奄美での最後の虫観察、ツマベニチョウの諸々(2021.11.27) | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

奄美での最後の虫観察、ツマベニチョウの諸々(2021.11.27)

奄美で最後に係った虫、ツマベニチョウについて知見を記しておきます。
秋が深まった頃から11月下旬の現在まで野外での発生状況を見ていろいろ知ることが出来ました。
この時期のツマベニは成虫では最終化が活動、そして来春の第一化となる卵・幼虫が同時に居て、
越冬蛹が出現する時期となります。

11月中旬の奄美は最高気温こそ20℃はあるものの朝晩は暖房器具を使い始める頃です。
晴れた昼の時間帯には成虫が飛び、幼虫がギョボクの葉を摂食している場面も見られますが、
朝晩は肌寒いし寒風が吹きすさぶ場面も多くなってくる(冬の離島あるある)ので、ツマベニの
ような大型種が活動するにはそろそろ微妙な時期に入ってきていると思います。
ここ数年見た感じでは、少なくとも11月一杯は温かい時間帯にツマベニは飛んでいました。
12月に入っても生きている個体が居るのは間違いありませんが、沖縄や八重山とは違うので
厳冬期に飛んでいる蝶はさすがに居ません。
つまり今飛んでいるツマベニ成虫世代が死に絶えた段階で越冬蛹に切り替わるわけです。

9月下旬からツマベニ最終化を得るべく動き始めたので、前回記事以降の観察状況をまとめて
おきたいと思います。

(参考)ツマベニ前回記事

10月中旬頃から最終化の蛹の最盛期になり、一時は多くの蛹を抱えていました。
基本的に成葉裏面の主脈で蛹化するので、大部分は「おぶり紐」と尾端の葉との付着部をそのまま
利用して葉の一部を切り取り台紙に接着剤で張り付けています。

やむなく「おぶり紐」を切らざるを得なかった蛹は、こうして台紙に直接腹部を貼り付けました。
台紙と垂直になるように貼っても、斜めに貼っても羽化状態に差異はありませんでした。
ちなみにツマベニは羽化成虫が蛹殻に垂れ下がって大きな翅を伸ばすタイプです。地面に転がした
蛹では羽化は出来るものの体が重過ぎるのか壁をよじ登れなかったり、登れても垂れ下がる体制が
取れないと翅が伸びず羽化不全になってしまいます。
綺麗な標本を得るには自然状態に近い羽化環境を作ることが大切です。

蛹を貼り付けた台紙をクリップでネット内に固定してやると羽化はほぼ100%上手くいきます^^

今月上旬位までは天敵の活動も活発で、見ている横からスズメバチのアホが幼虫を食い千切りダンゴに
し始めるので追い払うのに躍起になっていました(ぷんぷん)。

蛹の色についてですが、前回記事の段階で黄色型が混じり始めました。最初はこれが越冬蛹の
デフォルト色かな、と思ったのですが、他の緑色の蛹と共に時期が来ると羽化しました。

ちなみに葉が茂っている時期に枝で蛹化するケースは極めて稀ですが、枝で蛹化する場合は確認した
限りでは全て黄色型になりました。


また緑と黄色の中間色の「黄緑」の蛹も一つだけ見ることが出来ました。

最後に11月最下旬の今の様子です。
成虫も未だ飛んでいるので卵も散見されますし、勿論幼虫(若齢~終齢)も居ます。


ただこれからますます気温は下がるのでこれらの成長速度は遅くなります。現段階で少なくとも
終齢幼虫は確実に蛹になれるでしょうが、卵や若齢幼虫は一体いつまで生き延びれるのか・・・
幾ら奄美大島の冬と言っても、12月以降の厳冬期に生身の幼虫が生存出来るほど甘くは無いでしょう。
ギョボクの葉も無くなってきますし。
下の写真は葉がまばらになった枝先で寒風に晒される終齢幼虫。この時期最低気温は10℃近くまで
下がります。なにか哀愁が漂うなあ。

例えばイワカワシジミの場合、少なくとも厳冬期までに全ての幼虫は老熟し寒い中でも蛹になるか前蛹の
形で冬をやり過ごすものも居るようですが、はたしてツマベニの幼虫もそんな能力を持つものなのか・・・
やはりギリギリのところで蛹になれない幼虫は★ってしまうような気がします。
残念ながら僕は数日後に奄美を発つので12月以降の幼虫達の行く末を確認出来ません。
まあ、著名な種類なので既に奄美での詳細な越冬態は確認されているのでしょうけどね。

最近では幹をウロウロしている終齢を度々見ることから、越冬蛹になる終齢幼虫は恐らく木を離れて
蛹化するケースが多いのでしょう。

終齢が幾つか居た木(葉がほぼ散ったもの)を調べても全く蛹が見つからないので近くを探すと
電柱のケーブルを覆う黄色のプラスチックカバーの上で一つ見つけました。木からここまで
約3メートルの天敵の居る悪路を歩行しなければなりません。それほどの危険を冒さないでも
元々居たギョボクにも蛹化に適した小枝が幾らでもあるのに変な生態ですね。
他の同様の木を見ても小枝や幹に越冬蛹は全く見つかりませんでした。

またこの時期の終齢幼虫には寄生蠅の卵が付着したものが多く見られます(以前は全く見なかった)。
寄生されたり過酷な厳冬期を経る中で生存率はガクンと落ち、春型の数は一気に減るのでしょう。
自然の摂理ですね。

手持ちの蛹は全て一回り小さなものばかりになりました。羽化兆候も現れないのでこれが越冬蛹でしょう。
残念ながらあまり数を確保出来ませんでしたが、第一化の標本は全く持っていないので来春まで大事に
管理したいと思います。ちなみに春型は当然小型で前翅先端がかなり尖るとされています。
これはこれで楽しみだ^^

これが奄美で記す最後の虫採集・観察記となります。
この4年弱の間、気になっていた様々な虫達に触れることが出来てとても幸せでした。
暫くは奄美(群島)の虫達から離れますが、そのうちまたやりたくなるでしょうからその時は別の視点から
再度此処の虫達を追ってみたいと思います。

もっと詳しく知りたい事や
理解できなかった事などございましたらお気軽にご連絡下さい。

お問い合わせはこちらからどうぞ

  • Yahoo!ブックマークに登録する
  • はてなブックマークに登録する
  • livedoorクリップに登録する
  • newsingブックマークに登録する
  • del.icio.usブックマークに登録する
  • ニフティクリップに登録する
  • RSSを購読する

次の記事 »
前の記事 »
トップページへ » 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に) TOP » » 奄美での最後の虫観察、ツマベニチョウの諸々(2021.11.27)