冬のお約束、成虫越冬のタテジマカミキリ(2013.2.22)
もう再来週には長期採集行が始まろうとする今、2月下旬としては久々にすっきり晴れて暖かい日に
なったため、地元では本当に最後となる(ホントか?)フィールドへ出てきました^^
引っ越し準備や諸手続き、虫の整理等で連日忙しいため、もちろん数時間の近場採集です。
繰り返しになりますが、今になって近場の普通種の在庫を増やしている場合ではないので、
成虫越冬中の探し易いカミキリをちょっとだけ眺めてくることにしました。
場所は自宅から車で30分位の小高い山。
熊本市の南の外れに当たり、海も近いことからやや南方系の普通種が採り易いところです。
まず出会ったのがこの時期のお約束、ハイイロヤハズカミキリです。
枯れたメダケの節付近に木屑を一杯詰めて、その傍にコロンと鎮座しています^^
コイツを初めて採ったのは小学4年生の冬だったなあ。
友達と枯れ竹を蹴り割って遊んでいた時、不意にこの虫が飛び出してきたんだっけ。
誰からも教わること無く、偶然に生態の一端を知ったカミキリでした^^
今度は腹面を向けて、バンザイの格好で現れました。
竹にしっかり貼り付いて活動するため、腹面が真っ平らなのが分かりますね。
可愛い顔をしてる^^
実は、今日は別の成虫越冬中のカミキリを見るつもりで来ました。
まずはそのホストであり、越冬の舞台ともなるカクレミノを探します。
カクレミノ自体は林の中に数多くあるのですが、どれでも良いというわけではありません。
まず、巨木になってしまうと虫から好まれず第一手が届きません。
そして日当たり、風通しが良い空間にある元気の良い木もホストとしては良くありません。
林縁にあるやや日当たりの悪い中木が採集には適しています。
林道から少し斜面を下りた日陰のカクレミノの枝先で、今日の主役のタテジマカミキリを見つけました^^
逆光で見難いですが、太木と交差した小枝の股付近に潜む白い虫体が見えるでしょうか。
枝を引き寄せて撮った拡大写真です。
樹肌を削り取って作ったボート状の窪みに体を埋め、触角をピーンと伸ばして出来るだけ枝と
同化しようとしているのが分かると思います。
虫体を引き剥がして撮った越冬用の窪み。
タテスジゴマフカミキリほど精密ではありませんが、かなりしっかりと作り込んでいる事が分かりますね。
越冬中のタテジマカミキリの様子をパチパチ撮っていってもよいのですが、それではフツーで面白く
ありません。
当ブログではちょっとヒネッてみましょう。
タテジマの幼虫を見てみましょうか^^
本種が発生しているカクレミノの枝先を注意深く見ていくと、先っぽが枯れて空洞になっている
ものがあります。
タテジマの幼虫が食い入っている目印です^^
茶枯れている先端部を折り取ると、生枝の部分に幼虫の食道抗が現れました。
さらに注意深く割り進むと・・・
初齢幼虫が居ました^^
細長くて胸部が極めて太く、頭~前胸が黒いカミキリの幼虫としては極めて特異な格好をしています@@
取り出してカクレミノの葉の上で撮ってみます。
細長過ぎるためどうしても丸まってしまい、全体像が分かり縫いですが一般的なカミキリの幼虫とは
かなり異なるのが分かりますね。
尾部もズドーンと切り落とされたような形態をしています。
面白い事に、成虫の形態が似ているシロスジドウボソカミキリ等のポティーネ属(Pothyne属)の幼虫も、
この形状に酷似しています。
頭部や前胸は黒く無いものの、胸部が太くて極めて細長い筒状の腹部を持っており、尾部が垂直に
落ちているところは殆ど同じです。
蛇足ですが、この山ではシロスジドウボソの記録も多く、僕もカラスザンショウの枯れ枝から成虫および
幼虫を多数出したことがあります。
タテジマと異なる点は、幼虫が枯れた材を食うこと、羽化しても脱出せずホスト内部で越冬することと
言えます。
数時間の散策でしたが、一年振りに成虫越冬中のカミキリ達に出会えて満足しました。
ポカポカした昼下がり、タブに付いたホシベニカミキリの食痕を確認しながらゆっくりと下山しました^^