今日の虫事。アセトンで脂抜き^^(2013.2.11) | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

今日の虫事。アセトンで脂抜き^^(2013.2.11)

昨今は標本作成の仕上げの工程で、有機溶剤を使って虫体の脂抜きを行う人が増えています。
僕も勿論、脂抜き推奨派の一人です^^

肉食のハンミョウやゴミムシをはじめ、カミキリやオオキノコ等といったグループでも、経年と共に
体内から脂分が滲み出して綺麗な斑紋を汚してしまう個体がしばしば、と言うよりかなりの割合で
見られます。

ゴマシジミやクロシジミといった蝶でさえ、幼虫時代の肉食が影響して腹部から脂が出る個体が
結構多く、それが翅に滲み渡るともう標本の体を成さなくなりとても厄介です。

以前は一度脂が滲み出してしまうとどうにもならなかったのですが、最近では主にアセトンに
一定時間浸けることである程度の脂分を取り去り、かつ滲み出しを極力減らすことが出来るように
なっています。

これは、アセトンに一週間程浸けているキマダラカメムシ。
カメムシ類も体内にかなりの脂分を持っており、ご覧のように溶け出した脂でアセトンが褐色に
濁っています@@

本当はこんなに無造作に複数個体を入れ込むのは良くありません。
アセトンは瞬時に虫体の柔軟性を奪うので、液体の揺れで個体同士がぶつかり合った際に
パーツ(特に触角)を破損させるのが関の山です。
僕は慣れているので面倒を省くためについやっちゃいますが、まあ、これは良くない見本として
捉えて下さい^^

その後アセトンから引き上げ、乾燥後マウントした標本です。
虫体をドス黒く汚していたアブラがすっかり抜けて、生前のようにキレイな紋様が蘇りました^^

アセトンに浮かべるだけだと水面から浮き出た背中(エリトラの高い部分)や前胸の脂が取れないので、
僕はこのように脱脂綿やティッシュを「落としぶた」として上から被せて対処しています。
そしてこれは個体同士のぶつかり合いを防ぐ意味合いもあります。
左はコガタノゲンゴロウ、右はレインボーセンチです^^

標本数が少数の場合はこれでも良いのですが、慣れないと落としぶたを持ち上げた時にやはり
触角等を破損させてしまう事故も起こり得ます。
これを防ぐには、大き目のタッパーに標本を詰めたタトウを入れ、その上からアセトンを注いで
タトウごと沈めてしまった方が良いでしょう。

蛇足ですが、調べてみると脂は低極性の物質なので、高極性の有機溶剤であるアセトンとは
相性が良いとは言えず、脂抜きの溶媒としてはあまり適していないように思えます。
それなのにこれだけ普及しているのは、やはり入手し易いためでしょうか。

本当ならもっと脂と親和性の高い(すなわち脂がより溶け出し易い)低極性の溶剤を使った方が
良いはずですが、その辺りの検証は殆ど行われていないようです。

まあ、とりあえずはアセトンでも概ね良好な結果が出ているので、あまりこうした議論は進まない
のでしょうね。
僕も一斗缶の「大人買い」をしているので、暫くはアセトンを使い続けてみるつもりです^^

脱脂がほぼ終了しつつある与那国産フチトリゲンゴロウ。
一昨年「種の保存法」の国内種に指定され、もう採れなくなっちゃいました。
タダゲンを凌駕する迫力満点の珍奇ゲンゴロウだったのに、残念・・・


ゲンゴロウ類は特に脂の出方が酷く綺麗な紋様を汚しがちですが、アセトンを使用することで
ほぼ生前の鮮やかさが蘇ります。
これも10年以上も前の採集品で脂滲みで真っ黒に汚れていたので、とても得した気分^^

蛾の太い腹部からもしばしば脂が出てきます。
その際は、翅が影響を受ける前に腹部を切り離し同様にアセトンに浸け込みます。

そして脱脂が済んだ後に乾燥させ、ボンドで元の位置に貼り付けます。
この作業は、ゴマシジミやクロシジミといった脂の出易い蝶でも同様です。

腹部を修理した後はこのように立てたコルク板やポリフォームに刺してボンドの乾きを待ちましょう。
こうすることで腹部が垂れ下がったまま固まってしまう事故が防げます^^

 

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