シロウラナミシジミの飼育中継(2)(2020.11.4) | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

シロウラナミシジミの飼育中継(2)(2020.11.4)

前回記事では、シロウラナミシジミの食草のシュクシャ新芽は腐敗がとても速く、母蝶に産卵させた
卵からの飼育については極めて困難であることを述べました。

(参考)
シロウラナミシジミの飼育中継(1)

少し工夫して50センチほど茎を付けて出来るだけ枯れるのを遅くしてみると、遥かに芽のモチは
良くなりましたが、遅かれ早かれ腐敗はするし極小の若齢幼虫を採り(探り)出す作業は大変で幼虫の
健康状態にも問題を来します。
何よりその後若齢幼虫を長期間飼育するのも一苦労。小さ過ぎて何処に潜っているのか分からず
(生きているのか死んでいるのかも分らず)ハンドリングの手間や時間がハンパありません。

ではどうするか。

答えは簡単。野外でシュクシャの新芽を調べて幼虫を採集すればよい、ということになります。
その方がある程度大きくなった幼虫のみを採るので(孵化直後や若齢幼虫は新芽に潜り込んだり
複雑な形状の鱗片の隙間等に隠れておりそもそも目に付かない)その後の飼育も楽です。
それに寄生は今のところ全くありません。

ただ、これまで述べているように幼虫の数が多くないので大量には確保出来ません。1~2時間
探して中~終齢幼虫及び蛹を合わせてせいぜい20頭以下でしょうか。
「そんなに採れないの?」と驚く人も居ると思いますが、そうなんですよ。
元々成虫も決して多くはなく、湿地内や林縁にシュクシャの大きな群落があっても視界には数頭が
目に入る程度、多くても♂同士が3頭ほどバトルをしているくらいです。そしてネットでシュクシャ
群落を突つくと隠れていたものがチラ、ホラ飛び出す・・・そんな感じです。

かつて宮崎の沿岸部で見たルリウラナミシジミの乱舞や、今や何処でも見られる風景となった
ソテツ周辺やその周りのセンダングサにクロマダラソテツシジミが群れているような個体数とは
比べ物になりません。これはちょっと意外ではありましたね。

勿論、日がな一日シロウラナミばかり掬っていれば数十頭採集するのは可能ですが、何しろスレ易いので
羽化直後のような個体に当たらないと三角紙に包む気力が湧きません。
当初は成虫採集に勤しんでいましたが、効率が極めて悪いしスレの無い飼育品を見てしまうととても
野外品を展翅する気にはなりません。今では専ら飼育専門です。

さて、ここで本種が何故多産しない蝶なのか考察してみたいと思います。
注目したのはコレです。

ジュクシャの大きな芽が無残に枯れているのが分かると思います。全てシロウラナミ幼虫が貪り食った
結果こうなったわけです。
幼虫採集をやっていて驚くのは、1頭の幼虫が食べる量はこんなに多いのかということ。花芽は勿論、
柔らかい部分は全て可食部となるので、幼虫は小さい芽で1頭、巨大な芽でも4~5頭が食い廻れば
簡単に枯れてしまうのです。

同じJamidse属のルリウラナミシジミはクズの花芽を餌としますが、クズは巨大なマント帯を作ると
花穂を無限に付け、其処で育つ幼虫数は相当なものとなり成虫が紙吹雪のように舞うことになります。
しかし、シロウラナミの場合はこうはいきません。確かに場所によっては大きなシュクシャ群落を
見るもののやはり株数は限られます。芽は一株に一つしか出来ないし、上記の様に一芽は僅か数頭の
幼虫に枯らされてしまいます。

すなわち、シロウラナミは「群」として依存しているシュクシャ群落の大きさを認識し、一気に餌が
無くならないように発生数を自ら調節しているのではないかと思われます。
そうでなければ一気に成虫が出現し、次の世代が瞬く間にシュクシャ群落の新芽を食い尽くしてしまう
でしょう。次世代以降を自ら守るメカニズムが「群」の中で働いているとしか思えないんですね。

これは誰も提唱はしていないし証明も出来ないのでこれ以上は語れません。
長期間発生地を見ていなければ理解し難いことかもしれませんね。

シュクシャの群落。
群落は湿地にあることが多く、奥まった所や暗がりでは如何にでもハブが居そう・・・

この中でシロウラナミの幼虫を探します^^
その様子は飼育中継(3)で詳しく述べます。

※飼育中継(3)以降は秋~冬のシロウラナミ終息後に記事にします。その理由はメルマガで。

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