数年振りに行うイワカワシジミ高温期型の飼育(2021.6.13) | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

数年振りに行うイワカワシジミ高温期型の飼育(2021.6.13)

現在、過去2年間不作続きだったイワカワシジミの飼育を手掛けています。
今季は甲虫類の発生が悪いし、そもそも終日採集できない梅雨時にも幼虫探しが出来る類稀な佳き蝶。
大型シジミにして美麗種、屋久島以南にしか居らず季節型も楽しめ採集・飼育も実に面白い。
国産の蝶の中でも独特のポジションを持つ不思議な奴がイワカワシジミ。

今思えば奄美に来た年はまあまあ当たり年だったのですが、来たばかりで大忙しだったので高温期型の
飼育には殆ど手が回らない状態で幾つかしか標本を残せていません。
今季は時間が在るので・・・と思いながら大きくなり立てのクチナシの実に当たってみると初年度の
のようには多くないものの、そこそこ幼虫が入っているようで楽しめました^^

こんな感じで林縁のクチナシの実がたわわに生っています。

それらを注意深く見渡していくと・・・
イワカワシジミの幼虫の入った実がポツポツ見つかります。
孵化したばかりの幼虫は小さ過ぎて実への侵入口は見つけ難いのですが、成長に伴い大きな糞を捨てる
ために穴を大きくしていくので難なく見つかるようになります。

これ位の穴になると顔を近付けると見つかりますが、脱糞中の若齢幼虫の尾部も少し覗いていますね。

終齢幼虫にもなると穴の大きさも随分大きくなり、かなり離れた位置からでも見つけられるようになります。

幼虫は実を食べ尽くすと空になった実を抜け出し、枝を這って次の実を探します。
枝を這っている幼虫を見たことはありませんが、探し当てた次の実に齧り付いて穿孔しようとしている
幼虫はたまに見られます。

穿孔完了まではさすがに時間が掛り、いわゆる「頭隠して尻隠さず」状態になるためこの際に天敵に
やられるものも多いようで、穴が開きかかった実が散見されます。鳥に食べられたり、カメムシや蟻の
餌食になっているのでしょう、実に勿体ない。

実を3~4個たいらげて老熟した幼虫は、空になった実の中で蛹化します。採集はこのタイミングで
行うのが最も効率が良いのですが、ここまで生き延びる個体は少ないし寄生の心配もあるのでやはり
初齢~中齢幼虫で採集するのが正解でしょうね。

このように個別に飼っていますが、本種の食欲は凄まじく信じられない量の糞をするので1日に2回の
掃除が欠かせませんし、餌切れがないように常に新しい実を準備しておく必要があります。
ただこの時期の幼虫の成長は極めて速いので1週間も世話をすれば蛹になってくれます。

実の中の前蛹および蛹。ここまでくれば一息付けます。
1週間後辺りから展翅が大変になるんですけどね^^


ひょんなことから今回面白いことが起きました。全くの偶然ですが容器の掃除中に2頭の終齢幼虫を
一緒にしてしまったようで気付くと一つの実の中でその2頭がひしめくように蛹化していました。
本種は一つの実を独占するため習性的に共食いが激しい種類として知られます。よって野外ではこうした
事態は起きないのですが、本件はたまたま両者とも老熟しきった状態であったことから片方が片方を齧る
という悲劇が避けられたケースと言えます。絵としてはとても面白いですね^^

高温期型の幼虫はこのようにカラになった実の中で蛹化し、羽化した成虫は脱糞口から這い出て
外界で翅を伸ばすことになります。
面白いのは低温期型の蛹は実の中で蛹化しないことで、これを知らない頃は食痕のある空になった実を
いくら探しても蛹が見つからないので不思議だったことを思い出します。
同じ蝶でも多化性の場合、時期により習性を変えるものも結構居て奥が深いもんだなあと感心する次第。

展翅後にまた写真をアップする予定です。

もっと詳しく知りたい事や
理解できなかった事などございましたらお気軽にご連絡下さい。

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