オサムシ | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

裏山でちょっとオオオサムシ掘り^^(2013.2.13)

ここ暫くは全く採集に出ていないので、少々禁断症状が出てきたようです^^

採集に出ようと思えば出れるのですが、今は来月からの大計画(^^)に備えて引っ越し準備や
大量の虫を整理している真っ最中。
これ以上、新たな虫を抱えるわけにはいかないという事情があります(泣)。

それでも今日はどうしてもフィールドに出たくなり、自宅から20分程の裏山に行って来ました。
全行程で2時間程度の肩慣らしです^^

ただ、今シーズンは飼育材料を抱えるわけにはいかないので成虫採集しかできません。
前段のように在庫も増やしたくないので大量に採れるものもNGです。

九州中部の低地性オオオサムシを欲しがっている人が居たのを思い出したので、、軽い運動にもなる
オサ掘りをやることにしました。

この辺りならどうせオオオサとかヒメオサ、エゾカタビロオサしか居ないのですが、関東低山帯辺りの
アオオサのように、いずれも一度にゴマンと崖の中から出てくることはありません。
あわよくば近場でオオオサがたくさん採れる一画を見つけておきたいという気持ちもありました。

地元近辺のオオオサには九州山地南部のクマソや御所浦島の亜種がおり、数年前には鹿児島の
大隅半島の亜種が記載されています。

大きさの観点から見ても、、平野部の個体に対して九州脊梁山地の高標高の個体はとても小型です。
一方、かつて五島福江島で多数のオオオサを採集したことがありましたが、いずれの個体も馬鹿デカく、
地域変異が大きい種類だな、という印象を持っています。

オオオサの亜種分けには意義を唱える人も多いらしく、海で隔離されている御所浦亜種は良いとしても、
特に大隅半島亜種を消したがっている人が多いのに驚きます。

ある人はクマソとの空白地帯を埋めるのに躍起になっており、足繁く彼の地に通っているとか。
よほど嫌われている亜種のようです^^

ヒメオサにしても九州産は意外と面白く、地元でも少なくとも3パターン程の変異を確認しています。
いつも何かのついでに地面を這っている個体を摘まむ程度ですが、いずれ九州に回帰した採集を
行う際は各地でじっくりトラップ採集をしてみるつもりです^^

さて、何カ所かの崖にトライして、結構多くのオオオサが越冬している一画に行き当りました^^
林道脇の崖は一見どこでもオサムシ類が潜っているように見えますが、土質や硬さ、湿度の具合、
そして日当たり等の要因で越冬場所として好まれる部分は相当偏っています。

それに種類によって好む場所があり、同所的に同じ種類が固まって越冬している傾向が強いですね。
これはゴミムシも同様で、ゴミ掘りのメッカとして有名な千葉県では、ツヤキベリやオオサカアオといった
種類も同所的に複数が採れ、ちょっと離れた崖からは全く出ないという場面が多くありました。

蝶のゼフィルスの採卵と同様、どこもかしこも同じように見える環境の中で、ほとんどの採集時間は
そうしたごくわずかの最良のポイントを求めてさまよい歩くのに費やされるわけです。

なので、冬季に特定の歩行虫を効率的に採集するには、狙った種類に応じた越冬場所を探し当てる
経験を積む必要がありますね^^

もう一つ重要なのは、そこにある種の歩行虫がたくさん居る事が分かったら、必要以上に崖、すなわち
越冬場所を壊す行為は控えることです。
そして越冬明けの活動期間におけるトラップ採集に切り替えるべきでしょう。

そうすることで、長らくその場所で採集が楽しめますし、体力・時間の分散で新たなポイントを
見つける道にも繋がりますので。
やはり採集も、能率と合理性ですね^^

オオオサ系統は、こうした粘性の柔らかい土質の崖に固まって入っていることが多いです。
そして日当たりが悪く、湿度がやや高ければベター。
削った断面にオオオサの越冬部屋が見えますね^^

ザクザク崩すとオオオサがポロポロ出てきます。



今日はとりあえず10頭程でカンベンしてやりました^^
春に来れば、越冬明けの多くの個体が地面を這い回っているでしょう。
(ここ数年は来れないけど)

今日の虫事。アセトンで脂抜き^^(2013.2.11)

昨今は標本作成の仕上げの工程で、有機溶剤を使って虫体の脂抜きを行う人が増えています。
僕も勿論、脂抜き推奨派の一人です^^

肉食のハンミョウやゴミムシをはじめ、カミキリやオオキノコ等といったグループでも、経年と共に
体内から脂分が滲み出して綺麗な斑紋を汚してしまう個体がしばしば、と言うよりかなりの割合で
見られます。

ゴマシジミやクロシジミといった蝶でさえ、幼虫時代の肉食が影響して腹部から脂が出る個体が
結構多く、それが翅に滲み渡るともう標本の体を成さなくなりとても厄介です。

以前は一度脂が滲み出してしまうとどうにもならなかったのですが、最近では主にアセトンに
一定時間浸けることである程度の脂分を取り去り、かつ滲み出しを極力減らすことが出来るように
なっています。

これは、アセトンに一週間程浸けているキマダラカメムシ。
カメムシ類も体内にかなりの脂分を持っており、ご覧のように溶け出した脂でアセトンが褐色に
濁っています@@

本当はこんなに無造作に複数個体を入れ込むのは良くありません。
アセトンは瞬時に虫体の柔軟性を奪うので、液体の揺れで個体同士がぶつかり合った際に
パーツ(特に触角)を破損させるのが関の山です。
僕は慣れているので面倒を省くためについやっちゃいますが、まあ、これは良くない見本として
捉えて下さい^^

その後アセトンから引き上げ、乾燥後マウントした標本です。
虫体をドス黒く汚していたアブラがすっかり抜けて、生前のようにキレイな紋様が蘇りました^^

アセトンに浮かべるだけだと水面から浮き出た背中(エリトラの高い部分)や前胸の脂が取れないので、
僕はこのように脱脂綿やティッシュを「落としぶた」として上から被せて対処しています。
そしてこれは個体同士のぶつかり合いを防ぐ意味合いもあります。
左はコガタノゲンゴロウ、右はレインボーセンチです^^

標本数が少数の場合はこれでも良いのですが、慣れないと落としぶたを持ち上げた時にやはり
触角等を破損させてしまう事故も起こり得ます。
これを防ぐには、大き目のタッパーに標本を詰めたタトウを入れ、その上からアセトンを注いで
タトウごと沈めてしまった方が良いでしょう。

蛇足ですが、調べてみると脂は低極性の物質なので、高極性の有機溶剤であるアセトンとは
相性が良いとは言えず、脂抜きの溶媒としてはあまり適していないように思えます。
それなのにこれだけ普及しているのは、やはり入手し易いためでしょうか。

本当ならもっと脂と親和性の高い(すなわち脂がより溶け出し易い)低極性の溶剤を使った方が
良いはずですが、その辺りの検証は殆ど行われていないようです。

まあ、とりあえずはアセトンでも概ね良好な結果が出ているので、あまりこうした議論は進まない
のでしょうね。
僕も一斗缶の「大人買い」をしているので、暫くはアセトンを使い続けてみるつもりです^^

脱脂がほぼ終了しつつある与那国産フチトリゲンゴロウ。
一昨年「種の保存法」の国内種に指定され、もう採れなくなっちゃいました。
タダゲンを凌駕する迫力満点の珍奇ゲンゴロウだったのに、残念・・・


ゲンゴロウ類は特に脂の出方が酷く綺麗な紋様を汚しがちですが、アセトンを使用することで
ほぼ生前の鮮やかさが蘇ります。
これも10年以上も前の採集品で脂滲みで真っ黒に汚れていたので、とても得した気分^^

蛾の太い腹部からもしばしば脂が出てきます。
その際は、翅が影響を受ける前に腹部を切り離し同様にアセトンに浸け込みます。

そして脱脂が済んだ後に乾燥させ、ボンドで元の位置に貼り付けます。
この作業は、ゴマシジミやクロシジミといった脂の出易い蝶でも同様です。

腹部を修理した後はこのように立てたコルク板やポリフォームに刺してボンドの乾きを待ちましょう。
こうすることで腹部が垂れ下がったまま固まってしまう事故が防げます^^

 

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