地元・熊本の夏の気になるカミキリ達(2018.8.21)
奄美大島は現時点、台風19号の暴風雨に晒されています。
時折停電も伴うし、なにより窓ガラスが今にも割れそうな強烈な突風が吹き荒れてちょっと心配に
なります。
天気予報によると、これから明日午前に掛けてこうした状態が続くよう。
早う去ってくれい、19号。
と言うわけで採集にもならないので、つい先日まで居た地元の阿蘇方面を中心とした地域における
気になったカミキリ数種についてメモしておきます。
まずは絶滅が懸念されるトラフカミキリ。遅めではあるものの、かつて8月下旬にも採集したことが
あったことを思い出しポイントに行ってみると・・・
ガーン! クワの木が殆ど伐採されちゃってる@@
この一帯は昔クワ畑が多かったのですが、とうにそれは無いし、逸出したものや畑脇に切り残された
僅かなクワの木でトラフは細々と世代を繰り返していました。
スケジュールの関係で二年程はこの場所に来なかったのですが、その間にクワの木は切られた
ようです。宅地化がどんどん進むエリアでは、無駄な木々はどうしても伐採の対象になるのです。
しかし、僅かに残った木でなんとか交尾中のペアを発見出来ました。時期も遅いし、まあ運が良かった
ようです。
8月最下旬にも拘らずかなり新鮮だったので遠慮無く頂いてきました。
前の記事でも書いたとおり、ここは間違いなく潰れる産地なので勤めて標本はとっとかないと。
今後一切地元のトラフカミキリの標本は放出しないつもりです。しかしここが潰れたら、今後九州で
確実にトラフが採れる所は存在するのだろうか・・・
(参考)
直近の同所におけるトラフカミキリ採集記
次いでメモしておきたいのは地元のイッシキキモンカミキリ。
九州では熊本・阿蘇のマイポイント及び大分某所(こちらが全国的にポピュラー)の二カ所でしか
ほぼ得られていないと思われます。大分の産地でも発見された頃よりかなり減っていると言うし、
マイポイントでも1980年代前半までは満足に得られましたが、近年では多かった一画で全く
見られなくなっていたので一応僕はブログ等に出すのは控えていました。
ただ今年其処で会った昆虫写真屋さんが偶然に本種を見つけて某SNSにアップしているとのこと
だったので(場所は伏せて)、まあ良いかと僕も考えを変えてブログに出すことにした次第。
ポイントそのものは誰にも分らないしね^^
クワの枝先の葉裏に留まるイッシキキモンカミキリ♂
幼虫のホストのヌルデ衰弱木に産卵に来た♀
野外では上手く撮れなかったのでズルして自宅で撮影した♂と♀
本州産と比べると黄紋部分が小さく、逆に僕はこちらのタイプの方が美しく感じますね。
今は東京の奥多摩あたりの個体数の方が九州産より遥かに多いと思います^^
地元の本種もいつまで採れるのかなあ。
そして昨年の同時期には個体数が多かったヤノトラカミキリ。
今年はエノキ材が古くなっており、1頭しか見られませんでした。標本は十分にあるので特に
必要では無いのですが、幼虫の生育確認のために細めの材を1本だけ切断してみたのが下の写真。
トラカミキリ特有の食痕が幾つも並んでいます。今年の新しい脱出口は一つだけありましたが
これはイレギュラーで、ほぼ全てが二年掛って来年の夏に羽脱してきます。
(参考)
昨年同時期のヤノトラカミキリ発生の様子
余談ですが、この材の周りではタマムシやアヤオビハナノミが幾つか採れた程度でした。
阿蘇一帯は基本的に草原が多く植林も進んでおり、開発度合も大きいので特定の糞虫等を除くと
一般に甲虫関係の採集は厳しいのです。(アヤオビハナノミは動きが早く撮影不可でした)
ついでにコレ、イタヤカミキリ♂
本種を狙ったわけではありませんでしたが、雑多なビーティングで偶然に落ちました。
阿蘇では6~7月の虫なので、9月の声が聞こえるような時期に採れて驚きました@@
ここ数年は時期には地元を離れていたので採ったのは本当に久し振り。
阿蘇近辺の本種は茶褐色の帯が白帯に置き換わる変わった変異を持ちます。どうやら僕が提唱した
「白イタヤ」という呼称が一部では使われているようです^^
以上、冬のネタにでもするかとお蔵に入りかけた写真を紹介しました。
台風19号が去ったら早く奄美の今の虫を堪能したいものです。
しかし、台風の怒号、時間と共に酷くなるなあ。安アパートの窓、持ち堪えるか・・・
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