コメツキの宝石も、幼虫はおぞましいプレデター(2013.1.11)
昨日紹介したコメツキ界のイケメン(?)二種、ノブオオオアオおよびヨツモンオオアオ。
本当の主役は、その幼虫達です^^
コメツキは幼生期、朽木や腐葉土の中、落ち葉下、土くれの中等、実に様々な環境下に居るので、
野外で採集しているとよく遭遇します。
そうした場所でいろんな小さな生物を捕食して成長しているわけです。
僕はカミキリやタマムシ、クワガタなどといった幼虫期を朽木や枯れ木中で過ごす甲虫群が特に
好きなので、これらの材採集をしている際にコメツキの幼虫に出くわすケースが多いんですね。
南西諸島でフトカミキリ類の材採集をしていると、件の二種の幼虫がたまに出てきます。
下の写真は数年前の石垣島で撮ったものですが、ヤエヤマフトカミキリ幼虫の古い食痕の中に潜む
ヨツモンオオアオコメツキの幼虫です。
カミキリの生態に詳しい方はご存じの通り、フトカミキリ類は生木を食うタイプと枯れ木を食うタイプの
違いはあれど、基本的に自分の食道坑にほとんど何も詰めずに食い進みます。
すなわち、木の中に空間(空洞)が出来るわけです。
どうやらこれらのコメツキの幼虫は、そのフトカミキリの食道抗を住処として好んで利用している
ようなのです。
石垣・西表のヨツモンオオアオ、与那国のノブオオオアオと、それぞれに対応したフトカミキリ達が
居る事が実に興味深いです。
下は与那国において、ウスイロフトカミキリの食道抗の中に潜んでいたノブオオオアオの幼虫です。
採集時にはすでに5センチ近くに成長していました。
宿に帰った夜、同日採集したワモンサビカミキリの蛹を与えてみました。
幼虫はかなり用心深く辺りを気にしていましたが、蛹に気付くと「ハッ」としたように一旦躊躇しました。
次の瞬間、いきなり下から突き上げるように、蛹の尾部付近にマンディブルを打ち込みました@@
そのスピード、勢い、そしておぞましさはまるでプレデター(知ってるかな?)が獲物を狩っている
シーンを見ているような風景でした。
暫くはその場面に釘付けでしたねえ。
時間とともにワモンサビ蛹の内容物が吸い取られて、次第にしぼんでいく様子です。
あわわ・・・
最後にはくしゃくしゃになってしまい、原形をまったく留めていません@@
こうなるまで僅か十数分の出来事でした。
一方、蛹の内容物を取り込んだ幼虫の腹節が伸びきっているのも分かりますね^^
そしてもっと驚いたのが、このノブオオオアオ幼虫の生存力でした。
その後は地元の熊本に戻って飼育を続けたのですが、その丈夫なこと。
縦横8×5センチ、高さ4センチの小さなタッパーに木屑と木片を少し入れただけの環境。
思い出した時(よって月に1~2回程度^^)に駄カミキリ等の幼虫を数匹与える。
その時は当然、木屑等はカラカラに乾いているので加水する。
餌の幼虫類が用意出来ない時は死んだカミキリの成虫、庭のダンゴムシを与える(これらも食べた)。
室温は真夏は30℃以上、冬は5℃程度まで下がるという密室での過酷な温度変化。
(常時、タッパーの一角だけは少し開けて密閉しないようにしていた)
こうした拷問に近い環境の中で、その後もなんと2年位生き続けました@@
脱皮も数回行いましたが、あまり餌をやらなかったので大きさは当初とあまり変りませんでした。
・・・・・・
ノブオオオアオの幼虫がその後どうなったのか、僕には分かりません。
え、どういう事? と思うでしょ^^
実はある日、タッパーの蓋が緩かったスキに逃走してしまったのです!
あの生命力を考えると、今でもタンスとか机の影に隠れていて、ゴキブリやたまに庭から上がって来る
ダンゴムシ等を捕食しながら生き続けているような気がしてなりません。
あるいは成虫にはなったものの、気付かぬ内に窓から飛び去ったのかもしれません。
ある意味、思い入れのある虫ではありますね。
与那国で今度は成虫に(しかもたくさんの)会えることが楽しみです^^
もっと詳しく知りたい事や
理解できなかった事などございましたらお気軽にご連絡下さい。