シロウラナミシジミの飼育中継(1)(2020.10.27) | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

シロウラナミシジミの飼育中継(1)(2020.10.27)

まず前提から。
日本にはJamides属の蝶がルリウラナミシジミとシロウラナミシジミの二種居ますが、僕は宮崎県で
一時発生した前者の飼育をかつてやり込みました。

(参考)
2010年に大量飼育したルリウラナミシジミ

シロウラナミはそれ単体で素晴らしいシジミチョウですが、つまり、アレあってのコレでもあります。
日本のJamides属2種の飼育をこれほどのレベル感でやったことのある虫屋は恐らく他に居ないでしょう。
シロウラナミは発生地域や食草が極めて特殊なため、飼育することは元より頭に在りませんでしたが、
図らずも目前に勝手に現れ、しかも餌もたんまり採れるという幸運に恵まれたのは、やはり「持っている」
証拠なんだろうなあ。
と自己満足に浸り幸せになったところでやっと本題です^^

本来熱帯系のシロウラナミシジミは比較的近年になって日本に定着したJamides属の大型種で、僕は
西マレーシアのキャメロン・ハイランドの熱帯雨林で数頭採集したことがあるのみでした。
ところが本種は西表島を中心に八重山に定着したかと思えば沖縄本島でも見られるようになり、遂に
奄美大島でも採集されるに至りました。
何時の日か八重山方面へ採りに行かなきゃなんないなあ、と思っていましたが、なんと何時の間にか
今の地元・奄美に侵入・・・ 発生地も近く、車で10分のお手軽さ^^

これこれ、Jamides属はこの時期(以降)に手を下すことが必須なんですよ^^


本種の幼虫はシュクシャなどのショウガ科の花穂のみを食べますが、「花食い」の幼虫の飼育は
とても辛く言い換えれば「イバラの道」。これは前段のルリウラナミシジミの飼育記事の通りですが、
あのジゴクをあのレベルでやり込むのは難しいし、若くして気力も充実していなければ無理です。

正直に言うと、今よりもう10歳若ければあんな生活も出来たでしょうが、体のアチコチが壊れ
虫趣味の断捨離をしつつある今の身にはもう不可能。
楽しめて運動になるレベルで、展翅板10本位(奄美に持ってきているだけ)やるか・・・
ルリウラナミ同様、今後の人生で一切やらなくて済むわけだしね。

で、ある程度成虫を採集して落ち着くと飼育に取り組み始めるわけですが、思いのほか苦戦する
ことが分かりました。
シロウラナミはマメ科の花食いではないのでルリウラナミの時に使えたスナップエンドウ豆のような
安易な代用食は無い。これは分かっていたと。

意外だったのは食草のシュクシャは腐るのが早く、花穂を切り取ると数日で異臭がし始めてイヤに
なります(泣)。母蝶に卵を産ませるのは容易いのですが、その後のハンドリングがほぼムリゲー。
孵化した幼虫が可視化出来るまで成長するまでに餌が腐ってしまい回収がほぼ出来ないのです。

最初はこうした産卵セットを組み、母蝶はちゃんと産卵も行いますが・・・


これは孵化卵と孵化直後の幼虫、そして別の幼虫が潜った穴です。
既に花穂が黄ばみ、腐り始めているのが分かります。潜った幼虫は死亡するか、腐った芽をあばいても
巨大な花穂に対して瀕死の若齢幼虫が小さ過ぎて回収はほぼ不可能(不可能ではないが、歩留まりも
極めて悪い上に大手間@@)。
よってこの方法はNG。


そしてこの過程で分かったのは本種は意外に産卵数が少ないということ。最初は芽にバラバラ産むのか
と思っていたところ、せいぜいパラ、パラといったところ。手を変え品を変えて何度かやってみましたが
同傾向なのは変わりません。

これは野外でシュクシャの芽を見たり、幼虫を探していても納得できます。成虫はそこそこ飛んでいるのに
卵はほぼ目に付きませんし、何しろ幼虫が少ない。
前記事にも書きましたが巨大な芽を丁寧に描き分けても見つかる幼虫は一芽につき僅か1~2頭。
もちろん居ない芽もあります。どうしてこんなに少ないのか・・・

ここ半月ほど生息地に通ってそのワケがなんとなく分かってきたので次回で見解を述べます。
コレクター見地から一つ言えるのは、残酷な事実として本種の飼育標本を沢山作れるのは採集地(付近)
に住んでいる者(つまり今の僕のような虫屋)のみということ。
食草のシュクシャ(新鮮な蕾~花、新芽)をふんだんに得られる者しか大量飼育は無理なんですね。
多くのシュクシャの花穂をチョキチョキ切って持ち帰った跡が見られますが、無駄ではないが殆ど有効では
無いんだよねえ。

飼育中継(2)に続く。

もっと詳しく知りたい事や
理解できなかった事などございましたらお気軽にご連絡下さい。

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