ツヤハダクワガタ | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

ツヤハダクワガタ幼虫の山上げ準備(2013.1.25)

遅ればせながら、今日はミナミツヤハダクワガタ幼虫の山上げ準備を行いました。
これは、終齢幼虫に夏一杯を高標高の地で過ごさせ、新成虫になった秋季に回収する方法です。

高冷地帯に住むツヤハダの幼虫を相対的に気温が高い低地で飼育するのは甚だ難しく、
特に真夏の時期には殆どが死滅してしまいます@@

よって、夏場は生息地もしくは同等の高標高に避暑に出す必要があるわけです。
これが上手く行くと、全く手を掛けることなく自然界ではなかなか得難いツヤハダ成虫を多数得ることが
出来ます^^

参考まで、去年の新成虫回収の様子を紹介しておきます。
昨年は最高の回収率でした。

九州のツヤハダクワガタ、プチ長者^^(2012.10.5)
二回目のツヤハダクワガタ回収、またまた大成果^^(2012.11.13)

もっとも、これにはまず幼虫を多数確保する必要があります。
ただ、いくら少ないミナミツヤハダと言っても、成虫よりは幼虫の方が遥かに数が多く採集し易いので
この山上げ方式は理に適った方法とも言えます^^

容器飼いではありますが、本来の生息地で成長させればほとんど野外産と言っても良いでしょう。
今回は幼虫を30頭弱しか確保できなかったので、1セットのみの作成です。

写真は滅多に行き当らない九州高所での赤腐れ材です。
この木は内側の一部のみしか赤腐れしておらず、成虫はおろか幼虫もごく少数しか見られませんでした。

ナタ先端のちょっと先に幼虫が見えます^^
もっと腐食が進むことを期待し、これ以上の深追いはしませんでした。


ただ、セッティングは完了したものの本来の生息域である標高1千5百メートルの山奥へはもう雪で
近付けません。

僕は今年、夏以降にしか彼の地へ行けないので、友人にお願いして春になっての現地設置を
お願いしてきました^^

九州のツヤハダクワガタ、プチ長者^^(2012.10.5)

10月になったので、幼虫の段階で山上げしていた(避暑に出していた)熊本産ツヤハダクワガタ
の容器を回収してきました。

高地帯が狭い九州のツヤハダは大変少ないので、1頭たりとも無駄にできません。
成虫に比べて幼虫ははるかに多いので(と言っても本州のようには容易に出てきませんが)、
きちんと親にすることが求められます。

涼しい高山で春から夏にかけてスクスク育った幼虫達は、もう立派な成虫になっているはずです^^
でも、上手くいっているかなあ。
天敵が入っていたり、雨水が漏れ入ったりしてアウトになることもありますから。

山から下ろしてきた小型コンテナを開けたところです。
うん、良好な湿り具合だ^^

タッパーをひっくり返したところです。
小さな片材や細かい木クズで狭間をきっちり詰めているのが分かりますね。

軽く崩すと幼虫が食い入った芯材が現れました。
「ちゃんと成虫が出てきてくれよ・・・」

恐る恐る芯材を崩していくと・・・

出ました!
しっかりと成虫になってくれています。

結構大きな♂も幾つか出ました^^

30分ほど芯材と格闘し、以下の成果を得ました。

全部で16♂7♀。 合計23頭。
最大♂は19ミリ強でした。 まあまあかな^^

あと1年掛かる幼虫も5~6頭出てきました。
結構丸々太っていて、また来年大きな成虫になってくれるでしょう^^

回収中に1♀を潰し(泣)、大きな寄生アブの幼虫が1匹いたので幼虫の何頭かは犠牲になったもの
と思われます。
この寄生アブ幼虫は芯材もしくは隙間を埋めたクズ材に潜んでいたのでしょう。
最低限の犠牲で済んだようです。

最初にセットしたツヤハダ幼虫の数は30頭ちょっとだったので、ほぼ計算は合います。
ほとんど自然死はなかったようなので、全体的には成功と言えます^^

実は一つ、今回のツヤハダ回収で以前からモヤモヤしていた謎が解けたような思いをしています。
それは、「野外で掘って採るツヤハダは何故少ないのか」ということです。

当たり前の事なのですが、「ああ、そうだったんだなあ」と改めて気付いた次第です。
まあこれはメルマガにでも書こうかな。
当然過ぎてあまり面白くないかもしれませんが、そのヒントが下の写真です^^

実は別の山にもう1セットが眠っているんですよねえ。
回収が楽しみです^^

九州脊梁山地の黒いソボコブヤハズカミキリ(2012.6.8)

6月6~7日の二日にかけて、熊本の山奥へセダカコブヤハズカミキリの最南端の亜種である
ソボセダカコブヤハズを採りに行って来ました。

越冬コブ採集は前2回のフクチコブヤハズに続き3回目(たぶん最後^^)となります。

今月に入って梅雨前線が九州に近付いており(南部は既に梅雨入り済)、その影響で熊本も
連日悪天が続いています。
週間予報を見ると、その二日間だけにポッカリと晴れマークが。
これは行くしかないでしょう^^

採集に向かったのは私の庭たる原生林。この一帯はポイントさえ押さえていればソボコブをはじめ
九州では珍しい様々な森林性昆虫が採集できる場所です。

標高が1,500メートルに近いので、6月に入ったとは言えまだ多くの種類は期待できないでしょう。
今回はほぼコブに絞った採集となりそうです。

1日目。

前日は終日雨だったため、その影響で少なくとも午前中は採集にならないのは分かっていました。
そこで、まだ行っていなかった熊本産ツヤハダクワガタ幼虫の山上げ(避暑^^)を実行。

じっとりと濡れた林内を物色し、生育に良好な場所を選んで容器の設置完了です。
上手くいけばこれで秋にはツヤハダ長者だ^^

正午前には日差しが出て周りが乾いてきたので、目に付いたミズキの花を掬います。
でもネットの中はトゲヒゲトラ、駄ピドニア等のオンパレード。

摘まみたくなるのは熊本では珍品のカラカネハナくらいしかいません。
時間帯が悪いとは言え、九重方面とは異なりやはり九州山地のミズキはあまり使えませんね。

それでも何度か掬っているとヘリグロホソハナ九州亜種が入りました。
材からは相当出してきましたが、野外で成虫を採ったのは初めてです。
英彦山のヘリウスハナ成虫といい、今年は真面目に採集をしていることの証でしょう^^

午後になり、手にはビーティングネット、背中にはフィットトラップ゚用の水(1.5Lペットボトル3本)を
しょって未だ乾ききっていない林内に踏み込みます。

立ち枯れの表面では、ルリクワガタ♂がこの時期でもまだ活動していました。
そう言えばここではニセコルリはまだ多いけど、タダルリは随分減ってきたなあ。

洞のある立ち枯れに近付いた時、ブーンという羽音と共に大きな甲虫が飛んできて
その根元に止りました。
見るとムラサキツヤ(orミヤマオオ)ハナムグリです。
拾い上げたものの、ツルッと滑って飛んで行ってしまいました(泣)。

屋久島や鹿児島のものは完全にムラサキツヤだと分かりますが、これまで九州脊梁山地で
採集したものはどうもそれとは異なった個体がいるようです。
九州でのこのグループは疑問点が多く、特に九州山地以北のものは注意が必要と思います。

林内を歩き周り、良さそうな立ち枯れや倒木を探します。
それらをじっくりと見ていくと、立ち枯れの樹皮が剥がれて影になっている部分にソボコブが潜んでいる
のを見つけました。

昼間にも係わらず、比較的日光が当たる部分で見つかったものも結構いました。
雨の翌日で林内が湿っており、かつ今日の午前中は曇りで林内が暗かったためでしょう。



じっくりとコブを探していたらあっという間に3時を回ってしまい、慌てて準備を始めます。
今夜原生林内を徘徊するためのベースキャンプとなるナイター設備一式を林内に運び込むのです^^

いやー、大変でした。
原生林の取り付きまでは車道から数百メートルは離れています。
そこまで発電機、安定器、支柱、水銀灯(ソケット含む)、幕や留め金等を運ばなければなりません。
しかも今回はフィットを数か所仕掛けるので、バットや光源類も必要です(フィット水は運搬済み)。
追加のガソリンは諦めました・・・

これらを全て林内に運び込むのに3往復掛かりました@@
もちろん平坦な道ではなく、岩ゴロゴロの沢を上って行くのです。
こんなことする奴なんて絶対いないよなあ。

気付くともう夕方。
慌ててマイ・オヒョウのポイントへ向かい、キバネニセリンゴ、クロニセリンゴ、セミスジニセリンゴを
数匹ずつ掬い、すぐに食糧や水、残りの電灯類を持って林内に上がりました。
ここまででもうヘトヘト。

まだなんとか明るい内にフィットを仕掛けてナイター設備を組み立てます。
そしてハラにメシを流し込み、林内の探索開始です。

この林内は慣れているとは言え、起伏も多いし足を踏み外すと滑落する箇所も多いため
5~6か所にカンテラを灯しました。
かすかに左奥にも光が見えるのが分かるでしょうか。

発電機のガソリンやカンテラ類の電池が切れるのが午前0時頃。
それまでの数時間、林内を歩きに歩きました。
斜度40度の斜面を数百メートル上がったり下りたり・・・
沢を奥まで詰めたり戻ったり・・・

夜間に見つけたソボコブ達です(フラッシュ使用)。



これはラッキー^^

夜行性の雑虫にも期待しましたが、まだこの時期は色々な種類が活動するには早過ぎるようで、
たいした種類には遭遇しませんでした。

ナイターにはコブ、そして多くのオオキイロコガネやビロウドコガネ類が来た程度でしたが、
蛾ではウスマダラカレハが2♀飛来しました。

講談社の蛾類大図鑑によると、その時点で日本で4例しか採れていません。
現在でも恐らく九州で数例目でしょう。蛾コレクションに良いアイテムが加わりました^^

そして、午前0時前にはもうグッタリ。
ガソリンが切れる前にこっちの体力が切れてしまいました。

あとは光源類に頑張ってもらいましょう。
車に戻り、爆睡。

2日目。

まだ暗いうちに寒さで目が覚め、朝食を頬張ります。
そして何とか視界が利く明るさになるのを待って林内に入って行きます。
ああ足が棒のようだ・・・

昨夜活躍してくれたカンテラの一つ。
有難うね。

ちなみに、この谷の傾斜は前段に触れたように40度はあります。こんな感じ。
ここを上がったり下りたりするわけです^^

写真では上下感覚が分かり難いですが、途中から見上げた場面と、

見下ろした場面です^^

フィットの一つです(このランタンはこの時点でも灯りが点っています)。
山のように入った蛾やジョウカイ等の中に・・・


ソボコブの姿が^^

こっちのフィットにも入っていました^^

前夜活動していたコブも幾つか発見(まだ暗いのでフラッシュ使用)。

こんなことをしていたら午前8時前には雨が降り始めました。
予報では本日までは天気が持つはずでしたが、高山ではやはりアテにはなりません。

急いでナイター設備等を解体して車まで運び降ろします。
前日は合計4往復ですべてを運び上げたのに、今日はなんと2往復で済ませました。
(手とザックがちぎれそうでした・・・)

本当は午前のミズキの花でヨコヤマトラを狙っていたのですが、雨は何とか上がったものの
9時半時点で気温は12℃。花は濡れているしこれではどうにもなりません。

まあソボコブにはそこそこ会えたしヨシとしましょう。

そして帰路の途中にあるムネホシシロのクワ畑跡地に向かったのでありました。

熊本産ツヤハダクワガタの幼虫埋め込み(2012.4.8)

今日は先月に熊本の高地で採ったミナミツヤハダクワガタの幼虫の埋め込みを行いました。

まず、小型コンテナの底に寄生していた朽木くずを数センチ敷き詰めます。
そして芯となる大きな朽木の塊を置いたら、隙間を隈なく朽木片と木くずで埋めてしまいます。
その上に幼虫を播いたのが写真です^^

蓋をする前にさらに細かな木くずで幼虫を覆ってしまい、下に潜りやすくします。
幼虫は堅い部分を求めて移動するので、最後には芯材に集中的に入ることになります。
そしてこのコンテナを採集した場所に避暑に出すわけです。

標高1,500メートル近辺に生育するツヤハダを平地で飼うのは不可能です。
東京にいた頃、群馬県の武尊山で採ったツヤハダ幼虫を北区で飼育したことがありましたが、
真夏に跡形もなく溶けてしまいました・・・

やはり失敗の経験から学ぶことは多いですね^^

埋め込み用の朽木片からも7~8頭の幼虫が出てきたりして・・・
こんなことなら朽木片をすべて回収してくればよかった。
山中を縦横無尽に徘徊したのでポイントには二度と辿り着けないのです(泣)。

なにしろ九州のツヤハダ亜種は生息環境が狭い上に個体数が少なく、当てるのがかなり難しいのです。
本州の高山帯なら適当に赤腐れ材を探していれば必ずツヤハダの食痕に当たりますが、
九州ではまず大きな赤腐れ材自体を見つけることが困難なんですね。

今回はそこそこ採れたから良かったものの、それでも二日間で三桁以上の朽木を調査して
ツヤハダが入っていたのはわずか1本のみ。
成虫はようやく3ペアほどでした。

もう暫くは採りに行く気がしません・・・

これと同じ装置をもう一つ作ります。
こいつらが順調に親になってくれれば、当分はツヤハダを忘れられるな。

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