当ブログの読者さん(ハムシ屋さん^^)から一つ話題を頂いたので、本日はそれに触れたいと思います。
まずはこの写真からご覧下さい。
今年6月下旬、与那国島で採集した美しいハムシです。
これは元々日本には分布していなかったクビナガハムシの一種(Lema trivittata)で、本邦に居ることが
広く知られるようになったのは、恐らく与那国島の昆虫ブロガーが同島産の生態写真を紹介して以降の
ことと思います。
本種は宮古島および西表島でも昨年見つかり、某昆虫月刊誌にそれぞれ記録が出ていました。
この論文を見ると台湾では既に2010年に見つかっており、2012年にも記録されているようです 。
これによると、本種は本来アメリカとカナダにしか分布していないため台湾(そして宮古・西表)産は
移入されたもので、この一帯に一気に広がったとされています。
そして本種が見られたナス科ホウズキ属の植物はアメリカから輸入されたとあります。
(それと共に本種も移入されたとは言及していない。まあそう言いたいのかもしれないが。)
僕が今回与那国で採集したものは、内陸部でオキナワサビカミキリを狙ってリュウキュウチクを
叩いていた際に2頭が落ちてきたものです。
タケ類はホストではないため、近くの畑あるいは草地で発生していたものが偶然に留まっていたと
考えられます。
前段のブログでは確か海岸線のあるナス科植物にたかっていたとありましたので、すぐ傍の畑に
ナス科のあるものが栽培されていたのかもしれません。
いずれにしても与那国では全島的に広がっていると考えて良いでしょう。
実は、僕はこのハムシの写真を最初に見た時、ある考えが頭に浮かびました。
僕は20年近く前にオーストラリアに1年間駐在員として赴任していましたが、その際にこれを10頭位
採った記憶があったのです。
採集した際は上の写真のように鮮やかな色彩でしたが、亜硫酸ガスで締めたにも拘らず乾燥の過程で
薄汚れた褐色となってしまったのは今回も同じです。
ただかなり以前の事ですし標本も何処に行ったか不明なので本種だったか証明の方法がありません。
沖縄や台湾への侵入ルートを考えても、北アメリカからよりも豪州を経由したルートの方が物流的にも
すっきりすると思うんだけどなあ。
なお、上記の論文を見ると与那国産はまだオフィシャルな記録が無いようです。
ということは、僕が持っている1頭(落ちた2頭のうち1頭は撮影中に逃げられた^^)を発表すると
与那国初記録となるのかしら・・・
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今年も屋久島のヤクネキ吹き上げAポイントの最前列にはこれだけの長竿がひしめきました^^
(あくまでも最前列だけです)
7月中旬の3連休で人が最も集まった日とは言え、4本は正直入り過ぎ^^
ネキが飛んで来ればもちろんチャンバラは必至です。
と言うか、「チャンバラ上等」の連中なんですね^^
誤解の無いように言っておきますが、たとえチャンバラが起こっても誰も文句は言いませんし
争いにもなりません。全くギスギスしていないんですね、この空間は。
あるのは前方を睨む男達の熱気のみ。
誰が採っても、「今度こそは俺が!」となるだけですし、信じられないかもしれませんが採った人を
たたえ合う雰囲気すらあります。
カッコ良く言えばスポーツマンスピリットが溢れているんですよね此処には。
(やっぱりカッコ良くはないな)
本当の事を言えば、ヤクネキはバス通り沿いをホケーッっと歩いているだけでも目の前に飛んで
いる事がある虫です。
それを初めて屋久島に来たような初心者が「何だコレ?」といった雰囲気で採ったりすることも
よくあるんですよ、実際は。
安易に採れる事がある虫だからこそ、採れなくても屋久島詣でを繰り返す虫屋さんは極めて
多いわけです。
でも、Aポイントの中は次元が全く違います。
何処で採っても同じヤクネキですが、「勝ち取った」という醍醐味を味わえる唯一の採集ポイント
であるわけです。
何故か僕は此処にこだわってしまう。何故だかは分かりませんが最初のヤクネキは絶対此処で
採るんだと決めているのです。
残念ながら今年もチャンバラは全くと言って良いほどありませんでした。
特にこれほど多くの竿が並ぶようになってからは・・・
その辺りの詳しい話は本日配信するメルマガで詳細にレポートするのでお楽しみに。
間違い無く日本一詳しい今年の屋久島情報ですから^^
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屋久島産のカミキリには亜種になっている種類が多いのですが、このクマゲカノコサビもその一つです。
屋久島近辺や三島村辺りに分布するアポメキナ(Apomecyna属)の一群は全てこれに含まれます。
本土産と比べると明らかに白紋が発達しているので、採集時にはかなり白っぽく見えますね。
そして本土では一般に盛夏の頃より採れ始めるイメージがありますが、屋久島では7月中旬で
もう既に不完品が結構混ざっているようです。
全くの自然林では採り難く、かえって畑の脇など人の暮らしの周辺に多く見出すことが出来ます。
実はキボシカミキリやシロカミキリ類等をはじめ、こういうタイプのカミキリは結構多いものなので
注意しておくと良いですね。
ある集落のミカン畑の周りの雑木に絡んだカラスウリを叩くと・・・
ポツポツと落ちて来ました^^
本種に限りませんが大多数のカミキリは一度に多くが得られる一画は狭く、殆どの場所には1頭も
見られないということがザラです。
それなりの成果を得るには、地道な探索が欠かせないんですよねえ。
何度屋久島に通っても、ネキポイントと高山帯を往復するだけではかなりの種類を採りこぼすことに
なるんですよ。
ちょっと白っぽくて良いでしょ^^
カテゴリ : カミキリ
ゴミムシダマシの仲間は島毎に固有種が多く、採集やコレクションに大変面白いグループです。
本当はもっと人気があっても良いと思うのですが、イマイチですねえ。
でも、こちらとしてはその方が良いです。
こっそりと楽しむことが出来ますからね^^
屋久島にも勿論多くのゴミダマの固有種が分布しており、魅力的なのが屋久島らしく千メートルを
越す標高に居る高山性の固有種達です。
ゴミダマと言っても多産する種類は限られており、特にこうした高標高に居る種類は数が少なく
一晩にほんの数頭しか採れない種類ばかりです。
せっかく低標高でのナイターを諦め、一晩を潰して高いガソリンを使い(相棒アウトバックはハイオク仕様:
屋久島では最安で176円/ℓ!)ここまで来てもいつも数えるほどしか採れないのが現実なのです。
最も少ないのがイリエヒサゴゴミダマで、採れない年の方が多いですね。
近似と思われる九州のソボトゲヒサゴも珍品でなかなか採れません。
イリエは今年はやや発生していて、他の採集者も含め行けばなんとか採れるという状況でした。
(写真撮れず:ゴメンなさい)
次に少ないのがヒメエグリユミアシゴミダマで、これはカッコ良いですよ^^
図鑑にあるように♂では後腿節にトゲがあってなかなか格調高いです。
これも数が採れないゴミダマで、下の写真はご神木に付いていた一頭です。
高地帯で月と共に見る珍品ゴミダマもオツですねえ^^
実は今回、林内を徘徊していたら、新たな最強のご神木を見つけることが出来ました^^
写真のようにヒメエグリユミアシが3頭も付いており、こんなスペシャルな木は極めて珍しいです。
来年がまた楽しみ。これならイリエも付いているだろうなあ^^
そして、これも屋久島固有のヤクヒサゴゴミダマ。
特徴的なのがその長っ細くデカイ体型で、他の多くのヒサゴゴミダマとは一見して見分ける事が出来ます。
今年は例年より少なかったですね。
また、何時もは多いオニエグリゴミダマ(これも固有種)も今年は少なく、ちょっと違和感があった
夜の屋久島でした。
ただ、夜の静まり返った屋久島の高山帯は独特の神秘性があり、暗闇が怖い方は心して臨んで
下さいね~
カテゴリ : 甲虫(その他)
今回の屋久島遠征で最も窮地に立たされたのがコレ。
ブーンと旋回するハナムグリ(たぶんタダのシロテン^^)のスピードに負けじと振り切った7M竿が・・・
なんと二段目が「ポッキーン」と景気良く真っ二つに@@
「あーっ!」
大きくコダマする絶叫。
実は今回、予備竿を持っていかなかったんですよ。
あろうことか。
遠征の旅程は未だ半分以上は残っているため、何とかコレを修理して使い続けるしかありません。
ただ竿の場合、単なるつっかえ棒で補強した程度では全く使い物になりません。
ですから時間を掛けて、身近にある材料だけでなんとか修理しましたよ。
まず、立木から同等の太さの枝を切り取ってカッターで削り、芯を作ります。
そしてこれを折れた両方の部分にしっかりとネジ込みます。
これだけだと使用中に中の芯がズレる危険性が高いので、上下共に千枚通しで竿と芯ごと貫通させて
穴を空け、針金を通して固定します。
これに百円ショップで買ってきた金属製の園芸用の支柱をあててビニールテープで巻いた状態がコレ。
そこまでやってもやはり「しなって」しまうのは仕方ありません。
しかもかなりの重量アップに・・・
悪い事は重なるもので、さらに、酷使により甘々になっていた最も太い部分の継ぎ目が伸ばす毎に
「スッポン」と抜けてしまう羽目にも・・・
以上の二重苦に加え、中折れ部分に細工をしたためそれがジャマになり縮めても3メートルを超える
長さとなってハンドリングに四苦八苦。
まさに三重苦(泣)。
でもこれで今遠征二頭目のアキヤマイ♂を採ったもんね^^
教訓:
どんな逆風にあっても、汝決して諦めることなかれ。
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谷をフワーッと上がって来た虫を掬い採ると・・・
コイツ、アキヤマイ(オニホソコバネカミキリ屋久島亜種)でした^^
ネットの中を飛び回る様子は「ハチ」そっくり。
じっとしないのでボケた写真ですが、雰囲気は伝わると思います。
僕の場合、何度採ってもコイツばかりなんだよなあ・・・
カテゴリ : カミキリ
本日、屋久島等遠征を終え熊本へ戻ってきました^^
今年の屋久島採集は例年より短期間となりましたが(そのわけはメルマガで)、物凄いカミキリが
採れました@@
屋久島での分布は予想されたもののこれまで記録が無く、近隣亜種との関連性を考える上で
発見が熱望されていたものです。
これが採れた意義はとても大きいです。
さて、これは一体何なのか(バレバレですね^^)
今月末頃配信予定のメルマガで多少触れたいと思いますが、間違い無く今年屋久島で採集された
カミキリの中で最大のヒットです。
いやはや、スゴイ物が採れてしまった・・・
カテゴリ : その他
諸々の準備も何とか整い、本日深夜より屋久島へ向けて出発します。
勿論、相棒のレガシィ・アウトバックと共に鹿児島港からフェリーで渡ります^^
ここ数年は年中行事化している屋久島採集。
狙い目は採れずとも、色々な虫が多いので純粋に楽しいんですよねえ^^
一通りの虫を採り終えたら、これも定番の大隅半島南端へ続いて向かいます。
未だ採っていない雑虫等もいろいろあるんだよなあ・・・
戻りは今月下旬頃となります。
それまで皆さんお元気で!
それぞれの虫採りも頑張って下さいね^^
カテゴリ : その他
深夜には屋久島へ発つ本日、午後の数時間は何とか虫採りが出来そうな天気となったので
地元熊本のトラフカミキリの様子を見て来ました。
ポイントに着いてア然・・・
いつもトラフカミキリが確実に幾つかは付いているクワのご神木が見事に伐採されているでは
ありませんか!
「・・・・・・」
呆然としながら木を見ると、根元の方に交尾中の二組が直ぐ確認出来ました。
九州におけるトラフカミキリの採り難さは丁度1年前の今日、以下の記事に書いたところです。
雨の狭間に活動するトラフカミキリ(2012.7.7)
本県で僕の知る確実な産地はここをおいて他に無いのですが、この一画には伐採され損なっていた
クワが少数あり、トラフをはじめクワ依存性カミキリ等が細々と残っていました。
今回その中の最も良かった木が切られ、それ以外でも実績のあった木が整地等で数本は無くなって
いました。僅か1年の間でこれほど環境が変わるとは・・・
気を取り直してポイントの木を見て回りますが、昨年はあれほど多かったムネホシシロカミキリの
姿は全く無く、同様にクワゾウムシも僅かに数頭が確認出来ただけでした。
ムネホシシロが居ない理由は分かりませんが、クワゾウの少なさはこの辺りで最大の巨木が伐採された
ことが原因と思われます。
件のご神木は良く見ると更に二組の交尾中のトラフカミキリが見つかり、なんとこの木だけで4組もの
交尾が見られたわけです。
今の九州において、こんな木など他には無いのではないでしょうか。
この伐採されたご神木の周辺はすぐ近くには宅地造成が迫っており、遅かれ早かれこの一画は
整地されてしまう運命にはあったわけです。
あと数年は楽しめると思っていたのに、こんなに早く終焉が訪れようとは・・・
昨年までは採集個体数をセーブしていましたが、もうそういった段階では無くなりました。
今年は時間も無い上ちょっと遅めだったので比較的スレの少ない数個体を採集しただけですが、
来年からはシビアな採集に切り替えます。
間違いなく此処は5年後には過去の生息地になってしまいますし、僕に出来る事は可能な限り
多くの標本を世に残すことしかありませんから・・・
カテゴリ : カミキリ
石垣から熊本に戻っての数日間、さすがに梅雨真っ只中の九州は雨と強風の毎日です。
特に今日は風が酷かったこと。まるで台風のようでした@@
屋久島に発つまでに一回は地元で採集できるかなと思っていましたが、これではとても無理のようです。
大人しく色々な準備や、滅多にしない親孝行でもやっておきましょうか^^
さて、今日の主題は石垣を離れる前日、やっと時間が取れて発生を確認したタテスジハンミョウです。
とにかくウダルような日中、汗をダラダラかきながら春先に確認しておいた幼虫の巣穴があった
畑の周りを探索します。
もう背丈以上にもなったサトウキビがたわわに育ちつつあります。
春に確認した巣穴
この時の同地はまっさらの状態だったのですが・・・
で、サトウキビの隙間をゆっくり歩くと、サササッと足早に歩くコイツを発見。
やはりちゃんと居てくれました^^
足場が悪いことも影響して捕獲できたのはほんの数頭でしたが、本種の生息環境等を確認できた
のは収穫でした。
次回は色々な手を使って効率的に採集出来ると思います。
とても良いハンミョウです^^
タグ : タテスジハンミョウ
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