アセトン使用上の注意点あれこれ(2015.12.18) | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

アセトン使用上の注意点あれこれ(2015.12.18)

シーズン・オフに行う標本作成に欠かせなくなってきたのが虫体の油抜き。
その際に一般に使われるのはアセトンです。

単純に考えると、虫の油が抜けるまでアセトンに漬け込んでおけば良い、ということになりますが、
実際にやるとコトはそんなに簡単ではありません。
その理由は、乾燥した虫はアセトンに触れるといとも簡単に破損し易くなってしまうのです。

よって、出来るだけ刺激を与えない格好でアセトン中に漬けなければなりませんが、完了までの一連の
ハンドリングが意外に難しいのです。
かつて僕がやっていたように、アセトンにそのまま浮かべてしまうと個体同士が触れ合ってしまい、
ピンセットで持ち上げる際に引っ掛かり合って破損してしまいます。
それに液面より上に浮かび上がった部分は十分に油抜きが出来ません。

そこで、容器内にティッシュを敷き、その上に虫を並べてさらにその上から軽くティッシュを乗せます。
それにアセトンを注ぎ込み、ティッシュで虫をサンドする方法に変えました。
これだと中で虫は動かないし、十分に液体に漬け込むことが出来ます。
この時に綿ではなくティッシュを使うのは、綿だと爪先が引っ掛かり易く持ち上げる際に壊す確率が
高くなるからです。

この方法により、かなり上手く行くようになりましたが注ぎ込むアセトンの重みでしばしば虫が一部
破損する場合が起こることが分かりました。
そして現在ではさらに改良した方法を採っているので、その方法を披露しましょう。

まず、容器にティッシュを敷いて虫を並べます。
説明のため写真では適当な虫を使っていますが、本来は体の厚みがほぼ同様の種類を選ぶべきです。
そうしないと最後にアセトンを注いだ際に厚みが薄い個体が中で浮き動いてしまうからです。
ちなみにここまでは従来と同じです。

そこに予めアセトンを少しだけ注ぎます。入れ過ぎて虫が浮かないようにします。

そして、ティッシュを軽く端から被せます。
サッとアセトンが染み込んで行き下の虫に一瞬圧力が掛かりますが、この方が虫への負担が軽いようで
破損はまず起こりません。

最後にアセトンを追加し、完全に虫が浸かってしまうようにします。
これだと十分に油が抜けるし、虫も動きません。
この容器は蓋をキッチリと閉め、間違って刺激を与えてしまわないような部屋の隅等に置きましょう。
前段のようにアセトンに触れた虫体はちょっとの刺激でいとも簡単に破損してしまいますので。

数日後に虫を取り出すときは、被せたティッシュを手前からピンセットでゆっくり剥がしていきます。
そして1頭ずつ摘まんで取り出しますが、ここで壊し易いため、細心の注意を払いながら行います。
取り出した虫は綿等の上に並べておけば1日で乾燥するので、翌日にはマウント出来ます^^
もし、油が完全には抜けていないなと思う個体があれば、それは別途に再度同様の方法を取ります。

次の新たな虫達の油抜きをする際は、古いアセトンは思い切って捨ててしまうことを推奨します。
感覚的なものですが、液が多少汚れた程度で済めばもう一度くらいは再利用出来そうではあります。
ただここでケチッて油で汚れた液を再利用すると、間違いなく次の標本の出来は悪くなります。
出来るだけ綺麗な標本を作りたい、特に貴重だと思う虫の場合はバージン液を使うべきでしょう。
アセトンも高価ですからね。リサイクルしたくなるのは人情ですが、まあ、あなた次第です^^

なお、タトウごとアセトンに漬け込む方法も試しましたが、これは不都合が多い事が分かりました。
まず、体積が大きくなるのでアセトンを無意味に大量に使うこと。
そしてタトウそのものに油が染み込んでいることが多いため、その分の油も加わり液体の汚れが
進み、液替えの回数が多くなる(虫が壊れる確率が高くなる)と共にその汚れで虫体も汚してしまうこと。
アセトンがタトウ内に流れ込むと中が水圧で膨らみ、特に小さい虫がタトウ内で動いて干渉し合い
結局破損してしまうこと。
最終的に容器からアセトンを捨てる際にタトウが容器から落ちないように押さえる必要があるが
この際に虫を壊し易い。容器を傾ける際に膨らんだ内部の液体が動くが、この時に虫も動き壊れる。
さらにそのまま乾燥させるとやたら時間が掛かる(タトウと内部の綿も乾く必要があるので)。
何度アセトンを替えてもタトウそのものが汚れているため最後まで汚れを「引きずって」しまい、
結局手間暇を掛けた割には虫が綺麗にならない。
良いことなんて全くありませんでした・・・

誰だ、タトウごと沈めればいいなんて言ったのは・・・
信じたばかりに相当苦労したのが分かるでしょ^^
1年前くらい前に当ブログでもタトウごとの油抜きに触れましたがここに訂正します。
上記のような不都合に対処出来る方法があれば別ですが、一般には止めた方がよさそうです。

油抜きは意外と奥が深いので、今後も試行錯誤が続くと思います。
また何か気付いたことがあればお知らせしますね。

もっと詳しく知りたい事や
理解できなかった事などございましたらお気軽にご連絡下さい。

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