ヤエヤマフトカミキリ | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

チュウジョウトラカミキリなど、西表島のちょっと面白いカミキリ(2017.5.28)

夜半から久し振りに梅雨の本降りとなり、今日は終日雨天が続くようです。
明日からは2日ほど梅雨の晴れ間となりそうで、僕にとっても西表最後の採集活動となるため今日は
しっかり休んで備えることにしますか(何時も休みっぱなしですが)。

さて、今日は先日記事にしたヤエヤマゴマフカミキリに続き、今期西表島で採っているちょっと面白い
カミキリ数種について記します。

まずはチュウジョウトラカミキリ。
石垣島ではそれほど難しい種類ではありませんがどうやらここ十数年は西表島で採れていないようで、
山道脇のスウィーピングで採集したものです。
本種に代表されるように石垣に比較して極めて採り難い種類が西表には数多く存在します。
ヒロオビオオゴマフ、イシガキフト、コゲチャフタモンヒゲナガなどもそうですね。ほぼ採れないのと同然。
なお本個体は採集時にアリと間違えそうになったように、これまで石垣島で採ったどの個体よりも遥かに
超小型であったことを申し添えます。

キンケビロウドカミキリ
チュウジョウトラなど上に挙げた種類らよりは採れていますが、キンケビロウドも原生林内ではかなり
採り難い種類です。なかなか採れない感覚は石垣島も同様ですが、ここ西表のジャングルの中でネットに
入ると感激がひとしおです。なにせジャングル内のスウィーピングやビーティングで「手答え」のある
本種のような大型種が採れることは極めて稀なので。


オガサワラチャイロカミキリ
僕の地元九州の南端から屋久島辺りではややポピュラーな種類。本種が八重山に居るという感覚は殆ど
無かったのですが、二頭目を採ったことから本種の分布についてちょっと興味が沸き始めました。
聞くところでは石垣島でも採れているようですが、少なくとも西表ではあまり採れていないと思われます。
今回は海岸林のビーティングで、一頭目は二年前に山間部でヤエヤマコクワガタを採っている最中に
ライトに飛来しており、島内に広く居るのかもしれません。

ヤエヤマフトカミキリ
僕の大好物であるフトカミキリ類。その中でも石垣島のヤエヤマフトは採集者が多いこともありフト類の
中で最もポピュラーなものです。
西表の本種は原生林内で採らざるを得ず、格段に難易度が上がるため石垣産と比べてカミキリ屋さんの
遡及熱は高いものがあります。
そして西表産の醍醐味はブラウン(茶色)な体色で、グレー色の石垣産とは基本的に一線を画す色合いの
個体群となっています。ただ西表産の中にもグレー色に極めて近いものもあり、分類的に両島産を分ける
ことは不可能のようです。ちょっと残念。

イシガキイトヒゲカミキリ
今の時代、なかなか採れませんよねえ、これ。かつては本種のポイントとしては石垣島のオモト岳が有名
だったのですが、数が激減したとともに現在は「アサヒナキマダラセセリ」保護の観点から本種の出現期に
ネットを持って同山に登山することが実質的に不可能となっています。 
よって勢い西表島で狙うことになるのですが、滅多にネットに入ってきません。それでも、何かを信じて
無心でスウィーピングを続けていると、何時かは神様は微笑んでくれます。
信じる者が報われた写真が下^^

タダニュース、今度は big news !

凄い凄い、これ! こんなにデカいヤエヤマホソバネカミキリが居るんですね。
目を疑いましたよ。このタダニュースならぬビッグ・ニュース!
一昨日の記事で good news を採った話をしましたが、昨日の採集でそれを遥かに遥かに凌駕する
超巨大個体(♀)が採れました。
ヤエヤマホソバネを何故タダニュースと言うのかはその記事でご確認頂くとして、10ミリのチビニュースは
ともかく、こんなビッグな個体をタダニュースと言っては失礼ですね。
こんなのが採れちゃうから単純作業(採集のこと)も止められないんだよなあ。
これも信じて続ける者は救われる、の図ですね^^

石垣北部型ヤエヤマフトカミキリ(2014.6.5)

今日の話題は石垣島の最北端付近で採れるヤエヤマフトカミキリです。
現在は丁度最盛期で、行って丁寧なビーティングを行うとまず確実に採集出来ます^^

ただ産地は最南端の都市部からは遠く1時間近くは掛かるため、短期間で訪れる方はスルーせざる
を得ない場合も多いようです。北部には特産的に産するほかの虫達も多く、実に残念ですね。

本来のヤエヤマフトの色彩は暗い褐色をしており、正直に言うと全フトカミキリの中で最も見栄えが
しないものです。
しかし、当地近辺に生息するグループは薄青味が加わった美しい個体群なのです。

ビーティングネットに落ちた♂。
ビロウドカミキリ類等も同様ですが、フトカミキリ類も落ちるとスタコラ走り直ぐに飛んで逃げようと
するので、このように落ち着いている場面は珍しいのです^^

普通のタイプしか見たことの無い方は、「ヤエヤマフトってこんなにキレイだったっけ?」と思われる
でしょうし、北部産を採り慣れた方は「やっぱり青いなあ」と納得されると思います^^

本当はヤエヤマフトカミキリの石垣北部亜種と書きたいところなのですが、残念ながら最新の
分類では従来の位置付けから格下げされています。理由は西表島産との相違点の方がむしろ大きい
ためだとか。
一つの島の中に二亜種が存在するというのも確かに苦しいのかもしれませんが、実際に複数を
並べて比較すると固定的な色彩の相違は確かにあります。

上がオモト岳近辺の通常型、下が石垣北部の個体群です。
同じ光度で撮ったのですが、上は虫体の暗さに引っ張られ綿面もやや暗く写っています。それを
差し引いても相違は歴然ですね。
皆さんの目にはどう映るでしょうか。


フトカミキリ好きのカミキリ屋(本当はなんでも屋^^)としては、北部亜種が消失したのは本当に残念。
西表産の扱いは別に考えるとして、北部亜種をそのままにしておく選択枝はなかったのかしら。

なお、西表産は来年大いにシバく予定です^^

石垣島のフトカミキリ二種(2013.6.25)

亜科名としては馴染み深いフトカミキリ類ですが、実は南西諸島にしか分布していません。
本土の人から見ると身近には居ないし、結構カッコ良いフォルム・カラーリングなので憧れのカミキリ
の一つではないでしょうか。

石垣島にはイシガキフトカミキリおよびヤエヤマフトカミキリの二種が分布しており、色も形も互いに
よく似ています。
イシガキフトはかなり少ないので(採り難いと言い換えた方が良いかも^^)普通の採集ではあまり
目にすることはできませんし、ヤエヤマフトにしてもそれほど多いカミキリではありません。

また石垣北部のヤエヤマフトは亜種化(青味が強く美しい)しており、わざわざ1時間ほど掛けて
そこまで行かないと入手出来ない(しかも行っても採れるとは限らない)こともあって特に人気があります。

前者の幼虫はシイの生木に依存する一方、後者は雑多な木々の枯れ枝をホストとしており、
基本的には棲み分けているように見えます。
ただ、同所で二種が一度に採れることがあるので、面食らってしまう初心者さんも多いのでは
ないでしょうか。

普通はどちらかと言えば多いヤエヤマフトがイシガキフトと誤同定されることが多いのですが、
その逆もあるため厄介なんですよねえ。

まず、これがイシガキフト(♂)です。
2種とも翅端はヤハズ状になっているのですが、本種のトゲの部分は短く、翅端全体としては丸味を
帯びています。

こちらの写真もこの特徴を良く捕らえているのでご参考に。
イシガキフトカミキリの交尾

次いでヤエヤマフトの♀です。
トゲは長くやや並行気味に伸び、トゲの間はやや開いています。
イシガキフトに比べて、トゲがより鋭く尖っている感じが分かるでしょうか。
内側のトゲも目立ちますね。


また、ヤエヤマフトは体高が低く、イシガキフトに比べるとやや平べったい感じがあります。

♂の触角がいずれも黒色(イシガキフトは少し茶色っぽい)であるのに対し、♀は両種共白と黒の
ダンダラとなるなどの性差はあるものの、基本的に見分けるポイントは♀も同様です。

あなたもこの機会に所持されているこの仲間の標本を整理し直してみたらいかがでしょう。
意外と、「あーあ、ヤエヤマフトの方かあ」と思っていたものがイシガキフトに化けるかも^^

 

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