ムラサキツヤ | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

九州脊梁山地の黒いソボコブヤハズカミキリ(2012.6.8)

6月6~7日の二日にかけて、熊本の山奥へセダカコブヤハズカミキリの最南端の亜種である
ソボセダカコブヤハズを採りに行って来ました。

越冬コブ採集は前2回のフクチコブヤハズに続き3回目(たぶん最後^^)となります。

今月に入って梅雨前線が九州に近付いており(南部は既に梅雨入り済)、その影響で熊本も
連日悪天が続いています。
週間予報を見ると、その二日間だけにポッカリと晴れマークが。
これは行くしかないでしょう^^

採集に向かったのは私の庭たる原生林。この一帯はポイントさえ押さえていればソボコブをはじめ
九州では珍しい様々な森林性昆虫が採集できる場所です。

標高が1,500メートルに近いので、6月に入ったとは言えまだ多くの種類は期待できないでしょう。
今回はほぼコブに絞った採集となりそうです。

1日目。

前日は終日雨だったため、その影響で少なくとも午前中は採集にならないのは分かっていました。
そこで、まだ行っていなかった熊本産ツヤハダクワガタ幼虫の山上げ(避暑^^)を実行。

じっとりと濡れた林内を物色し、生育に良好な場所を選んで容器の設置完了です。
上手くいけばこれで秋にはツヤハダ長者だ^^

正午前には日差しが出て周りが乾いてきたので、目に付いたミズキの花を掬います。
でもネットの中はトゲヒゲトラ、駄ピドニア等のオンパレード。

摘まみたくなるのは熊本では珍品のカラカネハナくらいしかいません。
時間帯が悪いとは言え、九重方面とは異なりやはり九州山地のミズキはあまり使えませんね。

それでも何度か掬っているとヘリグロホソハナ九州亜種が入りました。
材からは相当出してきましたが、野外で成虫を採ったのは初めてです。
英彦山のヘリウスハナ成虫といい、今年は真面目に採集をしていることの証でしょう^^

午後になり、手にはビーティングネット、背中にはフィットトラップ゚用の水(1.5Lペットボトル3本)を
しょって未だ乾ききっていない林内に踏み込みます。

立ち枯れの表面では、ルリクワガタ♂がこの時期でもまだ活動していました。
そう言えばここではニセコルリはまだ多いけど、タダルリは随分減ってきたなあ。

洞のある立ち枯れに近付いた時、ブーンという羽音と共に大きな甲虫が飛んできて
その根元に止りました。
見るとムラサキツヤ(orミヤマオオ)ハナムグリです。
拾い上げたものの、ツルッと滑って飛んで行ってしまいました(泣)。

屋久島や鹿児島のものは完全にムラサキツヤだと分かりますが、これまで九州脊梁山地で
採集したものはどうもそれとは異なった個体がいるようです。
九州でのこのグループは疑問点が多く、特に九州山地以北のものは注意が必要と思います。

林内を歩き周り、良さそうな立ち枯れや倒木を探します。
それらをじっくりと見ていくと、立ち枯れの樹皮が剥がれて影になっている部分にソボコブが潜んでいる
のを見つけました。

昼間にも係わらず、比較的日光が当たる部分で見つかったものも結構いました。
雨の翌日で林内が湿っており、かつ今日の午前中は曇りで林内が暗かったためでしょう。



じっくりとコブを探していたらあっという間に3時を回ってしまい、慌てて準備を始めます。
今夜原生林内を徘徊するためのベースキャンプとなるナイター設備一式を林内に運び込むのです^^

いやー、大変でした。
原生林の取り付きまでは車道から数百メートルは離れています。
そこまで発電機、安定器、支柱、水銀灯(ソケット含む)、幕や留め金等を運ばなければなりません。
しかも今回はフィットを数か所仕掛けるので、バットや光源類も必要です(フィット水は運搬済み)。
追加のガソリンは諦めました・・・

これらを全て林内に運び込むのに3往復掛かりました@@
もちろん平坦な道ではなく、岩ゴロゴロの沢を上って行くのです。
こんなことする奴なんて絶対いないよなあ。

気付くともう夕方。
慌ててマイ・オヒョウのポイントへ向かい、キバネニセリンゴ、クロニセリンゴ、セミスジニセリンゴを
数匹ずつ掬い、すぐに食糧や水、残りの電灯類を持って林内に上がりました。
ここまででもうヘトヘト。

まだなんとか明るい内にフィットを仕掛けてナイター設備を組み立てます。
そしてハラにメシを流し込み、林内の探索開始です。

この林内は慣れているとは言え、起伏も多いし足を踏み外すと滑落する箇所も多いため
5~6か所にカンテラを灯しました。
かすかに左奥にも光が見えるのが分かるでしょうか。

発電機のガソリンやカンテラ類の電池が切れるのが午前0時頃。
それまでの数時間、林内を歩きに歩きました。
斜度40度の斜面を数百メートル上がったり下りたり・・・
沢を奥まで詰めたり戻ったり・・・

夜間に見つけたソボコブ達です(フラッシュ使用)。



これはラッキー^^

夜行性の雑虫にも期待しましたが、まだこの時期は色々な種類が活動するには早過ぎるようで、
たいした種類には遭遇しませんでした。

ナイターにはコブ、そして多くのオオキイロコガネやビロウドコガネ類が来た程度でしたが、
蛾ではウスマダラカレハが2♀飛来しました。

講談社の蛾類大図鑑によると、その時点で日本で4例しか採れていません。
現在でも恐らく九州で数例目でしょう。蛾コレクションに良いアイテムが加わりました^^

そして、午前0時前にはもうグッタリ。
ガソリンが切れる前にこっちの体力が切れてしまいました。

あとは光源類に頑張ってもらいましょう。
車に戻り、爆睡。

2日目。

まだ暗いうちに寒さで目が覚め、朝食を頬張ります。
そして何とか視界が利く明るさになるのを待って林内に入って行きます。
ああ足が棒のようだ・・・

昨夜活躍してくれたカンテラの一つ。
有難うね。

ちなみに、この谷の傾斜は前段に触れたように40度はあります。こんな感じ。
ここを上がったり下りたりするわけです^^

写真では上下感覚が分かり難いですが、途中から見上げた場面と、

見下ろした場面です^^

フィットの一つです(このランタンはこの時点でも灯りが点っています)。
山のように入った蛾やジョウカイ等の中に・・・


ソボコブの姿が^^

こっちのフィットにも入っていました^^

前夜活動していたコブも幾つか発見(まだ暗いのでフラッシュ使用)。

こんなことをしていたら午前8時前には雨が降り始めました。
予報では本日までは天気が持つはずでしたが、高山ではやはりアテにはなりません。

急いでナイター設備等を解体して車まで運び降ろします。
前日は合計4往復ですべてを運び上げたのに、今日はなんと2往復で済ませました。
(手とザックがちぎれそうでした・・・)

本当は午前のミズキの花でヨコヤマトラを狙っていたのですが、雨は何とか上がったものの
9時半時点で気温は12℃。花は濡れているしこれではどうにもなりません。

まあソボコブにはそこそこ会えたしヨシとしましょう。

そして帰路の途中にあるムネホシシロのクワ畑跡地に向かったのでありました。

二頭しか採れなかった熊本産スギタニルリ+若干の甲虫(2012.4.13)

地元(熊本)のスギタニルリシジミ九州亜種を採りに行こうと思っていましたが、天気と気温、
都合が合わず悶々としていました。
それに今年は季節の進み方が遅いので時期を当てるのが難しいのです。

本来なら九州では3月下旬には発生し始めておかしくありませんが、今年は4月10日頃かな、
と考え昨日行って来ました。

九州北部と鹿児島など南部には有名な多産地があるのですが、中部の熊本では
手ごろな採集地がありません。本州のように簡単に3ケタ採るなんて至難の業なんです。

場所は高校生の頃によく通った渓谷を選びました。
ここは採集地案内の影響で今でこそ「蝶の五目採り林道」として有名になり、多くの蝶マニアが
訪れるようになりましたが、30数年前はまず地元の虫屋しか訪れませんでした。
「○○○シジミ採集禁止」の看板も無い頃です^^

ただ、この林道は生活道路ではないため崖の補強が全くされておらず、数十年前に伐採が
一通り終わった後は荒れ放題ですぐに路肩が崩落するのです。

数年前の春にカミキリの材採集が目的で来た時にはかなり奥の渓谷部まで入ることができ、
その時は結構ルリシジミ系が飛んでいたという記憶がありました。
その年は蝶が頭に無かったのでスギタニかどうかは確認しませんでしたが。

今年は奥に入れるかな・・・
そう思いながら林道の入り口に来ると、しっかり「通行止め」の看板がありました。
「仕方ない。行ける所まで行ってみよう」とダートの道を走りだすと、
たった3~4キロの地点で崖が見事に落盤。巨大な岩々が林道を削って谷へ転落しています。

「ありゃりゃ・・・」
近年この林道は崩壊してもなかなか治さないので、また数年はこのままかもしれないな。
それより困るのが目的のスギタニルリです。ここまでは全くの植林帯でスギタニが吸水に来るはずの
渓谷はまだはるかに先なのです。

この林道上で「はぐれスギタニ」を狙うしかなくなりました。
以前多産地として有名な山梨県泉水谷で経験したところでは、河原にはたくさんのスギタニが
飛んでいるのに林道にはほとんど姿を現しませんでした。
採れたにしても数は期待できないことが最初から決定してしまいました。

いずれにしても時間がまだ早いので甲虫の採集に取り掛かります。
周りの木々のスウィーピングを始めてすぐ、信じられないカミキリが入りました。

「アヤモンチビカミキリ」です。
本来は天草地方や海岸線にしか生息していないはずの本種がこんな内陸で採れるなんて
昔の感覚では信じられません。これも温暖化の影響なのだろうか。
カミキリでは他に結構得難いドイカミキリが採れました。新成虫で越冬するのでこの時期は綺麗です^^

倒木の樹皮下に大きなハナムグリの幼虫が4頭いました。
ムラサキツヤの可能性があるのでキープ。

そのほかコメツキ数種等を採ったところで気温が上がり始め、スジグロ・ヤマトスジグロシロチョウが飛び始めます。
ここはヤマトが結構いるので、九州産を採るには良いポイントです。

そしてようやくルリシジミが飛んでいるのを見つけました。
すかさずネットインしてみると・・・
「なんだ、ルリか・・・」

その後、パタパタッとルリ系が現れましたが、すべてタダルリ。
ここにスギタニは居ないんじゃないか、そう思い始めた時、ちょっと黒っぽいルリが現れました。
「こりゃスギタニだ」直感的にそう思って掬うと、ビンゴ!

翅表は本州産に近い暗い色調ですが、裏面はルリとほとんど変わらぬ白色。
サイズも大きく本州の山岳地帯産を見慣れていると異様に感じるでしょう。
写真左がルリ、右がスギタニ九州亜種です。裏面の白色度合いはほとんど変わりません。
ただ、黒点が大きいスギタニの特徴はよく出ていますね^^

でも数が少ない。大体ルリシジミさえ少なく、ほとんど目に付きません。
しかも、ルリシジミ系が姿を見せたのは午前10時から1時間程度で、
午後になると全く見られなくなりました。スギタニの追加も1頭に止まりました。

もっと奥まで入ることができればもっとたくさん採れたのかもしれません。
それを確認できるのは来年以降です。

でも、いつ入れるようになるんだろうか。

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