ススキサビカミキリ | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

ススキサビカミキリ、新成虫増え始める(2015.4.16)

石垣島の北端まで行くと、広大なススキ原が広がっているエリアがあります。
そこに生息しているのがススキサビカミキリです。

実はここまで来るのには結構時間が掛かるため、採集日数が少ない人は初めから本種狙いを諦める
傾向があるようです。
ススキ依存性のカミキリの中でもポイントが絞り難い種類でもありますしね。

年間を通してダラダラと出現しているようですが明らかにピークはあり、今は新成虫が増え始めています。
ススキ原の中で活動するカミキリの中でも本種は特にスレ易く、酷いものは微毛がすっかり剥げて
背中が真っ黒になってしまう場合すらあります。そこまでではないにしても、綺麗な個体の割合が多い
タイミングに採らないと意味が無いんですね。
せっかくここまで来て、個体数は少ない上にリリースばかりだと悲しいですから。

これなんか文句の付けようの無い、素晴らしい個体です^^


ここまで完璧に微毛が揃っている個体は珍しいですよ。

本種についてはかつて、ちょっとしたミス・リードがあったようです。
70~80年代に活躍した採集人達が「牧場内」で本種を多数採り、そのことが知れ渡ったため
本種は牛が踏み潰したススキの株がないと採り難いと思い込んでいる人が未だに居るようです。

そうしたケースもかつてあった、ということです。
本来本種は広大なススキ原に薄く分布しており(エリアは限られるが)、なにも牧場が無いと採れない
わけではありません。

それに石垣島でも産業構造改革の中で、牛の常時放牧を止めて牛舎方式を取る畜産業者ばかりと
なっています。 現実的に島内にかつてのような牧場は既に存在しないのが実情です。

唯一と言える現在も残る広大な牧場。
とは言っても一種の観光牧場であり、草地も美しく管理されススキなど殆ど目に付きません。
こんなところでは期待するのが無理と言うもの。

本種に関しては、昨年までにかなり時間を費やしたので今季はさらりと流そうと思います^^
あとは何時か幼虫を飼育してみたいと思うくらいかな。

ススキサビカミキリとウスアヤカミキリを採集時に見分けるコツ(2014.6.21)

ある報文を見ていたら、ススキサビカミキリについて気になる記述があったのでちょっと記事に
してみようと思い立ちました。

曰く、「ススキサビカミキリと、同所的に見られるサキシマウスアヤカミキリとの区別が現場で出来ない
ため、ウスアヤを無駄に多く採る採集者がかなり居る」というもの。

ホントかいな?
僕がこれまで現場で一緒に採集した限りでは、見分けがつかないという人は居なかったぞ。

これがススキサビで・・・

これがウスアヤ。どうやったら間違えられるのか・・・

もし上の二種が同じに見える人が居たら、その人はエグリトラとクロトラを区別できないし、ピドニア
なんか絶対同定出来ないということになるんだけど。
まあそうした意見が出て来るということは、たまにはそんなケースもあるのかな・・・
というわけで、現場で出来る簡単な区別の方法を写真を交えて解説しておきます。

まず、この写真を見て頂きましょう。
左からウスアヤ、ススキサビ、そしてススキサビと同属のコブバネサビです(いずれも♀)。

こうして見ると、確かにススキサビの体型・色彩が醸す雰囲気は同属のコブバネサビよりむしろ他属
であるウスアヤに似ています。

しかし、エリトラ・前胸共に斑紋が異なっているのは明らかです。
エリトラの斑紋に関して言えば、ウスアヤが極めて変異に富むのに対しススキサビはほぼ一定です。
形状にしてもウスアヤは頭部が大きく異形で、エリトラも下膨れ気味。とても酷似しているというレベル
ではありません。

また写真からは分かり難いのですが、ススキサビは体の断面がほぼ円状で、ウスアヤは横長の
楕円状です。
よって採集現場ではススキサビの方が背が高く見えますし、ウスアヤは平べったく見えます。

さらに触角も大きな区別点となり、♂♀共にウスアヤの方がかなり長いです。
念のため♂♀共にススキサビとウスアヤの標本写真を載せておきますが、体長と比較してみて下さい
(上が♂、下が♀)。


そして、この二種を考える際は「擬死」の概念を避けては通れません。
両種共に擬死体制を好んで(?)取るためで、ススキサビの場合はほぼ半数、ウスアヤは8割以上が
足を縮めてジッと動きを止めた形で落ちてきます。

実はこの擬死態勢が最も両種を見分け易いのです。
すなわち、ススキサビが必ず横倒しになるのに対し、ウスアヤはうつ伏せ(通常態勢)もしくは仰向けと
なるのです。

またススキサビが前脚を内側に折り込むのに対し、ウスアヤは天を仰ぐように前方へ伸ばします。
さらなる違いは、ススキサビは各脚の折り曲げ方が緩いのに対し、ウスアヤは体にピッタリと規則正しく
引き寄せてまるで蛹のような形を醸します。

百聞は一見にしかず。
これがススキサビの擬死態勢。
横倒しになっていますし、かつ前脚は内側に折りたたんでいます。

そして下のうつ伏せあるいは仰向けがウスアヤの擬死態勢です。
ちょうど交尾したペアが落ちてきたので1枚の説明写真で済みました^^

ダメ押し。
擬死状態のススキサビを仰向けにしてウスアヤと並べてみました。
ススキサビの腹端にはこのように大きな黒紋があり、ウスアヤの腹面とは全く異なります。
正直、見分け方としてはコレだけを知っていればよく、採集地で迷ったらひっくり返してお尻を確認
するだけで良いということになります。

ついでに言うと、写真から分かるようにススキサビの擬死の脚の折りたたみ方は極めて緩く適当で
あるのが分かると思います。
しかもイヤイヤこの姿勢を取っているようで、指で突くと直ぐにスタコラと走り始めます。
一方ウスアヤの擬死はとても頑固で、指で突こうが摘もうがかなり長い時間この態勢を取り続けます。

いかがでしょうか。
以上を総合すれば、現場で両種がどうしても見分けられないという方でも今後はきっと大丈夫です^^

ススキサビカミキリ、今年の発生は不良傾向(2014.6.10)

石垣島北部の珍種カミキリの一つに、広大なススキ原に現れるススキサビカミキリが居ます。

一時は居なくなったと騒がれたことがありましたが、熱心な一部の採集者によってとりあえず近年の
採集例は増えてきています。
ただ局所性が強く適当なススキのビーティングではまず採れないため、せっかく時間を掛けて北部へ
足を伸ばしても早々と諦めてしまう人も多いようです。

僕はと言えば、かねてより「ちゃんと探せば居るんだぞー」と心の中で叫びながら^^、コツコツと調査を
重ねて今では5~6カ所の独自ポイントを持つに至っています。
昨年は結構頻繁に北部を訪れ、そこそこの個体数を採集出来ました^^

今年も何度か本種の採集を試みていますが、実は昨年ほどの個体数が得られないのです。
ポイントそれぞれの環境は変わらないし、いずれの場所でも同様の傾向が見られるので、今年の
ススキサビの発生は何らかの理由で抑制されているようです。

どんな虫でもそうですが、冬場の積算温度や雨量、気温その他の条件の変動で個体数は増減するので、
何シーズンも見ていかないと多くは語れないのでしょう。

本種は周年型の発生パターンを持ち、世代が重なるのでどうしてもキレイな個体と古い個体が同時に
採れてしまいます。
スレていない個体が落ちるかどうかは運次第ですが(実は梅雨期に新鮮個体の一つのピークがある^^)、
正直綺麗な個体が採れる確立は基本的に低いです。
本種の生態と関係があるのですが、近縁種と比べて極端にエリトラや前胸にキズが付き易いんですね。

せっかくビーティングネットに落ちても、大抵はこんなスレスレのものばかり・・・
僕なんかはもう摘みませんね。次世代のためにもリリースです^^

擬死を装って落ちてきたもの。
ススキサビの場合、擬死状態および直ぐにネットにしがみ付く場合の割合はほぼ半々でしょうか。

また、擬死の場合は必ず横倒しとなるので、似ているとされるウスアヤカミキリと簡単に区別出来ます^^
ウスアヤとの違いについてはまた改めて説明したいと思います。

ススキサビカミキリのホストに関する一考・その一(2013.6.21)

これはメルマガ(南虫ニュース)かSIC通信に書こうかなと思っていたのですが、取っ掛かりに過ぎない
こともあるのでブログネタにします。
一般の方もご参考にしていただければと思います^^

ススキサビカミキリのホストに関する一考・・・

本種に関しては今はまだ採集の方に力点を置いているし、現地に周年を通して住むことが出来れば
材採集や飼育によって真相を突き止めるのも容易なのですが、今はそれが不可能です。
以下に僕がこれまで現場で得た事実の一部を述べますが、「だからススキサビのホストはコレだ!」と
現段階で言うつもりは無いことを予めお断りしておきます。

以前月刊むし誌にススキサビカミキリに関する報文が出され、その中でホストに関する疑問が
投げかけられていました。

曰く、「ススキ」サビとは言うけれど、本当にホストはススキなのか?
そして、採集現場付近に多いアカメガシワの枝を放置し後に回収、しかしススキサビの羽脱はなかった
というものでした。

その報文を見た時、僕が思ったのはこうです。
「第二ポイントで採っていればそう考えるわな」

僕のススキサビへの想い入れは深く、もう何処にも居ないと騒がれていた時分にもコツコツと
採集ポイントを開拓していました。
そのおかげで今では数カ所の独自ポイントを持っています^^

実は近年、地元の採集人のある行為のおかげで、その一つが他の人の目にも触れるようになって
きました。
そこが僕の言う第二ポイントです。

当地はアカメガシワ等の潅木の茂る場所で、その周りをススキが帯状に取り巻くように生えています。
現在一部の人に知られつつあるススキサビのポイントとは大体この場所を指し、件の報文の舞台と
なった所も環境の描写から其処であるのが分かります。

確かに、その場所で周りを見回すと、「ススキサビのホストって本当にススキなのか?」と疑問が
沸いてくるほど雑木が生い茂っており、筆者さんが面食らわれたのも十分理解出来ます。

僕も始めの頃は純粋にこの件を考えた事はありました。
でも、今ではこれまでに得た事実から、真相は案外単純なのではないか、との心境に至っています。

実は第二ポイントはススキの量が少なく、正直なところ場所が広い割にはススキサビの密度はそれほど
濃くありません。
潅木が多いこともあって他の雑多なSybraやRopica、タテスジドウボソ、ワモンサビ、シモフリナガヒゲ、
リュウキュウヒメ、ヨナグニゴマフ等の普通種がゴマンとおり、そこで採れるカミキリの大部分を占めます。
勿論ススキをホストとするウスアヤもたくさん居ます。
このことは前段の報文の「放置したアカメガシワからのこれらの羽脱」と一致しています。

また、こういう事実があります。
ここに限らず、北部におけるススキサビの分布域の潅木類をビーティングして本種が落ちて来た事は
一度もありません。

北部には他にヤエヤマフト石垣北部亜種やイシガキトガリバサビ等狙うべき珍種カミキリも居るため、
僕は徹底的に木々の枯れ枝や枯葉、ツル類等も散々引っ叩いてきました。
しかし、ススキサビが採れた事は一度も無く、他の採集者がこうした方法で採った話も聞きません。

すなわち、ススキが全く無い所でススキサビが採れたことは無いのです。

そして重要な話をしましょう。
僕が独自のポイントを幾つか持っていることは前段で触れましたが、ススキサビが最も多い場所、
僕が第一ポイントと呼んでいる一画にはほぼススキしかありません。

ほんの数本の細い潅木(樹種は控えるがアカメガシワではない)しか無いためウゾウムゾウは殆ど
居ない上、ウスアヤもあまり落ちず、どちらかと言えばススキサビの方が多いくらいです。
僕はこうした所が本種の本来の生息環境ではないかと考えています。

もし本来のホストがススキではなく、例えばアカメガシワ等の樹木であるなら、ススキサビの個体数は
第二ポイントの方が圧倒的に多いはずです。

「じゃあ、もうホストはアレで決まりじゃん!」
そうした声も聞こえてきそうですが、そうも言い切れないかもな、というのが今の僕の心境です。

それは本種を幾つか人工的な環境(最低限の^^)で飼ってみての感じなのですが、それについては
写真も含めまた後日お話しますね^^

ススキサビカミキリの擬死ポーズ(2013.4.28)

今や八重山の珍品カミキリの一つに数えられるススキサビカミキリ。

石垣に数年滞在されていた方が某紙に報文を出されていたので、本種が擬死のポーズを採ることを
ご存知の方も多いと思います。

通常はこのように普通の状態で落ちるケースが多いのですが・・・


このように、たまに足を丸めて横向きの体制で転がり落ちる個体が居ます^^


擬死と言ってもこのポーズを取っているのは落下後暫くで、指で突くと直ぐに体制を整えてスタコラ
逃げようとします^^

このポーズは最普通種のワモンサビカミキリも取ることが多いのですが、他のサビカミキリでは
見ることがありません。

ワモンサビは堅く足を縮めて比較的長時間ジッとしているのですが、ススキサビの場合は緩く、
直ぐ足を動かし始めてあまり積極的にこのポーズを取ろうとしている感じがしません。

言うなら、「擬・擬死」というところかな^^

ススキサビカミキリが・・・(2012.7.28)

ポトッと落ちました。


ススキサビは現在、八重山でも採るのが難しい種類の一つに数えられています。

僕もなかなか採れなかったのですが、ある事に気付いてからは極めて少ないながら確実に採る
事が出来るようになりました^^

良いですね。この色合いとフォルム^^

※現在管理人「自由人」は屋久島・大隅半島遠征中です^^ 本記事は事前投稿です。

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