カミキリ | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

植木市で目に付いたカミキリ等のホスト(2013.2.25)

地元では、冬になると幾つかの大きな植木市が開催されます。
今日は庭いじりの好きな両親を連れてその一つに行って来ました^^

まあささやかな親孝行の一環ですが、僕としては蝶の飼育に使えそうな苗木があれば買ってこようという
プチ企てもありました。

ただ、やはり庭木向けの種類ばかりなので、虫の趣味に使えそうなものは殆ど無いというのも経験から
知っているのではありますが。

思った通り購入したくなるものは無かったのですが、虫屋(特にカミキリ屋^^)として目に付いた種類が
幾つかあったので、ご参考までアップしておきます。

ハイノキ。
九州ではモウセンハナ、ジャコウホソハナ、クロソンホソハナ等、やや得難いハナカミキリのホストです。
屋久島ではこれらに加えトガリバホソコバネ等も利用していますし、次種も含めハイノキ科の樹木には
小型種のカミキリがかなり付くので虫屋の知識としては欠かせない一群です。

クロキ。
ハイノキ科の中では南方地域で最も注意すべきものでしょう。
上の種類に加え、沖縄ではリュウキュウモウセンハナをはじめとしたハナカミキリ類、ニセコゲチャサビ、
各種グラフィラ属等、実に様々なカミキリのホストとなります。

近年ではオキナワナカボソタマも採れるのが確認されていますし、九州では冬季に花芽を蓄えるので、
サツマシジミの食樹としても重要です。

ソヨゴ。
モチノキ科の樹木はトゲウスバカミキリのホストとして知られていますが、多産地として有名な四国では
これが主なホストとなっています。
ソヨゴの南限は屋久島なので、採り難い大隅産、屋久島産スピニも当然食っているでしょう。
アオマダラタマムシも好んでモチノキ科をホストとして利用しています。

シキミ。
独特の芳香があり、クロモンヒゲナガヒメルリ、キイロイトヒゲカミキリのホストです。
毒性が強いらしく、僕も鹿児島の大隅半島でクロモンヒゲナガヒメルリ目的で散々材採集を行った後に、
これにやられたと思しき症状を患ったことがあります。扱いには注意すべき樹木かもしれません。

シマトネリコ。
南方ではアメイロカミキリの系統(広義の)が結構ホストとして利用しています。

レッドロビン。
カナメモチとオオカナメモチの交配によって育成された品種で、近年は都会の公園等でもルリカミキリが
手軽に採集できる庭木として親しまれていますね。場所によってはリンゴカミキリも利用しています。

リョウブ。
ホストとしてはあまり重要ではありませんが、花は夏の訪花性カミキリを狙う格好のポイントとなるので、
この樹肌は必ず覚えるようにしましょう。

以上、少ないですが採集の一助にでもなれば幸いです^^

冬のお約束、成虫越冬のタテジマカミキリ(2013.2.22)

もう再来週には長期採集行が始まろうとする今、2月下旬としては久々にすっきり晴れて暖かい日に
なったため、地元では本当に最後となる(ホントか?)フィールドへ出てきました^^

引っ越し準備や諸手続き、虫の整理等で連日忙しいため、もちろん数時間の近場採集です。
繰り返しになりますが、今になって近場の普通種の在庫を増やしている場合ではないので、
成虫越冬中の探し易いカミキリをちょっとだけ眺めてくることにしました。

場所は自宅から車で30分位の小高い山。
熊本市の南の外れに当たり、海も近いことからやや南方系の普通種が採り易いところです。

まず出会ったのがこの時期のお約束、ハイイロヤハズカミキリです。
枯れたメダケの節付近に木屑を一杯詰めて、その傍にコロンと鎮座しています^^

コイツを初めて採ったのは小学4年生の冬だったなあ。
友達と枯れ竹を蹴り割って遊んでいた時、不意にこの虫が飛び出してきたんだっけ。
誰からも教わること無く、偶然に生態の一端を知ったカミキリでした^^

今度は腹面を向けて、バンザイの格好で現れました。
竹にしっかり貼り付いて活動するため、腹面が真っ平らなのが分かりますね。
可愛い顔をしてる^^

実は、今日は別の成虫越冬中のカミキリを見るつもりで来ました。
まずはそのホストであり、越冬の舞台ともなるカクレミノを探します。

カクレミノ自体は林の中に数多くあるのですが、どれでも良いというわけではありません。
まず、巨木になってしまうと虫から好まれず第一手が届きません。
そして日当たり、風通しが良い空間にある元気の良い木もホストとしては良くありません。
林縁にあるやや日当たりの悪い中木が採集には適しています。

林道から少し斜面を下りた日陰のカクレミノの枝先で、今日の主役のタテジマカミキリを見つけました^^
逆光で見難いですが、太木と交差した小枝の股付近に潜む白い虫体が見えるでしょうか。

枝を引き寄せて撮った拡大写真です。
樹肌を削り取って作ったボート状の窪みに体を埋め、触角をピーンと伸ばして出来るだけ枝と
同化しようとしているのが分かると思います。


虫体を引き剥がして撮った越冬用の窪み。
タテスジゴマフカミキリほど精密ではありませんが、かなりしっかりと作り込んでいる事が分かりますね。

越冬中のタテジマカミキリの様子をパチパチ撮っていってもよいのですが、それではフツーで面白く
ありません。
当ブログではちょっとヒネッてみましょう。

タテジマの幼虫を見てみましょうか^^

本種が発生しているカクレミノの枝先を注意深く見ていくと、先っぽが枯れて空洞になっている
ものがあります。
タテジマの幼虫が食い入っている目印です^^

茶枯れている先端部を折り取ると、生枝の部分に幼虫の食道抗が現れました。

さらに注意深く割り進むと・・・
初齢幼虫が居ました^^

細長くて胸部が極めて太く、頭~前胸が黒いカミキリの幼虫としては極めて特異な格好をしています@@

取り出してカクレミノの葉の上で撮ってみます。
細長過ぎるためどうしても丸まってしまい、全体像が分かり縫いですが一般的なカミキリの幼虫とは
かなり異なるのが分かりますね。
尾部もズドーンと切り落とされたような形態をしています。

面白い事に、成虫の形態が似ているシロスジドウボソカミキリ等のポティーネ属(Pothyne属)の幼虫も、
この形状に酷似しています。
頭部や前胸は黒く無いものの、胸部が太くて極めて細長い筒状の腹部を持っており、尾部が垂直に
落ちているところは殆ど同じです。

蛇足ですが、この山ではシロスジドウボソの記録も多く、僕もカラスザンショウの枯れ枝から成虫および
幼虫を多数出したことがあります。
タテジマと異なる点は、幼虫が枯れた材を食うこと、羽化しても脱出せずホスト内部で越冬することと
言えます。

数時間の散策でしたが、一年振りに成虫越冬中のカミキリ達に出会えて満足しました。
ポカポカした昼下がり、タブに付いたホシベニカミキリの食痕を確認しながらゆっくりと下山しました^^

今日の虫事。アセトンで脂抜き^^(2013.2.11)

昨今は標本作成の仕上げの工程で、有機溶剤を使って虫体の脂抜きを行う人が増えています。
僕も勿論、脂抜き推奨派の一人です^^

肉食のハンミョウやゴミムシをはじめ、カミキリやオオキノコ等といったグループでも、経年と共に
体内から脂分が滲み出して綺麗な斑紋を汚してしまう個体がしばしば、と言うよりかなりの割合で
見られます。

ゴマシジミやクロシジミといった蝶でさえ、幼虫時代の肉食が影響して腹部から脂が出る個体が
結構多く、それが翅に滲み渡るともう標本の体を成さなくなりとても厄介です。

以前は一度脂が滲み出してしまうとどうにもならなかったのですが、最近では主にアセトンに
一定時間浸けることである程度の脂分を取り去り、かつ滲み出しを極力減らすことが出来るように
なっています。

これは、アセトンに一週間程浸けているキマダラカメムシ。
カメムシ類も体内にかなりの脂分を持っており、ご覧のように溶け出した脂でアセトンが褐色に
濁っています@@

本当はこんなに無造作に複数個体を入れ込むのは良くありません。
アセトンは瞬時に虫体の柔軟性を奪うので、液体の揺れで個体同士がぶつかり合った際に
パーツ(特に触角)を破損させるのが関の山です。
僕は慣れているので面倒を省くためについやっちゃいますが、まあ、これは良くない見本として
捉えて下さい^^

その後アセトンから引き上げ、乾燥後マウントした標本です。
虫体をドス黒く汚していたアブラがすっかり抜けて、生前のようにキレイな紋様が蘇りました^^

アセトンに浮かべるだけだと水面から浮き出た背中(エリトラの高い部分)や前胸の脂が取れないので、
僕はこのように脱脂綿やティッシュを「落としぶた」として上から被せて対処しています。
そしてこれは個体同士のぶつかり合いを防ぐ意味合いもあります。
左はコガタノゲンゴロウ、右はレインボーセンチです^^

標本数が少数の場合はこれでも良いのですが、慣れないと落としぶたを持ち上げた時にやはり
触角等を破損させてしまう事故も起こり得ます。
これを防ぐには、大き目のタッパーに標本を詰めたタトウを入れ、その上からアセトンを注いで
タトウごと沈めてしまった方が良いでしょう。

蛇足ですが、調べてみると脂は低極性の物質なので、高極性の有機溶剤であるアセトンとは
相性が良いとは言えず、脂抜きの溶媒としてはあまり適していないように思えます。
それなのにこれだけ普及しているのは、やはり入手し易いためでしょうか。

本当ならもっと脂と親和性の高い(すなわち脂がより溶け出し易い)低極性の溶剤を使った方が
良いはずですが、その辺りの検証は殆ど行われていないようです。

まあ、とりあえずはアセトンでも概ね良好な結果が出ているので、あまりこうした議論は進まない
のでしょうね。
僕も一斗缶の「大人買い」をしているので、暫くはアセトンを使い続けてみるつもりです^^

脱脂がほぼ終了しつつある与那国産フチトリゲンゴロウ。
一昨年「種の保存法」の国内種に指定され、もう採れなくなっちゃいました。
タダゲンを凌駕する迫力満点の珍奇ゲンゴロウだったのに、残念・・・


ゲンゴロウ類は特に脂の出方が酷く綺麗な紋様を汚しがちですが、アセトンを使用することで
ほぼ生前の鮮やかさが蘇ります。
これも10年以上も前の採集品で脂滲みで真っ黒に汚れていたので、とても得した気分^^

蛾の太い腹部からもしばしば脂が出てきます。
その際は、翅が影響を受ける前に腹部を切り離し同様にアセトンに浸け込みます。

そして脱脂が済んだ後に乾燥させ、ボンドで元の位置に貼り付けます。
この作業は、ゴマシジミやクロシジミといった脂の出易い蝶でも同様です。

腹部を修理した後はこのように立てたコルク板やポリフォームに刺してボンドの乾きを待ちましょう。
こうすることで腹部が垂れ下がったまま固まってしまう事故が防げます^^

 

阿蘇のホソキリンゴは小型の個体群(2013.2.6)

昨日に続き、地元のオベレア(Oberea:リンゴカミキリ属)をもう1種紹介します。
主にマメ科の植物をホストとするホソキリンゴカミキリです。

全国的に普遍なオベレアと言えますが、地理的変異が大きいようでコレクションの対象としては
面白い種類だと思います。

また九州では屋久島や対馬に極めて近縁なものが居て、進化の度合いを見極めるのも
結構難しいですね。

地元熊本の阿蘇にも面白い個体群が居り、そこでの本種は一様に小型となります。
講談社のカミキリ大図鑑plate95に阿蘇産の本種が図示されていますが、殆どの個体が同様に
極めて小さく、やや寸詰まりに見えます。

エリトラの暗化も顕著で、熊本の平野部や九州脊梁山地で採れるものとは総じてちょっと異なる
という感じを持っています。

「早朝ビーティング」で落ちた個体。
図鑑の写真とそっくりです^^

(参考)
早朝ビーティングのススメ(2012.6.20)

ひょっとしたらひょっとするかな。
今度暇な時にじっくりと調べてみよう^^

さて、阿蘇の灌木を交える草原では、本種はハギやフジをホストとしており初夏の頃に得られます。
草原の小さなハギの葉裏に留まった阿蘇産のホソキリンゴです。
一枚を撮ったところで、ヤツはすぐこちらに気付きサッと葉表に移動しました。


本種は特に敏感なオベレアで、傍を通ると不意に飛び立つのですが、かなり低い位置を生活圏に
しているので採集は割と楽な種類です^^

本種とも暫しのお別れだなあ・・・

ミヤマキリシマの小さな葉に留まるソボリンゴカミキリ(2013.2.5)

大分と宮崎の県境に位置する祖母山(1,756)は、その山麓を地元熊本県にも大きく張り出しており
関係3県の昆虫相に極めて大きく貢献しています。
全国的にも、頭に「ソボ」を冠する幾つかの昆虫の名前でよく知られていますよね^^

そうした昆虫の中で最も認知度が高いのがソボリンゴカミキリでしょう。
とても綺麗でカッコ良く、個人的には特に好きなオベレア(リンゴカミキリ属:Oberea)の一つです^^

全国的にはあまり産地は多くないと思いますが、居る所では数がまとめて採れるケースが多いことから、
やや珍品度が押し下げられている可哀想な(?)カミキリという気がしています。

九州各県で記録があり、確か地元での初記録は最も遅かったと記憶しています。
でも、今ではある産地のおかげで、九州では本県がソボリンゴを最も採り易い所となっています^^

ソボリンゴのホストは各種のツツジ科植物なのですが、本県某所の観光地には同科のミヤマキリシマの
大規模な群落があり、本種はそこで割と発生しています。
もちろんタダリンゴのように無数が得られるわけではありませんが、時としてミヤマキリシマに害を与える
として県から調査が入ることもあります。

面白いことに、地元では他に九州脊梁山地の入り口でわずか2頭が採れているだけなんですよ。
この事からも極めて局所的な分布なのが分かりますね。

さて、前から確認してみたかったのが、ソボリンゴがミヤマキリシマの葉にどのように留まっているか
ということでした。
と言うのも、ミヤマキリシマの葉はソボリンゴの虫体に比べて極めて小さいからです@@

近年有名になった大分県九重や神奈川県箱根のソボリンゴは、葉が大きなタイプのツツジを
食べるので食痕も目立ち実に見つけ易いです。
従って葉裏に留まっている写真も撮り易く、しばしばそうした生態写真を見る事があります。

しかし葉が無数にあるミヤマキリシマでは一体何処に留まっているのかが分かり難いため、
ルッキングで本種を探す人もまず居ないと思われます(しかもミヤマキリシマ自体も無数にある^^)。

6月のある日、ミヤマキリシマの群落の中で丁寧に探したところ、枝先の下面に留まる本種を
幾つか発見することが出来ました^^


小さすぎる葉には隠れられないものの、やはり裏面に留まるというオベレア独特の習性は
同様ですね^^

オベレアは他にも多種が居ますが、これほど小さい葉に依存する個体群の存在を知らなかった
カミキリ屋さんも多いことでしょう^^

今度は夕刻の活動時間帯に葉表に留まった♂と♀です。
♂エリトラの黒い縁取りの力強さが素晴らしい^^


初夏の風物詩として毎年少しづつ採集していましたが、今年から数年はターゲットを大きく変えるので
その姿を拝むことは暫く出来なくなります。

ちょっと寂しいかも。

高地性サペルディーニが集まるマイ・オヒョウ^^(2013.2.3)

カミキリのサペルディーニ族(Saperdini:トホシカミキリ族)のほとんどの種類は、後食のため特定の
植物の葉を訪れることが知られています。

フチグロヤツボシならホウノキとか、ムネモンウスアオならヤンバルアワブキ、ムネモンヤツボシなら
サルナシ、ジュウニキボシならセンノキ、イッシキキモンならクワ類といった風ですね^^

葉の裏から主脈を齧って線状の食痕を付けるタイプ、葉の表に留まって不定形な穴を空けるタイプなど、
その食べ方にも幾つかのパターンがあります。

すなわち、植物の種類および後食痕を組み合わせると、そこにある種のサペルディーニが潜んでいる
という格好の目印となるのです。
カミキリ屋さんはその事をよく知っていて、採集の一助としているわけです^^

そして、何種類ものサペルディーニを誘因する採集者にとっては有難い植物もあります^^
その代表がオヒョウやハルニレ(いずれもニレ科)です。

採集者の多い関東近辺なら、これらの枝先を掬うとニセヤツボシ、シナ、ハンノアオ、シラホシキクスイ、
ヒゲナガシラホシ、カツラ、クロニセリンゴ、セミスジニセリンゴ、シラホシなど多種のサペルディーニを
採集することが出来ます(場所によってはラミーなんかも来る^^)。

ただ元々は寒冷地に多い植物であり、本州以北では何処にでもあるので採集にも使い易いのですが、
九州の採集地において良い木を見つけるのは非常に厳しいです。

そうした中で、僕は地元の高標高地点にマイ・オヒョウを数本持っています^^
この一画を見つけるのに相当苦労しましたが。

去年の秋、落葉が進んだ頃のマイ・オヒョウの一つ。
今年の夏も頑張ってサペルディーニ達を集めてね^^

これを丁寧に掬うと、キバネニセリンゴ(シラホシキクスイの代置種)、コジマベニスジ(カツラ一型)、
ハンノオオルリ(ハンノアオ亜種)、クロニセリンゴ(九州では珍)、セミスジニセリンゴ等を結構恵んで
くれます^^

近くでは大珍品のシナ九州亜種もナイターで採っているので、上手くすればこれに集まってくるでしょうし、
熊本では2頭しか採れていないヒゲナガシラホシも記録地がこの近くなので、いずれ採れると期待して
います。

後食のために特定の植物に集まるカミキリは他にもかなり多く、ここでは十分に語り尽くせないため、
面白い生態も含めていずれ種類毎に解説を加えていきたいと思います。

阿蘇の山々に暫しのお別れ(2013.1.19)

特段何かを狙っての採集というわけではないのですが、昨年11月以来となる阿蘇方面へドライブを
してきました。

これから約半年の間、阿蘇を訪れることが出来なくなることから、言わば一時のお別れを告げるという
意味合いでしょうか^^

昨年ムナコブハナカミキリを結構採ったポイントの山肌は、寒風にさらされ既に雪化粧となっています。
朝日が斜めから差し込んで撮り難い・・・

クロカタビロオサムシ(九州では珍品)やゴミムシ類を掘り出そうにも、凍った大地はピッケルを全く
受け付けません。 まあ、これは予想通りです^^

クロカタビロオサはホントに変なオサムシで、希に大発生をすることで知られます。
ただ、そのメカニズムがよく分かっていません。
僕も東京の端っこの方で大発生に遭遇したことがあり、数日の間になんと5百頭を得た事が
あります@@

東京産だと「南虫」にならない(^^)のでとりあえずは当ブログの対象外として触れませんが、
面白い概念も含むのでネタが枯渇したら(それはまず無いけど^^)紹介するかもしれません。

また、この辺りのゴミムシは結構面白いと踏んでいて、以前僕が関東平野等で懸命に掘っていた
種類がヒョコッと採れたりしています。
ツヤキベリなんかも居たりして・・・  これは絶対ムリか^^

ムナコブの生態の一端でも調べようと機会があればいろいろやっているのですが、中には同じ事を
考えている人もいるようで、「僕がやろうとした事」を先にやった跡があってちょっと驚きました。
でも上手くはいかなかったみたい。

僕も試してはみたのですが、やはり期待したような成果は都合よく現れませんねえ。
もっと手強いキュウシュウヌバタマハナの方も芳しくありませんでした。
ヌバタマの方は、かつて知人がある樹木の伐根痕から「掘り出した」という話もあるのですが・・・
個人的にはちょっと眉つばなんですよねえ。

本当に厄介な連中だ・・・

話変わって、カルデラから見通した阿蘇連山の今の山並みです。
夏は青々とした草原が目立つ山々なのですが、ご覧の通り冬枯れしています。
頂上付近の草原の地中には、昨日採集禁止となったばかりの(従って採られる心配の無くなった)
ダイコクコガネが、スヤスヤと眠っていることでしょう^^

冬の阿蘇ってなかなかイメージし難いと思いますが、こんな感じです。
しかし、今日は大気が煙っていてクリア感が出ないなあ。実に残念。

一部には有名なオオムラサキのポイントに寄ってみると採集者が既に入っているようで、最も安易な
場所の食樹エノキの根元では越冬幼虫を探した跡がありました。

人が探した後なのでちょっと時間が掛かりましたが、ようやく幾つかの幼虫に出会えました。
なお、右端の1頭はゴマダラチョウです。
今年は飼育が出来ないので、マイポイントも含めこれ以上の探索は行いませんでした。

この辺りでは数種類のゼフィルス類も採卵出来るのですが、同様に今年は飼育が出来ないので
観察も含めてパスです。
ダイコクと同時に採集禁止種になったものもあり、ただただ残念です。

そして最後にサビナカボソタマムシのポイントに寄ってみることにしました。
そこに生えている食樹ヤマボウシの周りはヤブが濃く、シーズン中は根元に近付けないからです。

御神木の幹に開いたサビナカボソの脱出口です。
タマムシ独特の円でも楕円でもない独特の形状(強いて言えば変形三角形)をしています。

考えれば、サビナカボソやミヤマナカボソ等を採る機会はここ数年は無くなるんだなあ。
ちょっと寂しい気はするけど、これまで散々採ってきたからまあ良いか。
暫く寝かせておけば更に採り易くなるかもしれないし^^

じゃあ、バイバイ、阿蘇の山々。
そしてそこに住む虫達。

また夏に来るからね^^

梅雨前の南限フクチコブヤハズカミキリ(2012.6.2)

6月に入り、梅雨の足音が聞こえてきました。
梅雨前線が停滞したら暫く採集に出られない日々が続くので、この時期はいつも焦ります。

昨日の天気予報は終日曇り。ただ、気温が高目だったのであえて採集を敢行しました。
梅雨に入る前にできるだけフィールドに出ておきたいですからね^^

遅くなるほど天気が悪くなるようなので、まずは阿蘇方面でタマムシやハムシ、そして葉上性の
カミキリを狙った後、夜は南限のフクチコブヤハズを採ろうという計画を立てました。
雨さえ降らなければ天気が悪くてもコブは大丈夫でしょう。

連日の採集で疲れが溜まってきたので、今回は朝の渋滞が終わる頃に出発。
ポイントには午前9時過ぎにゆっくり到着です。
採集地に近いと本当に楽だなあ。

阿蘇山の周りはこの時点で重い雲が垂れ込めています。

ただ、気温が高いので虫達は活発ではないものの、十分活動はしているようです。
最盛期を迎えたサビナカボソタマムシやハムシの珍種等は問題なく採集、写真撮影できました^^
これらの詳細はまた別記事で詳しく報告する予定です。

阿蘇山麓の森林と草原が交わる牧野では、熊本の風物詩である赤牛(褐毛和種)がのんびりと
横たわり草を食んでいます。

少し早いかなとは思いましたが、センノキの葉をスウィーピングするともうジュウニキボシカミキリが
数頭入りました。本種はこれからが本番でしょう。
阿蘇にはセンノキが多いのですが、九重にも居るナカネアメイロは未発見で今後の課題です。
カエデノヘリグロハナは環境的に無理でしょう。

面白かったのは同時にタテジマカミキリが入った事で、本種をこれほど内陸の高地で採ったのは
初めてです。普段は目立たないカミキリですが、ウコギ科の植物を上手く利用して実際は広く
分布しているのでしょう。

ミズキが目に着いたので何気なく掬うとクロキモンが1頭入りました。
これも阿蘇で採ったのは初めてです。熊本では九州山地方面と北部の渓谷にしか居ないと
思っていましたが、意外と分布は広いようです。

そしてもう一つの発見がニセシラホシがミズキに結構集まっていることです。
本種は草原地帯の林縁の低いサワフタギによく見られるのですが、ミズキの高い枝先に集まっている
のは意外でした。
数か所で10頭近くが網に入ったので、ミズキの葉も後食しているのでしょう。

ヌルデ小木の葉裏にはヨツキボシが何頭も止って主脈を齧っていました。
ヌルデと言えばイッシキキモンの食樹ですが、本種は近年本県から姿を消しています。
唯一の産地だった場所がこの近くにあるので、盛夏に一度探しに来てみようと思います。

午後3時過ぎ、一気に北部のフクチコブヤハズの南限産地に向かいます。
阿蘇のポイントからだと1時間半程度で移動できます^^

まだ明るいうちに「マイ倒木」や「マイ立枯れ」でコブが居る事を確認(当たり前ですね^^)。


そして夜7時半頃からナイターを行いながら原生林の中を徘徊します。
南限フクチコブもやっぱり夜の方が探し易い^^
(いずれもフラッシュ使用)




予想通り、ナイター幕にもコブが飛来・・・じゃなかった、歩いて到着^^

フラッシュは使用していますが、先月30日のブログ記事の大分県黒岳産フクチコブヤハズと
この産地の色合いが異なるのが分かりますか?
端的に言えば、オーソドックスな黒岳産フクチコブは茶色味が強く、南限産地は薄い茶色ながら
灰白色が強くなります^^

この両者、採っていてある違いに気付いたので、その件についてはメルマガに書きますね。

うーん、越冬明けのフクチコブはもういいかな。
でも面白いし、またやるんだろうなあ。今度は・・・

 

次々と蛹化するゼフィルス、続々と材から出るカミキリ(2012.5.15)

九州地方ではうっとうしい雨が二日続いています。
気温も低目で暫くは半袖や短パンで過ごしていましたが、さすがに耐えられず、仕舞い込んだ
長袖を引っ張り出しました。

さて、採集にも行けないので溜まった採集品の整理や飼育材料の世話をしていますが、
今日は現在の「飼育室」の様子をご覧にいれます。

まずは、ようやく幼虫がすべて蛹化して手間が掛からなくなったゼフィルス達。
写真は約1週間前の様子で終齢幼虫が少し残っていたのですが、今はすべてが蛹です。

その時点での蛹達です。

今年は熊本と鹿児島のキリシマミドリシジミを重点的にやりました。♀のAB型狙いです。
次に多いのがほぼ南限の裏面の赤味が強いミドリシジミ、そして九州では少ないオオミドリです。
あとはウラジロミドリ、アイノミドリ、ウラミスジがほんの数頭ずつ。

アイノ、ウラミスジといった九州では採るのが難しいゼフの殆どは友人に奪取されました(泣)。
相当時間と手間を掛けて採卵したのに・・・

実は一番に蛹化したオオミドリが今日にも羽化しようとしていて、これからは毎日、
羽化成虫の取り込みと展翅(これがキツイ!)に明け暮れる日々が暫く続きます。
想像するだけでブルーだ・・・
1泊での採集行も暫くの間は無理だなあ。

そして材から羽脱しているカミキリ達の一部です。
殆どは普通種ですが、それらには実際ほとんど手が回っていません@@

現在はベニハンノキカミキリの羽脱が終了し、白イタヤの羽脱が続いているところです。
あと数日でクワからムネホシシロが出始め、今月下旬にはイチョウヒゲビロウドが出てきます。
今年はセーブして材を採りましたが、珍品も何かしら出るでしょう。

6月あたりから本格的な採集シーズンになるので、蝶とカミキリのいずれの飼育もそれまでには
完了させるという予定でやっているところです。

5月中旬の南薩のカミキリ(2012.5.14)

5月11日(金)から12日(土)にかけて鹿児島県の薩摩半島南端に行って来ました。

メルマガでは行かないと言っておきながら、その翌日にはあっさり撤回^^
本当は大分県黒岳方面へ最後のカエデの花掬いに行く予定だったのですが、予報によると
大分方面はかなりの低温らしいので、採集になりそうな南薩へ急きょターゲットを変更した
というわけです。

南薩で今の時期に狙えるのが標高4~5百メートルの中山帯に分布し、クロキをホストとする
大型のキュウシュウトガリバホソコバネカミキリ及びエリトラが黒いジャコウホソハナカミキリ、
そして近年侵入が取り沙汰されるケブカトラカミキリです。

トガリバ自体は今年すでに高地で採った材から結構羽脱いているので個体数が欲しいわけでは
ないのですが、数年前に当地で割り出した超巨大♀の蛹を死なせて発狂寸前になったことから
そのリベンジという意味もありました。

採集初日、トガリバ等のポイントに着いて感じたのは思った以上に「涼しい」こと。
標高5百メートル近くはあるので平地より体感温度が低いのは当然なのですが、ここまで低いとは
意外でした。そしてこの傾向は終日続いたのです。

午前8:30頃、既にネットを持って林縁を探索にかかります。
このポイントは5~6年前に原生林を切り開いた林道で、その直後は虫の発生も良かったのですが、
今年は虫の気配が全くしません。

まだ早朝の気温も上がっていない時間帯なので当たり前なのですが、長年培った虫屋の「勘」
というヤツでしょうか。こうした悪い方の勘ってよく当たっちゃうんですよねえ。

そして林縁をパタパタと見慣れた飛び方でゆっくり飛翔する虫を掬うと、やはりジャコウホソハナ。
黒い方のタイプです^^
ここでは黒:赤が2:1位の割合で採れますが、九州でもやはり成虫では少ないカミキリです。

阿蘇の中山帯でもそろそろ本種が採れ始めるのですが、この時期は飛翔中のものばかりで
不思議と花で採ったことがありません。
今日はなんとかノリウツギ以外の花に来た本種を見てみたいものです。

しかし今日は涼し過ぎます。雲も厚くはないものの太陽が全く顔を出しません。
決して寒いというわけではないのですが、風も強いので余計に涼しさが増します。
黒岳に行っていたら凍えていただろうな。

林縁の一番大きいウツギの株に来ているニンフハナやホソハナ(いずれも大きい)を眺めていると、
その何倍もある細長いカミキリの姿が目に入りました。
ジャコウホソハナです。残念ながら赤いタイプですが慎重に写真を採ります。

その後も何度もウツギ2種、シイ、エゴノキ等のいろいろな花を見たり掬ったりしましたが、
飛翔中の黒いタイプを1頭追加したに止まりました。

さて、トガリバの方ですが、悪天候の中でなかなか姿を見せません。
林内が暗く涼しいとネキの仲間はまず立ち枯れに飛んで来ないのです。
これはネキのメッカ、群馬県武尊山でもさんざん経験しました。
林内や林縁には数年前からポイントにしている良好な立ち枯れが何本かあるのですが、
何度見回っても1匹も飛来してきません。

写真は最も期待を掛けていた林内のクロキご神木。これほど太いクロキの立ち枯れはまず
見つかりません。
でも、思ったより相当古くなっているのでもう今年は無理かな。

予定では少なくとも2~3頭は付いているはずだったのに・・・
結局、今回はこの木も含め林内の木では1頭も見る事が出来ませんでした。

数時間ポイントを徘徊し、林縁の1本のクロキ立ち枯れの裏を覗き込んだ時、
「あっ、いる! 」

でも、目が合っちゃってます(汗)。出会いとしては最悪のパターンです。
ただ、この姿こそ写真に撮りたかったんですよねえ。

僕は生態写真屋では全くありませんが、虫を指で押さえて撮った写真を見るのが大キライなんです。

逃げるなよ、カシャッ。 

ズームアップ!カシャッ。

うーん、正面からだと「何虫」かよく分からないな。遠くてピンもよく合わない。
なんとか横から、と少しずつ踏み込んでいくと結構デカイ♂です。
ああ、これが限界だ。カシャッ。

そして慎重に指で押さえ採ります。やっぱりデカイ!
高山帯の小さな個体とは比較になりません。これが採れただけでも来た甲斐がありました。
しかし、この後は別の林縁の木で普通サイズの2♂を追加したに止まりました。

時はすでに午後3時を回り、後は気温が下がる一方なのでこのポイントはこれで終了です。
この時点での気温は21℃。これではやはり個体数は望めませんね。

写真はこの時期の巨大で白い「サツマ」のサツマシジミ。
いつか飼育でビカビカの個体をたくさん出したいものです。

その後、翌日のために薩摩半島を一気に横断してケブカトラのポイントへ移動します。

その途中にキンケビロウドが発生している公園があるのでちょっと寄り道します。
ゆっくり歩きながらヤツデの昨年の葉を見ていきますが、数年前まではぐしゃぐしゃにあった
食痕が全く見られません。ここのキンケビロウドも終息してしまったのだろうか・・・

実はこの近くにはかつてオオムラサキカミキリが採れていたポイントもあります。
鹿児島や宮崎の南部に来た時には気を付けているのですが、やはりついでで採れるほど
甘くはありませんね。一応ホストの目ぼしは付けているのですが^^
やはり本種の生態解明は地元の人にやっていただくのが一番でしょうね。

この日はとある港町のコンビニ駐車場で車中泊しました。
5月中旬の鹿児島南端の海岸なのに、寒かったあ(泣)。

・・・・・・

翌12日も前日と同様、薄曇りに低温が続きます。
天気予報は前日ともども「晴れ」、そして「最高気温26℃」なのに・・・
予報と現地での齟齬は採集には付き物なのですが、連日だとホントに腹立たしい。

なお、この近場にはチャゴマフ(白くて良い)とオキナワキボシがピンポイントで
発生している所があります。

いつもなら材を探しに行くのですが、すでに様々な飼育材料を抱えていて手間が割けないことと、
来年は材の管理が困難になるため今回は止めることにしました。

さてケブカトラですが、気温がようやく上がってきた正午過ぎにやっと姿を現しました。

このポイントにはミカン畑などの防風林としてイヌマキが多数植栽されており、
その多くにケブカトラの食害が見られます。

ただ、言えるのはやはり駆除が進んでいるようで、かつてのようには多数は見る事が
出来なくなっているということです。農業に携わる人達も馬鹿ではありませんし、
産業に関わることなので自治体も手をこまねいているわけではありませんからね。

ここ以外でも何ヵ所かのポイントを探し回りましたが、かつての食害跡はあるものの
マイポイント以外ではほとんど見る事はできませんでした。

「被害が出ている」のと、個体数の関係が必ずしも一致しない状況になっていると言えます。
「あんなのイッパイ居るよ」と過信して安易にやってしまうとヌルもあり得るカミキリですよ^^

午後3時半、急激に気温が下がってきたので採集終了。
熊本市の自宅まではここから海岸線沿いに北上して5時間以上。さすがに疲れました。
でも、鹿児島にはムラサキアオや大隅半島での採集等でまだまだ来るんだろうなあ。

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