ケブカトラカミキリ | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

5月中旬の南薩のカミキリ(2012.5.14)

5月11日(金)から12日(土)にかけて鹿児島県の薩摩半島南端に行って来ました。

メルマガでは行かないと言っておきながら、その翌日にはあっさり撤回^^
本当は大分県黒岳方面へ最後のカエデの花掬いに行く予定だったのですが、予報によると
大分方面はかなりの低温らしいので、採集になりそうな南薩へ急きょターゲットを変更した
というわけです。

南薩で今の時期に狙えるのが標高4~5百メートルの中山帯に分布し、クロキをホストとする
大型のキュウシュウトガリバホソコバネカミキリ及びエリトラが黒いジャコウホソハナカミキリ、
そして近年侵入が取り沙汰されるケブカトラカミキリです。

トガリバ自体は今年すでに高地で採った材から結構羽脱いているので個体数が欲しいわけでは
ないのですが、数年前に当地で割り出した超巨大♀の蛹を死なせて発狂寸前になったことから
そのリベンジという意味もありました。

採集初日、トガリバ等のポイントに着いて感じたのは思った以上に「涼しい」こと。
標高5百メートル近くはあるので平地より体感温度が低いのは当然なのですが、ここまで低いとは
意外でした。そしてこの傾向は終日続いたのです。

午前8:30頃、既にネットを持って林縁を探索にかかります。
このポイントは5~6年前に原生林を切り開いた林道で、その直後は虫の発生も良かったのですが、
今年は虫の気配が全くしません。

まだ早朝の気温も上がっていない時間帯なので当たり前なのですが、長年培った虫屋の「勘」
というヤツでしょうか。こうした悪い方の勘ってよく当たっちゃうんですよねえ。

そして林縁をパタパタと見慣れた飛び方でゆっくり飛翔する虫を掬うと、やはりジャコウホソハナ。
黒い方のタイプです^^
ここでは黒:赤が2:1位の割合で採れますが、九州でもやはり成虫では少ないカミキリです。

阿蘇の中山帯でもそろそろ本種が採れ始めるのですが、この時期は飛翔中のものばかりで
不思議と花で採ったことがありません。
今日はなんとかノリウツギ以外の花に来た本種を見てみたいものです。

しかし今日は涼し過ぎます。雲も厚くはないものの太陽が全く顔を出しません。
決して寒いというわけではないのですが、風も強いので余計に涼しさが増します。
黒岳に行っていたら凍えていただろうな。

林縁の一番大きいウツギの株に来ているニンフハナやホソハナ(いずれも大きい)を眺めていると、
その何倍もある細長いカミキリの姿が目に入りました。
ジャコウホソハナです。残念ながら赤いタイプですが慎重に写真を採ります。

その後も何度もウツギ2種、シイ、エゴノキ等のいろいろな花を見たり掬ったりしましたが、
飛翔中の黒いタイプを1頭追加したに止まりました。

さて、トガリバの方ですが、悪天候の中でなかなか姿を見せません。
林内が暗く涼しいとネキの仲間はまず立ち枯れに飛んで来ないのです。
これはネキのメッカ、群馬県武尊山でもさんざん経験しました。
林内や林縁には数年前からポイントにしている良好な立ち枯れが何本かあるのですが、
何度見回っても1匹も飛来してきません。

写真は最も期待を掛けていた林内のクロキご神木。これほど太いクロキの立ち枯れはまず
見つかりません。
でも、思ったより相当古くなっているのでもう今年は無理かな。

予定では少なくとも2~3頭は付いているはずだったのに・・・
結局、今回はこの木も含め林内の木では1頭も見る事が出来ませんでした。

数時間ポイントを徘徊し、林縁の1本のクロキ立ち枯れの裏を覗き込んだ時、
「あっ、いる! 」

でも、目が合っちゃってます(汗)。出会いとしては最悪のパターンです。
ただ、この姿こそ写真に撮りたかったんですよねえ。

僕は生態写真屋では全くありませんが、虫を指で押さえて撮った写真を見るのが大キライなんです。

逃げるなよ、カシャッ。 

ズームアップ!カシャッ。

うーん、正面からだと「何虫」かよく分からないな。遠くてピンもよく合わない。
なんとか横から、と少しずつ踏み込んでいくと結構デカイ♂です。
ああ、これが限界だ。カシャッ。

そして慎重に指で押さえ採ります。やっぱりデカイ!
高山帯の小さな個体とは比較になりません。これが採れただけでも来た甲斐がありました。
しかし、この後は別の林縁の木で普通サイズの2♂を追加したに止まりました。

時はすでに午後3時を回り、後は気温が下がる一方なのでこのポイントはこれで終了です。
この時点での気温は21℃。これではやはり個体数は望めませんね。

写真はこの時期の巨大で白い「サツマ」のサツマシジミ。
いつか飼育でビカビカの個体をたくさん出したいものです。

その後、翌日のために薩摩半島を一気に横断してケブカトラのポイントへ移動します。

その途中にキンケビロウドが発生している公園があるのでちょっと寄り道します。
ゆっくり歩きながらヤツデの昨年の葉を見ていきますが、数年前まではぐしゃぐしゃにあった
食痕が全く見られません。ここのキンケビロウドも終息してしまったのだろうか・・・

実はこの近くにはかつてオオムラサキカミキリが採れていたポイントもあります。
鹿児島や宮崎の南部に来た時には気を付けているのですが、やはりついでで採れるほど
甘くはありませんね。一応ホストの目ぼしは付けているのですが^^
やはり本種の生態解明は地元の人にやっていただくのが一番でしょうね。

この日はとある港町のコンビニ駐車場で車中泊しました。
5月中旬の鹿児島南端の海岸なのに、寒かったあ(泣)。

・・・・・・

翌12日も前日と同様、薄曇りに低温が続きます。
天気予報は前日ともども「晴れ」、そして「最高気温26℃」なのに・・・
予報と現地での齟齬は採集には付き物なのですが、連日だとホントに腹立たしい。

なお、この近場にはチャゴマフ(白くて良い)とオキナワキボシがピンポイントで
発生している所があります。

いつもなら材を探しに行くのですが、すでに様々な飼育材料を抱えていて手間が割けないことと、
来年は材の管理が困難になるため今回は止めることにしました。

さてケブカトラですが、気温がようやく上がってきた正午過ぎにやっと姿を現しました。

このポイントにはミカン畑などの防風林としてイヌマキが多数植栽されており、
その多くにケブカトラの食害が見られます。

ただ、言えるのはやはり駆除が進んでいるようで、かつてのようには多数は見る事が
出来なくなっているということです。農業に携わる人達も馬鹿ではありませんし、
産業に関わることなので自治体も手をこまねいているわけではありませんからね。

ここ以外でも何ヵ所かのポイントを探し回りましたが、かつての食害跡はあるものの
マイポイント以外ではほとんど見る事はできませんでした。

「被害が出ている」のと、個体数の関係が必ずしも一致しない状況になっていると言えます。
「あんなのイッパイ居るよ」と過信して安易にやってしまうとヌルもあり得るカミキリですよ^^

午後3時半、急激に気温が下がってきたので採集終了。
熊本市の自宅まではここから海岸線沿いに北上して5時間以上。さすがに疲れました。
でも、鹿児島にはムラサキアオや大隅半島での採集等でまだまだ来るんだろうなあ。

やはり明日から鹿児島へ・・・(2012.5.10)

本日出したメルマガには、近々鹿児島へ行く予定は無いと書いたのですが、ふと思い立って明日から
1泊の予定で行ってくることにしました^^

ケブカトラカミキリや低地のキュウシュウトガリバホソコバネカミキリの発生状況等を見てきます。
やや気温が低いのがちょっと気掛かりですが・・・

本当は大分の黒岳にカエデの花を掬いに行こうと考えていたのですが、天気は良いものの大分方面は
かなり気温が低いようなのでパスすることにしました。
それに黒岳の天気はまったくアテになりませんし・・・

なお、羽脱のピークを迎えているベニハンノキカミキリ、及び羽脱し始めた阿蘇の極小イタヤカミキリの
材箱も積んでいかなければなりません。

二日も管理しないで放置すると、羽脱した個体同士が材箱の縁などで噛み合いをし、全く使い物に
ならなくなってしまいます。
持って行った現地では何かと億劫ですが、これくらいはしないと美しい標本は残せません。

なお、先日のヒコサンヒゲナガコバネカミキリ採集行には、ベニハンノキを福岡まで連れて行きました^^

下の写真は先日鹿児島から幾つか生かして持ってきたモンキタマムシの後食風景です。
本種の出現期間はほぼGW頃までとされており、1exのみ死亡しましたが、それ以外はまだまだ元気です。

次は以前のブログ記事でも触れた阿蘇の「極小」白イタヤの脱出口です。
指ほどの太さの幹(枝ではありません^^)ですから、いかに成虫が小さいかお分かりになると思います。
今日までに3頭が羽脱しています。

では、ブログは二日ほどお休みすると思います。

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