カスリドウボソカミキリ | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

屋久島のドウボソカミキリ2題(2017.8.10)

本土域に最も近い南方の離島、すなわち熊毛諸島には従来、ドウボソカミキリ類は分布の広い
シロスジドウボソカミキリのみが知られていました。

ところが近年、屋久島にドウボソカミキリ属最大種のカスリドウボソカミキリが生息することが
分かり一部でブームとなっています(現図鑑には記載が無いため未だ一般的ではない)。
僕は生息域を独自に見つけ、ここ暫くは毎年採集しています。

ただ今年は屋久島の他の殆どのカミキリが例年より多かったのに対し、カスリドウボソは極めて
少なく僕は僅か1頭を得たに止まりました。全体でも二桁には満たなかったと思われます。

今のところ屋久島における本種の生息域は一地域に偏っており、決して狭いとは思えませんが
何より元々個体数が少ないのです。
分布の最辺境地ではどの種類でもそうなのでこれは仕方のないことかもしれません。本種の南方に
おける最辺境地(つまり南限)、与那国島では確か1頭の記録があるのみと記憶します。

ウダルような7月の暑さの平地でビーティングをやり続ける努力を強いられるので、屋久島では結構
キツイ虫です。
ただホストもほぼ分かったので今後は折に触れて幼虫も探して見たいと思います。

一方、今回の屋久島でこの時期には初めて採ったシロスジドウボソカミキリ本土亜種。
時期が遅いこともあり残念ながら片方の触角が破損しています。

熊毛諸島ではかつてGWの種子島でも成虫を採ったことがあります。
少なくとも本土域(もちろん熊毛諸島でも)では本種は材中で新成虫の形で越冬するため、春には
野外へ出て活動を始めます。
本来7月は活動期間を過ぎているのでこれまでこの時期に見ることが無かったのでしょう。
本種の南西諸島(特に八重山地方)の各亜種は基本的に珍品ですが、5~6月の屋久島ではそれほど
少なくはないと思っています。

ここ数年は珍品のはずのシロスジドウボソ八重山亜種ばかり採っていたので本土亜種の紋様が
とても新鮮。
今冬は忘れずに地元の海岸地方で成虫越冬中のシロスジドウボソを採っとかなきゃ。

いずれにしても、分布的、時期的に得難いドウボソカミキリを2種とも採集出来て面白かった
7月の屋久島でした。

西表島の他のドウボソカミキリ類とか、普通種とか(2017.5.24)

西表島で島暮らし中の自由人です。
昨日石垣島から知人が同宿に入って来られ、事前の石垣採集でも虫が居なかったとの弁。
僕は3月中旬からこっちで採集してんだから、知ってますよ^^

以前のブログ記事で、イマサカドウボソカミキリやイシガキシロスジドウボソカミキリが今年は極めて
少ないことを記述しました( え?普通は採れない?)。
では、他のドウボソ類はどうか。

カスリドウボソカミキリとか、

オオシマドウボソカミキリとか。

前段の珍品ドウボソ類と同様、これらもチョー少ない・・・
カスリドウボソは見栄えのする大型種なので昨年並みに採れればとても楽しいのですが、さすがに
毎年そういうわけにはいきませんね。
オオシマドウボソは近年急激に各島から姿を消しているので懸念が益々高まりますねえ。

一方、こちらはポティネ属の最普通種タテスジドウボソカミキリ。
普通種だからでしょうか、これだけは幾らでも落ちてきます。

普通種ではありますが、石垣産よりやや白っぽい感じがするので少しは標本を持っておいた方が
良いかもね。白っぽいと言っても亜種レベルで異なる波照間産とは事情が異なりますが。

普通種繋がりで他の種類も少し紹介しておきましょう。暇だし^^
これは特に出すまでも無いモモブトトゲバカミキリですが、アングル的に「トゲバ」状のエリトラが上手く
撮れたのでアップ。
沖縄のエラブモモブトトゲバもこうだったっけ。

普通種と言えば、来年から沖縄本島を主体に奄美を含めて周辺の島々をやり込む予定なので、
比較検討用に八重山のSybra属やRopica属、サビ、トゲバ類などの普通種が必要なので今更ながら
これらの採集に勤めています。
今年は虫が居ない中でもこうした普通種はそれほど個体数は少なくないので、こんな年はいつもは
気に掛けないこれらに向き合うのも良いかもしれません。
普通種だけにいざ必要になった場合にタトウに無い、という事態を防ぐとしましょう。

ホスト限定種で割と数が居るのがこれら。
オオハマボウの葉を齧るヒメスジシロカミキリ。

カラスウリ類の生蔓に居るタイワンヨスジシラホシサビカミキリ。

普通種としてしまうのはちょっと気がひけますが、ついでにこれも。
与那国産とは異なり、「ヨツスジ」模様がはっきりと発現する西表島のヨツスジカミキリ。

昨年は割りと居ましたが、ちょっと良いモノはことごとく少ない今年の西表島。
本種も例外ではありません。
今後暫く西表での長期滞在は無くなるだろうから、昨年もう少し頑張って採っておけばよかったかも。

そうそう、これも出しときましょう。
何のことは無い石垣島産と同じとされる普通種、イシガキウスアヤカミキリ。
1タトウくらい採って気付くことは、明らかに石垣では見られない斑紋パターンが認められることです。
三角形の外角に位置する3♀にご注目。写真が明るく斑紋が見え難いですが、これまで死ぬほど
石垣産を叩き落してきた僕がちょっと驚いたくらい。


下の2♂も同パターンですね。全体に対する割合は極めて低いですが、石垣ではまず見られません。

ウスアヤカミキリも南西諸島に広く分布し、各島で変異が見られるのでコレクションの対象としては
極めて重要な存在です。
ゴマフカミキリ類なども同様ですが、僕は勤めてこうした千差万別に変異する種類を細かく採り集める
ようにしています。

馬鹿にしたり面倒なので採らない人も多いのですが、後々後悔するのがいわゆる「普通種」です。
さて、あなたはどうしますか^^

北限の屋久島産カスリドウボソカミキリ(2016.8.7)

カスリドウボソカミキリは南は与那国、北は屋久島まで広く分布する、シロスジドウボソカミキリ属
(Pothyne)の中で一段と際立った最大種です。

何処にでも居るからと言って必ずしも普通種ではなく、やや遅めの出現期や分かり難い生息場所も
手伝って多数を確保するのは結構至難な種類です。
現在は1種4亜種で整理されているものの、奄美以北産を別種とする考え方を採る研究者も
居るようで、他のPothyne属の種類と共に将来的には分類的な変更が在り得る種でもあります。

屋久島からは従来知られていなかったため、最新の図鑑でも分布域から屋久島が欠落しています。
いずれにしても屋久島は最北端の分布の辺境地なので生息数は相対的に少ないものと思われます。
今季の屋久島では、僕以外の数名の採集者も含めて少なくとも6~7頭は得られています。

7月下旬にも拘らず微毛の揃った♀。
本種はスレ易いので、これほど綺麗な個体はちょっと驚き@@

残念ながら左前脚の腑節が欠けていました。
でも極端に少ない最北端産、意味在る標本です^^

なお本日、メルマガ「南虫ニュース」46号(今季遠征、奄美~屋久島・南大隅編)を配信しました。
一昨日に続く怒涛の配信。今号も長いです^^

カスリドウボソカミキリ、屋久島で近年発見される(2014.8.3)

屋久島で採集を行って行く上で 、ヤクシマホソコバネカミキリの次に片付けなければなあ、と
ため息をつきながら考えていたカスリドウボソカミキリを今回2♀採集出来ました。
屋久島では発見されたばかりの超・珍品のため、これは難儀をするだろうと思っていたのですが、
いつも採集を行っているマイポイントの近くでビーティングしていたら図らずも採れてしまいました@@

5年越しのヤクネキと併せカスリドウボソという難物まで手に入れることが出来て、2014年夏の屋久島は
僕にとり忘れ得ぬものとなりました^^

屋久島のカスリドウボソは確か数年前に屋久島在住の虫屋さんによって初めて採集され、その後に
別の方が採集された2頭が虫雑誌に発表されたと記憶します。
今年現地で確認したところでは、さらに1頭がまた別の現地の人によって採集されていました。

あれ、これまで地元の人しか採集していないのかな?
ちょっと定かではないのですが、それほど外部から来た採集者が真面目にビーティング採集等を行って
いないということなのでしょう。
昨年僕が初めて記録を出したムネスジウスバカミキリと言い、屋久島には年間あれだけの採集者が
入っているのに殆どがネキの有名ポイントや極一部の車で行ける高地帯等しか訪れないという証の
一つと言えると思います。

なお、カスリドウボソは最新の分類によると本邦では4亜種に分けられており、見方によれば2種に整理
出来るともされ扱いが難しい種類と言えます。
現段階では屋久島の個体群は最北の亜種(分布域は奄美大島、徳之島、トカラ宝島)に含まれると
見るべきですが、屋久島の特殊性を鑑みると将来的にはさらに分けられる可能性もあると思います。

今年5~6月頃石垣島にて八重山亜種をそこそこ採集しましたが、手許に在るこれら最南、最北という
両極端の個体群同士を比較して見るととても面白いですね。
来年の屋久島では是非追加を狙いたいと思います^^

あ、確か与那国でも記録があったからそこでも採らなきゃ。
モノに出来たら最南端、最北端の達成だ^^

カスリドウボソカミキリ、落ちた手応えがイイ^^(2014.5.21)

僕はドウボソカミキリの仲間が好きなのですが、その中で最も大きな種類がカスリドウボソカミキリです。
エリトラに縦筋があるだけの種類が多い中、名前のとおり「掠り模様」を散りばめた特異な斑紋を持った
シブいたたずまいでカッコ良いんですよねえ。

いわゆる珍品ではないのですが、生息場所にややうるさいこともあってなかなかお目にかかれないなと
感じている人は多いと思います。
八重山ではGW明け頃からようやく出始めるので、発生時期もそれに輪を掛けているようにも思います。

この時期にビーティングネットに落ちる種類の中では「手応え」のある虫ですね。
小型の♂はそうでもありませんが、大きな♀となると未だに「おおっ!」と呟いてしまいます。
昨年は探し方が拙くあまり採れませんでしたが、今回は丁寧にやっているので割と採っています^^

本種に限らずこの仲間が好んで集まるのは、こうしたツル性の植物が絡んだ茂みです。

でも落ちてくるのはほとんどこれ。
ザ・普通種たるタテスジドウボソカミキリ・・・

でも、ツボを得るとこのように巨大な♀が複数落ちることも^^

梅雨の晴れ間の密かな楽しみとなっています^^

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