タダミドリ | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

ミドリシジミ、疑似野外環境下での飼育における蛹化場所(2012.6.3)

先月中旬に飼育が終了した熊本産ミドリシジミ(タダミドリ)の比較的野外に近い飼育下での
蛹化場所について記しておきたいと思います。

これまで容器でしかタダミドリの飼育をしたことがなかった私は、昔からの生態関係書籍に
書かれているように、本種は老熟するとホストの幹を降り、地面の落ち葉や土くれ、雑ゴミ等の
下面で蛹化すると思い込んでいました。

ところが今回、 5月21日(ミドリシジミの手抜き飼育法)のブログ記事に書いたように自ら考案した
飼育法をとったところ、それとはかなり異なる結果を得ました。

すなわち、せいぜい1メートル下の地面に降りず、枝に付いた生葉裏で蛹化したものが続出したのです。

最近の知見ではもう一般的な事実なのかもしれませんが、私と同様に目からウロコという方のために
断片的ですが事実を書き残しておきますね^^

これから示す写真は、蛹化場所を探して移動している老熟幼虫2頭を除き、全ての幼虫が蛹化
し終わった時点のものです。

これが飼育セットの最後の状態です。

ちなみに、飼育セットを解体しつつ写真を撮ろうと鉢を屋外に運び出す際、蛹化場所を探して
主枝を降下中の最後の老熟幼虫(Ⅰ)がいました^^

左に伸びた枝を見てください。
この枝に付いた葉に合計4つの蛹が見えると思います。

2個ずつの拡大写真です。


そしてこれらは別の枝の葉に付いていた蛹です。


幹及び幹と間違えて(?)ペットボトルの側面で蛹化したものも。


以上が地上に降りずに幹より上の位置で蛹化した個体群です。

これから飼育セットを解体して、鉢に張った土の上のゴミ等の下で蛹化したであろう幾つかの蛹を
回収しようとしていたところだったので、こんなに多くの蛹が葉や枝に付いていたのは本当に
意外でした@@

一方、教科書通りに地上まで降りて蛹化した幼虫も勿論多く居ました。

下の写真は偶然チャンスを捉えたものですが、鉢の内側に沿って出来た土面の亀裂に入り込んで
蛹化場所を探している幼虫(Ⅱ)です。
しばらく見ていましたが、さすがにこの深さでは足りずに最後はそこでの蛹化は諦めたようでした^^

鉢の内側の土上で蛹化したもの。実はこの部分はティッシュで隠れていた部分です。

一個だけ入れておいた平坦な石の裏側で蛹化したもの。

そして鉢の内側の土上に落ちていた枯葉の下で蛹化したものです。

下は当初に植え込んだ幼木の一部を残してすべてを取り去った状態です。

幼木の根元に寄ってみると、地面との隙間付近に二個の蛹が見えますね。

さらに寄って覗き込むと、地中奥にもう一つの蛹があるのが分かりますね。
タダミドリは相当穴ボコが好きなんですね^^

以上が地上に降りて蛹化した一群と見なします。

もう一つの鉢もあったため正確な数値は取っていませんが、蛹化場所として幹より上を選んだ群と
地表を選んだ群の割合は概ね4:6(5:5寄りの)程度でした。

先に触れたように飼育に使った枝の長さはせいぜい1メートルですから、その距離を降下するのを
幼虫が「億劫がった」とは思えません。
何しろ、僕が実際に採卵したケヤマハンノキの下枝までは4メートルの高枝鋏がようやく届く
高さだからです。

もちろん人工下での環境なので、幼虫の本能の「何か」が狂った可能性はあるのかもしれません。
でも、この比率は決して無視はできないものでしょう。

以上の事実から考えた私の推論は、タダミドリの少なくとも何割かは蛹化の際に地上に降りず、
葉裏や枝の何処かで蛹になっているというものです。

実際の発生木でこれを裏付けられたら、ウラキンなども(パラシュートでも、幹を這って降りるでも
何でもいいですが)地表には降りず、想像以上の割合の個体が樹上に止まったまま蛹化している
のは間違いないと思います。

考えてみるとシオジのような巨木から何が何でも降りなきゃならない理由なんてないですからね^^
それ自体が幼虫にとってはとても危険な冒険であるわけです。
逆に、下に降りて蛹化する奴の方が本当は少ないのかもしれないなー、
なんて思わずにはいられません。

まあ、これは戯言ですが^^

いずれにしても、以上述べた事は飼育下ながらシャーレ等の容器飼いに比べて自然に近い
環境下での現象なので、本種の生態を考える際、何らかの示唆を与えてくれるものと考えます。

本種をはじめとするゼフや、その他の蝶の生態に興味をお持ちの方のご参考になれば幸いです^^

ミドリシジミの手抜き飼育法(2012.5.21)

3ケタを軽く超えるゼフの飼育がようやく終了しました。
現在は続々と羽化する成虫の展翅に日夜取り組んでいます^^

これだけ多くのゼフを飼っていると、手抜き出来るところはしたくなるのが人情です。
それに天気が良い日は大体フィールドに出ているので、そうしないと物理的にも不可能なのです^^

ただ、単なる手抜きをして小さな親をたくさん作っても本末転倒。
コンセプトは最低限でも野外品より大きな成虫を作る、です。

今回飼育法を開発したミドリシジミ(タダミドリ)の食樹であるハンノキ類は水揚げが悪く、「モチ」が
あまり良くありません。地植えのハンノキがあればいいのですが、そんな恵まれた方は少ないでしょう。
それに幼虫が巣を作るので、シャーレで飼って頻繁に餌換えすると消耗するのであまり大きな
成虫が期待できません。

熊本の阿蘇のタダミドリはケヤマハンノキ食いで、大分の九重周辺におけるハンノキ食いの
個体群のようには多産しません。
しかも近年は数が減っているのであまり卵も採れないだろうと思っていたのですが、
予想に反して結構採れてしまいました^^
そこでこの方法を考案せざるを得ない状況に追い込まれたわけです。

前置きが長くなりましたが、早速本題に入ります。

まず、採卵のついでにハンノキ類の幼木(現地にはたくさんある)を必要に応じて引き抜いてきます。
運ぶ手法にもよりますが、せめて地上部は1メートルは欲しいところです。
本種に限らず、採卵に車で行くなら幼木確保のためにショベルを積んでおくと良いでしょう。

帰宅したら大径の鉢に3本程を植え込みます。僕は今回、こんな鉢を2セット用意しました。
この作業はちょっと大変かもしれませんが、準備はこれだけなので春が来るまでにやっておきます。

そして芽吹きの状況を見ながら、同時に孵化させた幼虫をどんどん芽に付けていきます。
一つの芽に1幼虫が妥当でしょう。
後は当然、放ったらかしです^^

ミドリシジミで大変なのはいわゆる「食い付き」ですが、この方法だとほぼ自然状態なので
孵化幼虫はうろうろすることなく芽に取り付いてくれます。

幼虫が次第に大きくなる様子や、巣を作る様子を楽しんでください^^

なお、この鉢は出来れば屋外ではなく家の中の暗目の所に置くのがベストです。
日光に当たらないので葉がずっと柔らかいままですので^^
糞が落ちても大丈夫なように、下には新聞紙等を敷いておきましょう。

暫くすると、幼虫の成長とともに当然葉が足りなくなってきます。
そうなったら、初めて野外からハンノキの枝を採ってくることになります。

この時の注意点ですが、現場には水を満たしたペットボトルなどを持参し、
枝を切り取ったらすかさず切り口を水に浸すこと。
15分でもこれを怠ると、新しい枝も翌日には萎れてしまい手抜き飼育が継続できません。

もう一つの注意点は、幼木を採った時と同様に長い枝を確保することで、せめて1メートル位の
長さで枝を切って下さい。
飼育用の枝を長く採る、というのは意外と盲点で、これを応用すればオナガシジミ
のような種類でも大きな成虫を羽化させることができますよ^^

そして、この新しい枝をペットボトルに挿したまま鉢の上に置きます。
この際、新しい枝の葉が古い枝に何か所も接するように配置します。
幼虫が自然と新しい枝に移っていくようにするわけです。

写真は新しい枝を挿したペットボトルを鉢にセットした様子です。

ただ、ミドリシジミの場合は巣にこだわって新しい枝になかなか移動しない個体もいるため、
巣ごと切り取って新しい枝に引っ掛けてやっても良いです。

以上の注意点を守れば切り枝も1週間~10日程は十分に持つので、さらなる枝を採りに行く
のはほんの1~2回で済みます。今回はトータル2回で済みました^^
なお、飼育する幼虫の数が少なければ、最初の幼木だけで飼育を全うすることも可能です。

枝換え時に確認した終齢幼虫達です^^


幼虫は老熟すると枝から幹を伝って地上に降り、根元の土くれや落ち葉の下で蛹化することに
なっています。
「なっています」と書いたのは必ずしもそうした蛹化体制を取らないものが続出したためですが、
とりあえず昔からの生態教科書に従ってペットボトルの回り等に目隠しのためのティッシュを
配置します。

下の写真では、最初の幼木の残骸も見えます(葉が食い尽くされたため剪定済み)。
このティッシュの内部で相当数が蛹化すると思ったのですが、なんと1頭のみでした@@

なお、かなり注意して見ていましたが、鉢の外側に出て行ってしまう幼虫は見られませんでした。
見逃した可能性もありますが、心配な方は幼虫が老熟しきったら容器に移してその中で蛹化
させるとよいでしょう。僕も最初はそうしていたのですが、後では面倒になって幼虫が蛹化したい
所で蛹化させる、いわゆる最後まで文字通りの放ったらかしになりました^^

幼虫がすべて蛹化したら、一連の飼育セットを解体して蛹を回収するのですが、前段に述べた
ように蛹化場所について今回面白い結果が出ました。
その詳細はまた後日に^^

この飼育法は手間が掛からない上に、少なくとも野外品より大きな成虫を多く作ることができます。
以前に記事にしたフチグロトゲエダシャク飼育法と同様に色々な蝶や蛾の飼育に応用できますので、
是非参考にしてくださいね^^

てんてこまいのゼフ飼育(2012.4.27)

ゼフィルスの飼育がいよいよ本番に突入しています。
今年を逃すと今後数年はゼフ飼育ができなくなる可能性があるので頑張って採卵したのですが、
ちょっと計算を誤ったようです。
他の虫に使う時間を確保するため、すでに幼虫の3分の1程度は友人に譲りました。

それでも現時点でコレくらいの量を抱えています^^
この他にも鉢植えのケヤマハンノキで育てているタダミドリがいます。

もともと数が少なかった九州産アイノミドリシジミ、ウラミスジシジミ(今年は孵化率が最悪)は速攻で
奪われ^^、今季採った場所のウラジロミドリシジミはアラカシとの相性が良くなかったようで殆ど
死滅しました(泣)。

現在残っているのは大部分がキリシマミドリシジミとオオミドリシジミ、ミドリシジミですが、今回秘かに
狙っているのはキリシマ♀のAB型です。上手く出てくれると良いのですが。

オオミドリ、タダミドリは関東などでは平地の普通種として見向きもされませんが、
九州ではかなりの高所にしか分布しておらず、かつ局地的です。
タダミドリはほぼ南限の産地で、裏面が濃くなるほか♀のB紋がバッチリ出てAB型も混じります。
両種とも今年は丁寧に飼いたいと思います。

今月上旬に孵化した幼虫は、そろそろ前蛹になるものが出始めました。
キリシマは未だ孵化中のものもあり、少なくとも来月一杯は幼虫の世話に手間が掛かりそうです。

ゼフ飼育現場の今・・・(2012.4.18)

ゼフィルス卵の孵化がピークを過ぎ、怒涛の飼育地獄に突入しています(汗)。

抱えているのは熊本産(以下同じ)アイノミドリ、ウラミスジ、オオミドリ、ウラジロミドリ、タダミドリ、
キリシマミドリ(鹿児島産含む)の6種ですが、ちょっと数が多いので最後はどうなるか予想がつきません。
今でも餌換えに毎日1~2時間を要していますので。

今年はタダミドリを除けば代用食として最も使い勝手が良いアラカシで飼育できる種類を選んで
採卵しました。
タダミドリの食樹(ケヤマハンノキ)のハンノキ科は水揚げが悪いため、生息地から幼木を
数本引き抜いてきて大型の鉢に植えています。今は5ミリほどの弱齢幼虫が小さな巣を作り始めています。

2~3日に一度、餌のアラカシを近くの丘陵地から調達していますが、10日ほど前は芽吹いたばかりの
ものを少量で良かったのが・・・

今ではこんな感じに^^
今後は調達量・頻度がもっと増えていきます。

プラシャーレは100個ほど持っており、基本は1シャーレに1頭と孵化直後から少数精鋭で飼うべき
なのですが、容器が足りないので中齢までは1シャーレ2頭体制で行きたいと思います。
写真は数日前の様子ですが、その後もまだまだシャーレ数は増えているところです。

種毎の生育の様子はおいおい報告していきますね。

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