の飼育はツマベニで閉めることになりそうです。
下の写真は6月に採った夏型。とても大きく、やはり♀は特に良いですね。
飼育中の秋型は一回り小型になり、♀はもっと黒く、しかも黄色い色調が出るタイプもあり更にイイよ^^

ほかにもアマミカラスアゲハやアカボシゴマダラ、ルリタテハなどの採卵にも取り掛かって
いましたが、ナンモカンモやるのは土台無理だし、特に大量に餌を食い込むこれらの大型種の
飼育はジゴクの一言。引っ越しの直前までこれらに忙殺されるわけにもいきませんし。
なによりカラスアゲハ類は将来の「アキリデス・イヤー」(これはゼフ・イヤーと同様何年も
続くと思われる)に必ずやるし、アカボシ飼育に至っては元々庭にエノキ類が無ければまあ無理。
しかも越冬幼虫を作る作業などやってられないという訳でこれも却下となりました。

ツマベニも大食漢で袋掛け出来るギョボクも無いのは同様なのですが、今年は発生量が多いこと、
逆にカメムシやハチ類等の天敵が少ないことから前蛹・蛹になったところを野外から狙い採って
来るという至ってラクな戦法を取ることにした次第。釣り堀と言うか養殖場感覚ですな^^
勿論天敵が全く居ないわけではないので回収率はかなり落ちます。それでも個体数の多い今秋は
マイコレ分程度は採れます^^

なお室内飼育ではギョボクの葉は萎れ・腐敗が極度に早く、幼虫がそれを直ぐ感知していわゆる
「諦め蛹化」をしてしまい大きな蛹が得られません。蛹化直前のド終齢でなければ室内での飼育は
止めた方が良いですね。

ギョボクにはある種の蛾の幼虫が大量に付いて殆どの葉がダメージを受けたものや、落葉前で葉が
茶枯れかけた木もありますが、そうした中でもこのようにたくましく幼虫は育っています。

良い木には終齢幼虫が幾つも付いている場合があり、こうした場面を見るとウハウハですな^^
ちゃんと生き延びて蛹になってよ。


蛹化には直射日光が当たらない場所を好むようで、そうした所で蛹と前蛹を見つけました。
暗く逆光なので上手く映りませんが赤丸の中に注目。もちろん両者とも即回収^^

未だ動いている幼虫には手を出しませんが、前蛹はこの様に自宅にて容器の壁面に固定して
蛹化を待ちます。これで野外品と同等の大きな蛹が手に入ります^^

昨年同様に蛹化場面にも遭遇出来ました。

(参考)昨年秋の蛹化連続写真

嬉しいことに初の黄色型蛹にも出会えました^^
これまでに幾つか見つけていますが少ないケースですね。


そして羽化の兆候が出てきたものも現れています。
これから羽化ラッシュが続き、最後の奄美での展翅が待っています。
標本の乗った展翅板を車に乗せて引っ越しするのはちょっとメンドイんですが、「最終化」という
高付加価値の美・ツマベニのためにはエンヤコラです。


蝶の標本は甲虫他よりも僕の幸福度を上げてくれます。
ツマベニチョウは特に好きな蝶であるだけに、一般には入手し難い最終化および第一化となる蛹を
この際たくさん得たいと思います^^

数年振りに行うイワカワシジミ高温期型の飼育(2021.6.13)

現在、過去2年間不作続きだったイワカワシジミの飼育を手掛けています。
今季は甲虫類の発生が悪いし、そもそも終日採集できない梅雨時にも幼虫探しが出来る類稀な佳き蝶。
大型シジミにして美麗種、屋久島以南にしか居らず季節型も楽しめ採集・飼育も実に面白い。
国産の蝶の中でも独特のポジションを持つ不思議な奴がイワカワシジミ。

今思えば奄美に来た年はまあまあ当たり年だったのですが、来たばかりで大忙しだったので高温期型の
飼育には殆ど手が回らない状態で幾つかしか標本を残せていません。
今季は時間が在るので・・・と思いながら大きくなり立てのクチナシの実に当たってみると初年度の
のようには多くないものの、そこそこ幼虫が入っているようで楽しめました^^

こんな感じで林縁のクチナシの実がたわわに生っています。

それらを注意深く見渡していくと・・・
イワカワシジミの幼虫の入った実がポツポツ見つかります。
孵化したばかりの幼虫は小さ過ぎて実への侵入口は見つけ難いのですが、成長に伴い大きな糞を捨てる
ために穴を大きくしていくので難なく見つかるようになります。

これ位の穴になると顔を近付けると見つかりますが、脱糞中の若齢幼虫の尾部も少し覗いていますね。

終齢幼虫にもなると穴の大きさも随分大きくなり、かなり離れた位置からでも見つけられるようになります。

幼虫は実を食べ尽くすと空になった実を抜け出し、枝を這って次の実を探します。
枝を這っている幼虫を見たことはありませんが、探し当てた次の実に齧り付いて穿孔しようとしている
幼虫はたまに見られます。

穿孔完了まではさすがに時間が掛り、いわゆる「頭隠して尻隠さず」状態になるためこの際に天敵に
やられるものも多いようで、穴が開きかかった実が散見されます。鳥に食べられたり、カメムシや蟻の
餌食になっているのでしょう、実に勿体ない。

実を3~4個たいらげて老熟した幼虫は、空になった実の中で蛹化します。採集はこのタイミングで
行うのが最も効率が良いのですが、ここまで生き延びる個体は少ないし寄生の心配もあるのでやはり
初齢~中齢幼虫で採集するのが正解でしょうね。

このように個別に飼っていますが、本種の食欲は凄まじく信じられない量の糞をするので1日に2回の
掃除が欠かせませんし、餌切れがないように常に新しい実を準備しておく必要があります。
ただこの時期の幼虫の成長は極めて速いので1週間も世話をすれば蛹になってくれます。

実の中の前蛹および蛹。ここまでくれば一息付けます。
1週間後辺りから展翅が大変になるんですけどね^^


ひょんなことから今回面白いことが起きました。全くの偶然ですが容器の掃除中に2頭の終齢幼虫を
一緒にしてしまったようで気付くと一つの実の中でその2頭がひしめくように蛹化していました。
本種は一つの実を独占するため習性的に共食いが激しい種類として知られます。よって野外ではこうした
事態は起きないのですが、本件はたまたま両者とも老熟しきった状態であったことから片方が片方を齧る
という悲劇が避けられたケースと言えます。絵としてはとても面白いですね^^

高温期型の幼虫はこのようにカラになった実の中で蛹化し、羽化した成虫は脱糞口から這い出て
外界で翅を伸ばすことになります。
面白いのは低温期型の蛹は実の中で蛹化しないことで、これを知らない頃は食痕のある空になった実を
いくら探しても蛹が見つからないので不思議だったことを思い出します。
同じ蝶でも多化性の場合、時期により習性を変えるものも結構居て奥が深いもんだなあと感心する次第。

展翅後にまた写真をアップする予定です。

奄美産フタオチョウの幼虫・前蛹・蛹(2021.5.24)

折に触れて述べてきたとおり、奄美における春以降の甲虫の発生は極一部を除き芳しくないので
活動時間が短く済んでいます。それに今の時期は雨ばかりだし(特に今年の梅雨は酷い)。
そこで、余った時間を蝶の採集・飼育に振り向けることにしました。

今の時期、やはり真っ先にやるべきはフタオチョウでしょう^^
というわけで・・・ ジャーン!
いきなり幼虫(4~終齢)、前蛹、そして蛹です。
基本的に本来の生息地の沖縄では採集禁止種であることから、個人ブログで本種のクリアな飼育状況が
取り上げられるのは初めてかもね。

幼虫
唯一無二の独特のペルソナ(仮面)が特徴的。
同じツノでも例えばオオムラサキなら頭部にしか見えないけど、本種に限っては「仮面」を被っている
ようにしか見えないなあ。



前蛹
典型的な垂蛹です。丸まるところも他のタテハチョウの仲間と同様。
特に外側のツノを縁取るトゲのコバルトブルーがとても綺麗。


自分の飼育歴で初めての半円形の蛹@@ 
3D的には球状のボールを四分割したような形状をしています。コロコロして、とても面白い^^
触って分かるのはオオムラサキ等の様に腹節が左右に動くように出来ていないことで(可動部が無い)、
刺激を与えても他の蛹のようにクネクネ動きません。これは知らなかった@@

ペルソナを脱ぎ捨てた先発隊。


若い時からの夢だったフタオチョウの飼育。
本来の生息地沖縄での捕獲は禁じられている上、飼育には食樹の問題が大きく立ちはだかります。

奄美で発生したこと、そして自分が奄美に今住んでいること。
この二つが同時に起こることは確率的にゼロ。奇跡です。
奇跡的に「今」、夢が叶ったことに感激しています^^

※当方はフタオの飼育材料を蛹も含め提供しておりません。

ペルソナ(2021.5.20)

奴は被っていたペルソナを捨て去り、次なる姿へ変貌した・・・

なんちて。

着ぐるみも脱いだとさ。

アオバセセリ、スミナガシの幼虫。飼育開始(2021.5.13)

奄美は沖縄と共に5月に入るといきなり梅雨入りしました。沖縄方面の遠征からの帰着後数日は
採集出来ましたが、この3日は終日雨の自宅待機となっています。
おかげで遠征中に採った虫を中心に、貯まった甲虫類の展足はほぼ完了しそう。
体も休まるし恵みの雨です^^

さて、これまでのところ今季はカミキリをはじめ甲虫類の発生が極度に悪いので蝶に目が行く
機会が多くなっています。
この時期、林縁のヤンバルアワブキ幼木に見られるのが以下の2種の幼虫。

ヤンバルアワブキの幼木を注意深く眺めていくと、葉を袋状に綴ったアオバセセリ幼虫の独特の
巣が見つかります。本土でも同様の巣がアワブキで見つかるのでとても有名ですね。
これは若齢幼虫の巣です。

さて問題です。葉柄の先端に茶枯れた葉が見えますが、これは何でしょう?

よく見ると筒状に綴られており、開いた穴から覗くと何か蠢くものが見えます。
筒を開くと出来てきたのは独特の紋様が鮮やかなアオバセセリの終齢幼虫です。
終齢になるとこの様に巣の付いた小枝を齧って枯らし、最終的にはその中で蛹となります。
この幼虫は大きさ的にはもう少し食い込んで老熟するようです。

セセリ類はネットで捕らえると高速で力強くバタ付いて翅を相当汚損してしまいます。
よって綺麗な標本を得るには飼育しかありません。
昨年までのシーズンは一般に甲虫類の採集に余念が無く蝶の飼育にまでは手が回りませんでしたが、
前段の様に今季は採るべき甲虫類の発生が悪いため(不可抗力的に)余力があります。
少し飼育してみることにしましょう^^

次に、アオバセセリ幼虫と比べて格段に見る機会が少ないのがこれ。
同様にヤンバルアワブキの葉の先端に何かヒラヒラしたものが見えると思います。

もっと近寄ってみましょう。枯れた葉の小片がレースのカーテンの様にも見えますね。
塔の様にそびえ立つ枯れた主脈も目立ちます。
オッ、その奥に何か黒いモノが止まっているようですよ。

その正体はスミナガシの幼虫でした。
終齢幼虫に脱皮したばかりのようで、頭部の「悪魔顔」が異様にデカく、不格好に見えますね。
これまでは先に述べた「塔」に留まっていたわけですが、終齢になってからは葉上で過ごします。
これからどんどん葉を食い込んでスッキリとした格好良い幼虫になって行きます。


これらを飼育する際に大きな問題となるのがヤンバルアワブキの水揚げの悪さです。
庭に木が植わっているなら何の問題もありませんが、現在住んでいる狭いアパートでは切り枝を使う
しかなく、如何に切り枝の鮮度を保てるかが勝負となります。
とは言え、飼育には向かない高温多湿の季節なのも併せ限界が在るのも事実。
餌替えを始め世話は大変ですが、コレクションのため、ここはイッチョ頑張りますか^^

では、アノ蝶も飼育するかあ?

シロウラナミシジミの飼育中継(4)(2020.12.22)

奄美のシロウラナミシジミの発生もほぼ終息です。低気温に加えて餌となるシュクシャの花芽が
全く無い状態となっています。
ただ昨年末に沖縄本島にカミキリの材採集に行った際に飛んでいる数頭を見ているのでかなりの低温には
絶えられる種類ではあるよう。もしかしたら奄美でも冬季に飛翔する姿を見られるかもしれません。
本種の顕著な低温期型が在るのかにも興味があり、コレクションのためにも注意をしておこうと思います。

(参考)
シロウラナミシジミの飼育中継(1)
シロウラナミシジミの飼育中継(2)
シロウラナミシジミの飼育中継(3)

さて、飼育中継シリーズの最後は自宅内での幼虫飼育の様子です。
基本的に飼育カップで個別に飼育管理しました。

ゼフィルス等の飼育と同様、餌替えや掃除といった毎日の世話が欠かせません。
野外から採集した中~終齢幼虫なので数がそれほど確保出来ず、ややもすると数百の幼虫を抱えることに
なるゼフや、かつてやった7百頭程のルリウラナミ等とは違い結構ラクでした。
それでもほぼ毎日シュクシャ花の蕾を採りに行く作業はそれなりに大変でしたが。


10~11月の飼育でしたが成長はとても早く、次々に蛹になってくれました。
食い込みが終わると幼虫は餌を離れるので蛹化準備の見分けは極めて安易です。

終齢幼虫は大振りのものでは15ミリを超え、大型ゼフより一回り小さい程度。これでも日本産シジミでは
相当大型の種類と言えます。

終齢幼虫の背面と腹面。シジミ類はおちょぼ口が可愛いですね^^


羽化が近付き翅が色付いて来た蛹。羽化直前になるとこの青色が種名の如く白っぽくなります。


あとは中型のプラカップに色付いた蛹を1頭ずつ入れて暗所で羽化を待てばよいのですが、
信じられない体験をすることになりました。
寄生は全く無くほぼ全頭が羽化したのですが、なんと3~4割は翅が伸びなかったり、伸びても
奇形になるものが続出したのです。これにはとにかく閉口しました。

ウィルス性の病気か?
野外でも幼虫はシュクシャ花芽の中で残渣がグショグショの中で暮らしているので相当に多湿には強い
ものと思っていましたが、さにはあらずなのかもしれません。ただ飼育容器内が多湿過ぎてウィルス病に
罹患したとすれば幼虫・蛹の時点で必ず死亡し羽化には至りません。その点で現況には合いません。

野外で採集したものはまず奇形は見当たらないので元来奇形が多い種類とも思えません。
一体何が原因だったのか?
これまで多くの蝶の幼虫を飼育してきましたが、初めての経験だったのでまさに狐に摘ままれた思いでした。

それでも展翅版に乗った飼育品達。美しさは格別です。展翅板から外したらまたアップしましょう。


思いがけず飼育のチャンスに恵まれたシロウラナミシジミ。マイコレはこれで十分です(写真は一部)。
日本産Jamides属2種の飼育・コレクション完遂です^^

シロウラナミシジミの飼育中継(3)(2020.12.6)

ワケあってシロウラナミシジミの飼育中継を中断していましたが、続けます。
今回は野外での幼虫採集の様子です。

(参考)
シロウラナミシジミの飼育中継(1)
シロウラナミシジミの飼育中継(2)

幼虫を探すのはこうしたシュクシャ群落の中。こんな極めて明るい場所ではあまり気にする必要は
ありませんが、湿地が多いのでハブに注意しつつ群落に入り込み、花芽を観察します。

大きな幼虫が居る場合は鱗片やガクの隙間から大量の糞が見えるのでゆっくりと料理^^
鱗片やガクを一枚一枚まさぐっていきます。すると・・・


こうして探すと中齢~終齢幼虫が見つかるので後々飼育が楽です。初齢幼虫は糞がほぼ目立たないし、
新芽の中に潜っていたり複雑な形状の鱗片の隅に隠れていたりと目に付きません。
もし見つけても後の飼育が面倒なので、無視^^

なお誰だか新芽を定期的にチョキチョキ切って持ち帰っていたようですが、育ち切っている終齢幼虫なら
蛹化させられるものの、どうせ芽のモチは悪いし若齢幼虫を全て殺すことになるので良きテとは思えません。
しかも手の届くシュクシャは限られるのでその後自分の首も絞めることになります。
当方としては手の届くシュクシャ花穂がどんどん切られて無くなるので結構大変でした・・・

一部には花穂内で前蛹や蛹が見つかることもあります。終齢幼虫や蛹にはある種のアリが幾つかまとわり
付いていることがありますが、有名な共生関係にある種類らと比較すると関係性はかなり希薄のようです。


これまで書いてきたように、一つの花穂内で見つかるのはせいぜい1~2頭なので、これだけの
蛹を得るのはとても大変(汗)。

中には食痕があっても蛹が見つからないのでアレ、と思いながら探索すると適当な蛹化場所が無いと
花穂を離れる者も居てこうした場所(葉柄)で蛹が見つかることも。

このような飼育材料探しも花の咲いたシュクシャ花穂があってのこと。さすがに手の届く大方の花穂は
食い尽くされ、花の時期も終わったので今は幼虫採集も終了しています。
最終回は自宅での飼育の様子等について述べます。

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