一枚の写真に想う(2022.2.23) | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

一枚の写真に想う(2022.2.23)

便所の友「TU・I・SO」を見ていると、一枚の写真に目が留まった。
「あれ、この写真何処かで見たことある・・・」

何かの拍子にオークションで落札した西暦2001~2002年頃の「TU・I・SO」100冊。
100冊で800円だったけれど、送料は2千円以上した記憶が在る。100冊というのはそれ位大量。
トイレで用を足す度に1冊掴んで個室に入るが、未だ半分にもほど遠い。

これの主筆が自筆で書く文章はなんともふざけた幼児が書くようなキタナイ文字で、正直僕は
3行も読めない。読もうと努力するのだが一文字一文字が何なのか解読するのに疲れてギブアップ
してしまう。どうせゴシップ記事ばかりでどうでも良い内容が多いのでバンバン飛ばし読みする。

中には協力者がパソコン(当時だからワープロの人も居ただろう)で打った読み易い記事もあるが
綺麗な自筆でタメになる文章を書く人も居る。
その一人が「フィリピン産蝶類幼虫食性おぼえがき」を連載した「K」氏。
K氏は少なくともその頃はフィリピンで移住生活をしており、身近な蝶達の幼虫の生態を事細かく
調べ上げて写真や細かい図を多用しながら「TU・I・SO」に連載していた。
僕は一時期の数十冊しか見ていないのでこの方がその後どのようにこの連載の幕引き等をされたのか
知る由も無いが、ともかく何故これほどの力作を「TU・I・SO」のような(失礼な書き方だが)
時代錯誤のガリ板のようなモノクロ誌に掲載するのだろうと思いながら、実は感心しながら
他の記事とは異質な出来過ぎた論文を見ていた。ちなみに何故「TU・I・SO」なのかというのは、
主筆と懇意だからのようだった。

で、目に留まった写真というのが1049/1050号(2002年)に掲載されたこれ。
1951年6月、榛名山へのムモンアカシジミ幼虫など探索行(原文ママ)での一コマで、
K氏は左端のひょろっとした人(終戦後僅か5~6年なので皆痩せている)。

この人が書く記事(論文)は長大でかつ緻密。よって毎回が合併号となり、紙面を2号分埋めてくれる
最良のネタとして「TU・I・SO」も助かったろうと思う。
ガリ板誌だから写真も精度が悪いが、当時の高校生や大学生の虫屋がどのような格好で野外採集に
取り組んでいたか、その格好が窺い知れる貴重な一枚だ。学生服、学帽にゲートル。今とはまさに異世界。
K氏は当時高校1年と書いてあるので、ご存命であれば85歳位だろうか。

話は冒頭に戻る。
「この写真、何処かで見たことある」と記憶を呼び覚ましたところ、それは「かみつけ」という
2000年代初頭に7年程存在した「群馬の蝶を語る会」の会誌だったことを思い出した。
僕は東京を離れる2年前にその会に入会しており、熊本に戻ってからも所属はしたが当会は会誌を5号
出した後に空中分解、今ではそこから派生した会が別所で続いているらしい(知人の弁)。

「かみつけ」第一号に掲載されたその写真というのがこれ。

「やっぱりこれだ・・・」 
上の写真と完全に一致する。コート紙に印刷された写真だから上より遥かに鮮明だ。
これは群馬県の虫屋の重鎮、F氏が当紙に連載した「群馬・蝶類研究小誌史」の中にあった。
F氏は写真の右端の人で、当時は群馬大学の1年生。ちなみにF氏は自分の位置しか書いていないが
群大1年というのはK氏が「TU・I・SO」のK氏の写真説明に記載している。ちなみにF氏のみではなく、
写真全員の所属学校と学年が記録されており、そこからもK氏の記録に対する非凡さ(固執と言い換えても
良いかもしれない)が窺い知れる。

何のことはない。ただ偶然に見たそれぞれの写真が同じだっただけ。
僕はお二人と面識も無い。ただF氏から「群馬の蝶を語る会」の関係で、僕が当時飼育していた福岡産の
フチグロトゲエダシャクの幼虫を少し頂けないかと連絡が来たことがあった。日本の蝶類史の解明期に
活躍されたF氏からのたっての依頼、即座に数十頭の幼虫を群馬のご自宅にお送りした。
僕には全く関係の無いお二人だが、写真を見た折にこうしたことも思い出し何か感慨を覚えたのだろう。

残念なことにF氏は既に他界された。同年代のK氏はどうであろうか。その後もフィリピンで暮らされた
(暮らしておられる)のだろうか。知る由もないが知る必要も無い。
「TU・I・SO」を見たときに感じた、この人は何故ここまでフィリピンの駄蝶の生活史解明に心血を
注いでいるのだろうというのは、この写真に現れているような血気盛んな若者達の血が、その後も沸々と
湧き続けていたからだろう。

かつての昆虫少年達に想った。

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