ミドリシジミの手抜き飼育法(2012.5.21) | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

ミドリシジミの手抜き飼育法(2012.5.21)

3ケタを軽く超えるゼフの飼育がようやく終了しました。
現在は続々と羽化する成虫の展翅に日夜取り組んでいます^^

これだけ多くのゼフを飼っていると、手抜き出来るところはしたくなるのが人情です。
それに天気が良い日は大体フィールドに出ているので、そうしないと物理的にも不可能なのです^^

ただ、単なる手抜きをして小さな親をたくさん作っても本末転倒。
コンセプトは最低限でも野外品より大きな成虫を作る、です。

今回飼育法を開発したミドリシジミ(タダミドリ)の食樹であるハンノキ類は水揚げが悪く、「モチ」が
あまり良くありません。地植えのハンノキがあればいいのですが、そんな恵まれた方は少ないでしょう。
それに幼虫が巣を作るので、シャーレで飼って頻繁に餌換えすると消耗するのであまり大きな
成虫が期待できません。

熊本の阿蘇のタダミドリはケヤマハンノキ食いで、大分の九重周辺におけるハンノキ食いの
個体群のようには多産しません。
しかも近年は数が減っているのであまり卵も採れないだろうと思っていたのですが、
予想に反して結構採れてしまいました^^
そこでこの方法を考案せざるを得ない状況に追い込まれたわけです。

前置きが長くなりましたが、早速本題に入ります。

まず、採卵のついでにハンノキ類の幼木(現地にはたくさんある)を必要に応じて引き抜いてきます。
運ぶ手法にもよりますが、せめて地上部は1メートルは欲しいところです。
本種に限らず、採卵に車で行くなら幼木確保のためにショベルを積んでおくと良いでしょう。

帰宅したら大径の鉢に3本程を植え込みます。僕は今回、こんな鉢を2セット用意しました。
この作業はちょっと大変かもしれませんが、準備はこれだけなので春が来るまでにやっておきます。

そして芽吹きの状況を見ながら、同時に孵化させた幼虫をどんどん芽に付けていきます。
一つの芽に1幼虫が妥当でしょう。
後は当然、放ったらかしです^^

ミドリシジミで大変なのはいわゆる「食い付き」ですが、この方法だとほぼ自然状態なので
孵化幼虫はうろうろすることなく芽に取り付いてくれます。

幼虫が次第に大きくなる様子や、巣を作る様子を楽しんでください^^

なお、この鉢は出来れば屋外ではなく家の中の暗目の所に置くのがベストです。
日光に当たらないので葉がずっと柔らかいままですので^^
糞が落ちても大丈夫なように、下には新聞紙等を敷いておきましょう。

暫くすると、幼虫の成長とともに当然葉が足りなくなってきます。
そうなったら、初めて野外からハンノキの枝を採ってくることになります。

この時の注意点ですが、現場には水を満たしたペットボトルなどを持参し、
枝を切り取ったらすかさず切り口を水に浸すこと。
15分でもこれを怠ると、新しい枝も翌日には萎れてしまい手抜き飼育が継続できません。

もう一つの注意点は、幼木を採った時と同様に長い枝を確保することで、せめて1メートル位の
長さで枝を切って下さい。
飼育用の枝を長く採る、というのは意外と盲点で、これを応用すればオナガシジミ
のような種類でも大きな成虫を羽化させることができますよ^^

そして、この新しい枝をペットボトルに挿したまま鉢の上に置きます。
この際、新しい枝の葉が古い枝に何か所も接するように配置します。
幼虫が自然と新しい枝に移っていくようにするわけです。

写真は新しい枝を挿したペットボトルを鉢にセットした様子です。

ただ、ミドリシジミの場合は巣にこだわって新しい枝になかなか移動しない個体もいるため、
巣ごと切り取って新しい枝に引っ掛けてやっても良いです。

以上の注意点を守れば切り枝も1週間~10日程は十分に持つので、さらなる枝を採りに行く
のはほんの1~2回で済みます。今回はトータル2回で済みました^^
なお、飼育する幼虫の数が少なければ、最初の幼木だけで飼育を全うすることも可能です。

枝換え時に確認した終齢幼虫達です^^


幼虫は老熟すると枝から幹を伝って地上に降り、根元の土くれや落ち葉の下で蛹化することに
なっています。
「なっています」と書いたのは必ずしもそうした蛹化体制を取らないものが続出したためですが、
とりあえず昔からの生態教科書に従ってペットボトルの回り等に目隠しのためのティッシュを
配置します。

下の写真では、最初の幼木の残骸も見えます(葉が食い尽くされたため剪定済み)。
このティッシュの内部で相当数が蛹化すると思ったのですが、なんと1頭のみでした@@

なお、かなり注意して見ていましたが、鉢の外側に出て行ってしまう幼虫は見られませんでした。
見逃した可能性もありますが、心配な方は幼虫が老熟しきったら容器に移してその中で蛹化
させるとよいでしょう。僕も最初はそうしていたのですが、後では面倒になって幼虫が蛹化したい
所で蛹化させる、いわゆる最後まで文字通りの放ったらかしになりました^^

幼虫がすべて蛹化したら、一連の飼育セットを解体して蛹を回収するのですが、前段に述べた
ように蛹化場所について今回面白い結果が出ました。
その詳細はまた後日に^^

この飼育法は手間が掛からない上に、少なくとも野外品より大きな成虫を多く作ることができます。
以前に記事にしたフチグロトゲエダシャク飼育法と同様に色々な蝶や蛾の飼育に応用できますので、
是非参考にしてくださいね^^

もっと詳しく知りたい事や
理解できなかった事などございましたらお気軽にご連絡下さい。

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