九州まで北上してきた青い宝石(2013.1.4) | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

九州まで北上してきた青い宝石(2013.1.4)

年末から表題に「宝石」の文字が続きますが、今日も宝石箱のコレクションの一つをご覧に入れます^^
ゼフィルス類以外では唯一の金属光沢を持つ貴重な種類、ルリウラナミシジミです。

九州で晩秋から初冬にかけて飼育、羽化させたものなので、♂♀ともにほとんどの個体が翅の大部分に
斑紋(青鱗)が広がった見事な低温期型となりました^^
斑紋が翅の基部にチョコッとしか現れない高温期型に比べるとまるで別種のようです@@

日本の蝶で翅が金属光沢を持つ種類にはいわゆるゼフィルスのグループがありますが、
その基調色はもっぱら「緑」系統です。

一方、ルリウラナミシジミの翅色は「青」で、まるでゼフの緑を青に置き換えたような趣があります。
すなわち、本種は青の金属光沢を持つ唯一の蝶なのです。

なお、ゼフと同様に金属光沢の翅を持つのは♂のみで、♀の翅にはしっとりとした薄い青鱗が
散布されます。
幼虫はタイワンクズ等のマメ科の花穂を食べる「花食い」タイプです。 

本来日本では八重山辺りを主な生息域とする本種が九州で一時的に発生したのが3年前の秋。
この機に美しい低温期型を箱一杯作ろうと、唯一大発生地となった宮崎県南部の日南海岸まで
飼育材料を採りに走りました^^

ルリウラナミが大乱舞していたのは大規模なクズ(マメ科)のマント帯がある1カ所のみでしたが、
本場八重山でも見た事が無い大量の紙吹雪が舞っているかのような風情には圧倒されたものです@@

どうせほっといても冬の到来で死滅してしまう運命にあることから、卵と幼虫をつい採り過ぎてしまい、
その後がしっちゃかめっちゃかになったのは、この標本数からご想像の通りです^^

展翅しただけでも500頭以上(この標本箱にあるのは450位)、総数で700頭以上は飼育したのでは
ないでしょうか@@
この数を改めて見ると、「底なし」を自称する我ながら感無量です。

でもホントに苦労したなあ。
2009年の10月から12月中旬はこれに掛かりっきりだったもんなあ。

日照時間が長くなると美しい低温期型にならないため、給餌時間を除いては常に暗い段ボール
の中で飼育しました。

最も苦労したのが温度管理です。
秋口はまだ良いのですが、11月になりだんだん低温になってくると体調不良を起こすものが
出てきます。

すなわち、もともと本種には体の生理機能を抑制して「越冬」するというメカニズムが無いため、
10℃程度にまで温度が下がると昏睡状態に陥り、そのまま衰弱して死亡に至るのです。

さりとてガンガン暖房が利いた部屋に置くわけにもいきません。
美しい低温期型と通常型との分かれ目は、「常時13℃近辺での飼育」とされているからです。
(特別に我々飼育仲間の間で培った極秘ノウハウを暴露します^^)

そのノウハウで育てた見事に青鱗が広がった♀達です。

終齢幼虫期から蛹にかけての11月中・下旬~12月上旬にこの条件をキープし続けるのが辛かった
ですねえ。

自分の就寝後の真夜中には室温が必ず10℃以下に下がるため、夜中の3時頃に一旦起きて
またヒーターのスイッチを入れる作業を連日繰り返しました。
(エアコンの無い極貧の我が家には、3時間毎にスイッチが切れるオンボロヒーターしかないため)

   
もちろん、餌換えだって大変です。
想像が付くでしょうが、700を超える幼虫を抱えているので連日数時間の作業が欠かせません。
代用食のインゲンマメも大人買い^^
餌代もこたえましたね。冬場の豆類って結構高いんですよ(苦笑)。

そして展翅・・・
やはりこれには一番泣きが入りました。
なにしろ生展翅しなければ大量飼育したって全く意味がありませんから。

長期にわたる飼育疲れの体にムチ打って、毎日毎日、羽化したこの小型シジミをせっせと展翅。
いくら生展とはいっても、2~30頭の小型シジミが連日のノルマ。
甲虫しかやらない人にこの辛さが分かるかなあ…

どれだけせっせと世話をして蛹にしても、休む間もなくその後から成虫は次々に羽化してくる・・・
いくらやっても終わらない泥沼状態。
とんでもないものに足を突っ込んだなあ、と泣きたくなったのも事実です。

とは言え、辛い日々にもいつかは終わりが来るもの。
用意した2号展翅版50本は最終的にフル稼働となりました@@

一連のジゴクから解放されたのはようやく年の瀬に近付いた頃だったかなあ。
好きなことだからこそ乗り越えられましたが、あれこそ本当の修行でしたねえ。

だから、この箱にはもの凄く思い入れがあるんですよ^^
ある年の、数か月間の自分の生きた証というか(また大げさな・・・)。

もうルリウラの標本は一生作らなくて良いぞー^^
やはりコレクションを作るなら、その時の思い思いをしっかり刻んでいきたいものですね^^

もっと詳しく知りたい事や
理解できなかった事などございましたらお気軽にご連絡下さい。

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