今季遠征の序盤、与那国島でフトカミキリ属2種の幼虫の材採集を行いましたが、それには一つの
ミッションがありました。
以前からの疑問。
フトカミキリの幼虫は何故、1本の枝に1頭の幼虫しか居ないのか・・・
適当な枝には複数の♀が産卵してもおかしくないはずなのに。
合理的な理由として真っ先に浮かぶのが、「殺し合い」もしくは「共食い」。
なぬう、肉食でもないカミキリの幼虫が同種なのに殺しあったり共食いなんかするかあ?
普通はそう考えるのでしょうが、永年虫を見てくるとある種の常識が覆ることがあるものです。
クワガタの幼虫だって飼育中にたんぱく質の補給を念頭に与えれば他種の甲虫の幼虫(カブトムシ類や
ゴミダマ類が一般的)を食べますしね。
材中に居る甲虫類の幼虫は表からは見えず詳しい生態が分からないものが多いですが、僕は意外と
結構多くの種類が共食いや他種の幼体を捕食することがあると考えています。
フトカミキリについては前段のような理由から思いついたものですが、今季採った与那国産ウスイロフト
カミキリの幼虫を一つの容器に2頭入れて暫く観察してみました。
その結果がこれ。

ちょっとグロい写真ですが、左の個体が右を噛み殺した上で、その一部を捕食しているのが分かります。
「思ったとおりだ。」
1本の枝を中空にしてその中を行ったり来たりするフトカミキリの幼虫にとって、複数の幼虫が
居たのでは都合が悪いわけです。よって幼虫同士が遭遇した際に殺し合いが起こるのでしょう。
その過程でたんぱく質の補給も兼ねて勝者が敗者の一部を食してしまうと。
実はこの実験を別の2頭の幼虫でも試したのですが、結果は同様でした。
虫は知れば知るほど、固定観念が取れて頭が柔軟になります^^
カテゴリ : カミキリ
今年7月最下旬、屋久島の高山帯で虫を探しながら歩いていると、林道脇にツガの大木が倒れて
いました。
本州の高山帯で程良く枯れたツガやモミの倒木を見つけると色々と虫が採れるのですが(四半世紀の
関東暮らしで経験済み^^)、九州や屋久島だとそうはいきません。ほぼ何も居ないのが常です(泣)。
このツガも樹皮表面には何も居ませんでしたが、ガパッと剥がれた樹皮下に一筋のカミキリ幼虫の
食痕があり、その先に幼虫が材部に食入した穴が開いていました。
どうやら穿孔したばかりで詰め物等も無く、覗くと幼虫の頭部が見えます。


「何だろう・・・」
屋久島の1,500メートル程の高標高で針葉樹食いのカミキリ。
どうも種類が浮かんできません。
食痕の太さや穴の大きさから3~4センチ位の大きさの幼虫と思われますが、取り出してみないと
全く分かりません。
九州本土でこの標高ならヒゲナガカミキリの若齢幼虫かなとも思うのでしょうが、屋久島には
分布していないしなあ・・・
何とか穴を広げようとノコギリと剪定挟みで加工しようと試みますがとにかく硬い。
材がこのように硬い場合、無理して刃物を振り回すと幼虫を傷つけるのがオチです。
よって、魔法を使いました^^
はい。穴を広げることなく取り出し成功。
(この魔法は南虫クラブ員のみに伝授します^^)


小指と比較するとそこそこの大きさですね。
あと直ぐに浮かぶのはマツノマダラカミキリですが、標高が高過ぎるのでたぶん違うと。
食い方もヒゲナガやマツノマダラが属するモノカムス属っぽくないし。
うーむ。
で、10日ほど前に蛹化したのがコレ。

で、本日羽化したのがコレ。

はい、ヤクシマビロウドカミキリでした^^
毎年の長期遠征でここ暫く材採集および幼虫イジリをやっていなかったこともあり、ビロウド系の
幼虫の顔を忘れていました。採集時に気付いても良かったはずなんですが。
確かにビロウドの仲間って時期的に結構遅くまで野外で採れるもんね。
皆さんも経験あるでしょ。秋にコブヤハズのビーティングをやっていてビロウドやニセビロウドが
落ちてきたことが。
でもよく考えると、高山帯から九州平地に下して管理したのでこの9月上旬に羽化したわけですよね。
高温の九州低地でも羽化までに1か月かかっているわけです(夏眠等することなく動いていました)。
元の場所なら、下手したら10月(11月?)に入ってやっと羽化、脱出となったのではないかしら。
針葉樹を食うというのも意外だった、ヤクシマビロウドカミキリの生態の一場面でした^^
カテゴリ : カミキリ
屋久島で採るべきカミキリのうち、種単位としては唯一採っていないのがハイイロホソキリンゴカミキリ。
これまで高山帯でしか採れておらず、記録もせいぜい十指程度ではないかと思われます。
ヤクシマホソコバネ(ヤクネキ)との格闘の間隙を縫って高山帯にも幾度となく挑戦しているのですが、
なかなかお目に掛かれません。
やはり早くヤクネキ♀を片付けて(^^)、こっちに専念出来る状況を作らなければならないなあと
ひしひしと感じているところです。
で、今年の屋久島。
いつものように僕は高山帯でほとんど何も入らないスウィーピングに勤しんでいました。
屋久島の高山帯はツガやヤクスギの超巨木が乱立するとても雰囲気のあるところです。

木々の掬い網に疲れてきた時、ネットの底に待ちに待ったリンゴカミキリの姿を見出しました。
「やったかっ!」
でかいなコイツ、と思いながら覗き込むと・・・

「なーんだ、サツマリンゴじゃん(泣)」
高地帯のリンゴと言えばハイイロホソキ、というイメージが染みついていたのでガッカリ感が
ハンパありませんでした。
恐らく、このサツマリンゴは低い場所から上昇気流によってたまたま運ばれてきたのでしょう。
余談ですが、こんな感じでヤクネキなんかも高山帯でヒョコッと採れてしまうことがあるかもなあと
思った次第。
ま、ハイイロホソキリンゴもいずれ片付けてやるわい、と気持ちを切り替え改めて捕獲を誓った
ところでありました。
おまけ。
同所のスウィーピングで入った屋久島名物の真っ黒なオオヨツスジハナ。
中山帯にも居ますが、屋久島では高山帯の方が採り易いイメージです。

ヤクシマヨツスジハナと同様、近年あまり採れなくなったなあ。・・・
カテゴリ : カミキリ
オオスミヒゲナガ「も」と言うのは先日配信したメルマガの通りです。
先の遠征の最後の最後(今月上旬)、鹿児島大隅半島南部で探した本種も、屋久島の虫と同様に
ドが付く不作振り。
ここ暫くは殆ど当地を訪れなくなっていますが、4~5年前までと比べると極端に採れなくなりました。
ほぼ何もナイターの幕に来ない中で奇跡的に1頭のみ現れたオオスミヒゲナガ♂。

森の中を徘徊してもほぼ何も見つからない中、奇跡的にホストのマテバシイの幹に付いていた♀。
エリトラの白紋が取れてツルツル・・・

ここの林道は崩れ易く、今年も大規模に崩壊したようで最近まで路面・路肩を工事した跡が
あちこちにありました。
マイポイント周辺もかなり地形が変わっており、今後はオオスミヒゲナガをはじめ各種の虫が
ますます採り難くなりそうな雰囲気が。
前はこれくらいは採れていたんだけどなあ。
(参考)
当ブログには似つかわしくない、不埒な大隅盛り^^
オオスミヒゲナガは採れなくなったとともに小型化もしているみたい。
これは僕が感じているだけではなく当地によく行く知人の弁でもあります・・・
カテゴリ : カミキリ
7月下旬の屋久島では、例年はあまりやらない材中の虫もいろいろと探してみました。
本日紹介するのはかなり不朽が進んだ朽ち木から割り出したクロコバネカミキリ♀。
蛹から羽化した直後だったようで、シロアリの女王を彷彿とさせる巨大な腹部が印象的です。

コバネカミキリは僕自身とても好きな種類ですが、これまで結構縁があります。
以前も材中で羽化した直後の個体を見つけたことがありますが、やはり他種と比較すると腹部の
膨大さが顕著でした。
新成虫は腹部がある程度収縮するまで材中に留まるわけですが、栄養分が多いせいか他種に
比べると比較的その期間は長いように感じます。この個体も採集後20日程は水分も何も与えない
状態で平気で生きていました(多くの種は同条件でこれほど長生きしない)。
不朽が進んだ木だったため、同時にヤクシマコクワガタの蛹も出てきました。
これは♂の蛹。もうちょっと大きかったらなあ。

こっちは♀の蛹。そろそろ羽化が近づいているようでピンク色掛かっていますね。

本日現在、コクワガタは無事羽化済み。クロコバネと一緒にタトウに並んでいます^^
タグ : クロコバネカミキリ, ヤクシマコクワガタ
カテゴリ : カミキリ, クワガタ
この7月の屋久島で意外だったカミキリの一つがキュウシュウハネナシサビカミキリ。
殆どの方には馴染みの薄い種類とも思うのでちょっと取り上げます。
今年の屋久島は7月中旬から参戦。
いつもこの時期の平野部は既に夏枯れが進み、食指の動く種類はことごとく発生が終わっていたり
末期でスレスレ、ボロボロ・・・
暑い中で必死でビーティングしても良い思いはほぼ出来ないのが常です。
林縁にちょっと良さそうなソダがあったので、ほとんど気乗りはしませんでしたが他にやることも
無かったのでネットも持たず車を降りてみました。

どれどれ、どうせ何も居ないだろうて。
一応ぐるーっとルッキングしてみると・・・
あれ、なんで屋久島にクワサビが居るの?
(ボリューム感のある形態、大きな白紋にそう思った)

上から良く見ると独特の下膨れ体形。これってPseudale亜属じゃん・・・
そうか、キュウシュウハネナシサビだ!
(上部からの写真は撮り忘れました。ごめんなさい。)
屋久島産の本種は実は僕にとっても馴染みは薄く、当個体以外では30年ほど前のGWに
1♂しか採ったことがありません(当時はオキナワハネナシサビか、とされていた)。
現在は三島、トカラ列島のものと同種になっていますが、この仲間は島毎に変異を見せるので
もう少し細分化しても良いのかもしれませんね。
ところで屋久島産のキュウシュウハネナシサビってあまりピンと来ないんですが、時期には
多いのかしら。
少なくともここ何年も通っている7月の屋久島では初めて採ったし、他の採集者が採ったという
話も聞きません。大きな♀でしたが、ほぼスレも無くそうした意味でもちょっと驚き。
個人的には意外だったのでネタにしてみました。
なお、九州高地(パキタが採れたともされるブナ、モミ・ツガ帯@@)で得られた本種というのは
なんかマユツバですね^^(海浜性のものが紛れ込んだのでなければ、たぶん別種でしょう)
タグ : キュウシュウハネナシサビカミキリ
カテゴリ : カミキリ
カスリドウボソカミキリは南は与那国、北は屋久島まで広く分布する、シロスジドウボソカミキリ属
(Pothyne)の中で一段と際立った最大種です。
何処にでも居るからと言って必ずしも普通種ではなく、やや遅めの出現期や分かり難い生息場所も
手伝って多数を確保するのは結構至難な種類です。
現在は1種4亜種で整理されているものの、奄美以北産を別種とする考え方を採る研究者も
居るようで、他のPothyne属の種類と共に将来的には分類的な変更が在り得る種でもあります。
屋久島からは従来知られていなかったため、最新の図鑑でも分布域から屋久島が欠落しています。
いずれにしても屋久島は最北端の分布の辺境地なので生息数は相対的に少ないものと思われます。
今季の屋久島では、僕以外の数名の採集者も含めて少なくとも6~7頭は得られています。
7月下旬にも拘らず微毛の揃った♀。
本種はスレ易いので、これほど綺麗な個体はちょっと驚き@@

残念ながら左前脚の腑節が欠けていました。
でも極端に少ない最北端産、意味在る標本です^^

なお本日、メルマガ「南虫ニュース」46号(今季遠征、奄美~屋久島・南大隅編)を配信しました。
一昨日に続く怒涛の配信。今号も長いです^^
タグ : カスリドウボソカミキリ
カテゴリ : カミキリ
今年の屋久島は盛夏に出現する虫を狙って7月一杯まで滞在しました。
照準を合わせた一つがヤクマルバネコブヒゲカミキリ。
本種は本土域のマルバネコブヒゲカミキリの親戚とも言える存在ですが、屋久島の高地にしか
生息していません。
出現が遅く、本土からの採集人が集うヤクシマホソコバネカミキリ(ヤクネキ)の時期には
やや早いため、本種を成虫で採集したことのある方は極めて少ないと思います。
僕もかつて冬に行った材採集で僅かに羽脱させたことがあるのみで、夏の屋久島には近年
足繁く通っているものの成虫で狙ったのは実は初めてでした。
それで実際に行ってみるとこれが極めて厳しい!
屋久島の高地というのはヤクスギやツガのとてつもない大木が散在、苔むした各種木々の樹肌、
昼なお静粛な雰囲気が漂う場所で、夜となるとその荘厳さがさらに増します。
そうした重々しい雰囲気の中でライトを照らして探すのですが、さっぱり見つからない・・・
1時間ほど探してやっと見つけた最初のヤクマルバネコブヒゲ♂

もうね、感覚的には全然居ないじゃん、の範疇と言って良く1~2時間にやっと1頭が見つかる
という感覚。
副産物としては高地性のゴミムシダマシ等が極少数見つかる程度。
真夏とは言え屋久島高地での採集というのはとても厳しいものなのです。
別の♂。

今年はネキ類等の発生状況から見ても季節が1週間程度進んでいると思われ、その結果本種や
先に紹介したヤクシマチャイロヒゲビロウドカミキリを7月中でもなんとか得られたのかな、とも
考えられます(もちろん両種とも極少数しか得られませんでした)。
それに今年はヒルが極めて多く、ヤクネキを狙って来ていた知人の多くがこれにやられていたので
林内探索にもちょっと腰が引けていたかなあと反省もしきり(ヒルには僕もやられました(泣))。
屋久島にはこれらの盛夏~晩夏性の珍種や秋が本番のヤクシマコブヤハズといった大物が居り、
「ネキが採れるかも・・・」と7月中旬の海の日あたりに数日訪れる程度ではなんともならない。
実に採集者泣かせのややこしい島なのであります^^
なお、本日メルマガ「南虫ニュース」45号(今季の波照間~西表島編)を配信しました。
さらに数日中に46号(奄美大島~屋久島・南大隅編)も配信しますので、併せてお楽しみに^^
(当方は信頼出来る有料メルマガ配信スタンドを使用していますが、お使いのメーラーによっては
迷惑メールボックスに入っている可能性もあるのでご留意方お願い致します。)
タグ : ヤクマルバネコブヒゲ
カテゴリ : カミキリ
今季遠征の最後の訪問地である屋久島・南大隅での活動を終え、地元へ戻っています。
3月から始めた約5カ月に渡る一連の南西諸島に係る長期遠征が終了しました。
長かったなあ・・・
何時もながら、ようやるわと自らも感嘆する次第^^
まずは疲れを癒し、夏場の地元採集に備えないとね。
屋久島高所で採集したヤクシマチャイロヒゲビロウドカミキリ♂。

こっちはデッカイ♀。嬉しい^^

近日中に2号連続してメルマガを配信する予定です。
初夏からの南の島々における、日本一詳しい昆虫事情が満載。
購読者さんは是非お楽しみに^^
カテゴリ : その他, カミキリ
今年のアマミホソコバネカミキリ(モリヤイ)、実質的にほぼ終了を迎えました。
明日は飛翔中の♂が幾つか見れるかな、と言ったところでしょう。
今年良い思いをしたのはほんの数人^^
彼女たち^^

本日採集の30ミリ、残念無念、左腕を損傷。エヴァンゲリオン初号機みたいに再生してくれんかな。
でも良いもんね、ここまでの大きさの個体はその存在が重要なのだ^^
5年分くらい(もっとだよな^^)良い思いをしたなあ。
こんなヤツ、たぶんもう一生採れません。
今年のモリヤイ、一気に出て一気に終わりました。
ふむ、今年のような梅雨明けの場合はとても判り易いわけね。
去年と今年でこのテのネキの発生パターンは完全に見切った感じ。
おじさん、連日の晴天でもうクタクタですわ。
昨日はもうちょっとでハブに噛まれるところだったし・・・
また消えます。
カテゴリ : カミキリ