クワカミキリ | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

屋久島のクワ科樹木で採れるカミキリ3題(2017.9.4)

毎年7月に訪れる屋久島の平地では、クワ科樹木を探すとシーズンとしては遅目ながらちょうど
狙い時の3種類のカミキリが見られます。

時期柄、種類も個体数も随分と少なくなってしまった昆虫類の中で、これらは比較的採り易い上に
屋久島らしい特徴もあって僕は毎回好んで探しています^^

まずはキボシカミキリ屋久島亜種(亜種名:クロキボシ)です。
夜間採集していたところ、クワの横にあったマテバシイの幹に留まっていたもの。

本土域でキボシカミキリと言えば最普通種の代表の一つですが、これは桑畑が未だ各地に点々と
残っているためで、基本的に自然林の中で採らざるを得ない屋久島のクロキボシはそれほど多い
カミキリとは言えません。

クロキボシは名前のとおり地色が真っ黒で格好良く、しかも大きな亜種なので僕は全亜種の中で
特に好きな一群です。
殆ど採れない年もありますが、今年は割と多く大型のマイコレも残せました^^

次いで一部でヤクシマクワと呼ばれるクワカミキリ。
2頭並んでイヌビワの小枝の表皮を齧っているところ。結構凄い食欲です@@

残念ながら現行の分類では本土域に繋がる個体群とされますが、体形やエリトラ基部の顆粒等から
「(本土産とは)ちょっと違うんじゃない?」と考える研究者も居るようで、生態面も含めて見ている
僕もどちらかと言えばそちらに一票入れたいところ。分布の辺境地産は何かと取り扱いが難しいですね。

最後はムツボシシロカミキリ。
イヌビワの葉裏にベタッと張り付いて葉に不定形の穴を空けるように後食します。


沖縄南部以南に分布するイツホシシロカミキリの北方における代置種ですが、経験上ムツボシシロの
方が個体数は少ないように感じています。
屋久島では年により増減が激しく発生が悪い時はほぼ目に付きませんが、クロキボシと同様に今年は
そこそこの個体数が見られ目を楽しませてくれました。

今シーズンは屋久島の虫の発生が全般的に良かったことと関係するのか、上記3種も久し振りに
十分な個体数を摘まむことが出来て嬉しかったなあ^^

ちょっと変わり種のヤククワカミキリ(2014.8.10)

屋久島のクワカミキリについて少しウンチクを書いてみましょう。

従来クワカミキリは長らく屋久島から記録されていませんでしたが、1980年に二回に渡り月刊むし誌に
まとめられた「屋久島のカミキリムシ科(上・下)」の段階で、ようやく正式な記録が出されるに至りました。
当時僕は高校生でカミキリ屋に成り立ての頃だったので、むさぼるように読んだ当時の記事の内容は
よく覚えています。

当記事の最後には以下のような追記があり、当時は屋久島産(および南薩産も含め)が本土産とは
異なる個体群の可能性もあるというニュアンスが伝わります。

『本土産の個体と比較すると上翅基部顆粒の数、散布範囲共に小さく、区別出来るようである。
ただ九州佐多岬にもこうした傾向が見られるし、比較標本もきわめて少ないので、変異は本土産の
ものと連続するかもしれない』

そして、1984年に講談社から出版された「日本産カミキリ大図鑑」には、クワカミキリの分布に
「屋久島?」と記載されました。
これは脱稿時期の問題で、まだ屋久島に産するのかあやふやだった頃に原稿がまとめられて
出版されてしまったからかもしれません。
いずれにしても、講談社図鑑は相当長い期間カミキリ屋のバイブルでしたから、屋久島における
クワカミキリはずっと正体不明の存在だったわけです。

ところが、直近の東海大学出版会の「日本産カミキリムシ」におけるクワカミキリの分布一覧からは、
屋久島が無くなっていたのです!
仰天しましたね。1980年の段階で小杉谷の正式な記録がありながらかつてのバイブルでは「?」に
なっているし、今度は分布自体が無くなった。
最近流行りの「棚上げ論」か・・・
と冗談も交えた不思議な気持ちでいたのですが、クワカミキリが確実に屋久島に分布していることを
僕は知っています。

最近、「日本産カミキリムシ」の著者のお一人に本種の分布域から屋久島が外れている件を尋ねる
機会があったのですが、実はコレ、単に不注意で抜けたものだとか。
なーんだ^^
でもちょっと珍しいケースですね。

分類上の位置付けもあやふやだし、居るのか居ないのかもはっきりしない。
屋久島のクワカミキリについて、僕ほど悶々として生きてきたカミキリ屋も居ないことでしょう^^

・・・・・・

屋久島におけるクワカミキリは比較的分布が限られ、本州産等と比べると前段の特徴に加えて
体が太短くかなり違和感があります。
ただ、残念ながら亜種にするほどではないとか。

屋久島にはいわゆるクワ畑が無いので、本種はシマグワやイヌビワ等の野生のクワ科樹木から
自然の中で探すしかありません。
普通種たるキボシカミキリの屋久島亜種(クロキボシ)が比較的得難いのも、屋久島が基本的に
原生林の島である理由が大きいですね。

イヌビワの一枝に並んで樹皮を齧る二頭の♂。

たまたま向かい合って止まっていた♀。

普段は目に付き難い種類ですが、割と多い一画ではまとめて得られる年もあります。
今年はマイポイントで結構稼げました^^

亜種まではいかなくてもちょっと変わっているのは明白なので、個人的にはヤククワと呼称して
南北の個体群とは一線を引いています。
交換のタマにも実に良いです^^

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