リンゴカミキリ | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

熊本産リンゴカミキリの材採集(2019.12.10)

先月下旬の九州:大分(九重高原)で行われた九州虫屋連絡会の終了後、少し時間があったので
鹿児島空港へ向かう途中で郷里の熊本へ寄りました。目的はリンゴカミキリの材採集です。

九州中部のリンゴカミキリは基本的に体格が良く屈強で無紋の個体群です。なかなか時間が無く
細かな検証等は未だですが個人的にはサツマリンゴを含む九州南部産との関係性に興味津々。

現在は特に関東近郊やホストである桜類等のバラ科木本の植栽が盛んな地域では各地産が混じり合い
既に既存の個体群を維持出来なくなった場所が散見されます。
僕の今のポイントで採れるものは少年の頃に採っていたものの形態と全く同質なので、別産地の
個体群が混入していないことは確実です。
現代は昆虫類も外国産や別地域産の影響を大きく受けるようになったので注意が必要な時代に
なりましたねえ。

地元産のリンゴカミキリは奄美大島暮らしを始める直前に多数を材採集により確保していたのですが、
思う以上に人気が高く在庫はほぼスッカラカンになっていました。
マイコレも1~2ペアしか残っていない状態なので、夕刻の数時間を使って成果を得得るターゲット
としては最適でした^^

二年振りのマイポイントの桜並木は健在。一応公園内なので刈られる心配はないでしょう。
桜に薬剤が散布されるとリンゴカミキリも全滅しますが、此処は辺鄙な所なのでその心配も無し^^

此処のリンゴカミキリは二年前に材を粗方採って相当少なくなったかなと思いましたが、今回も
その時と同等程度の食痕が見つかり少し驚くと共に安堵しました。ある程度採っても一年寝かせると
全体の数にはほぼ影響は無くなるということなのかな。

未だ11月下旬なので材を採るにはちょっと早いかなとも思ったのですが、もうこの時期になると
来年に成虫になる終齢幼虫は例の独特の食痕をサクラの枝先に作っています。
その証拠、途中の枝に引っ掛かった終齢幼虫が切り落とした枝先(枝が多過ぎて分かり難いが)。

リンゴカミキリの終齢幼虫は、枝先を斜めに切り落として切り口の坑道に荒い木屑を詰めるので
よく目立ちます。こうした食痕があれば翌年晩春から初夏にかけて新成虫が羽脱してきます。
蛇足ですが、クスベニカミキリ類は切り落とした枝先の方に入りますが(つまり自分も枝と共に
落ちる)、リンゴカミキリ類は木の方に残るところが異なります。

ただ、枝先には共に中齢幼虫も居るので事故で一緒に採ってしまうこともあります。
リンゴカミキリ類はこのように生枝の先端を少しずつ切り落としていきます。

其処から5ミリほど根本側を輪切りにするとポッカリと空洞が現れ、さらに少し削ると幼虫の顔が
現れました。終齢幼虫に比べると食痕も含め一回り小さいですね。


始めたのが夕刻からだったので時間があまり無く、探す場所は多いもののじっくりとは出来なかった
ことが残念でした。上手く行けば1タトウ分くらいは出る(新成虫が)かな。
来年の楽しみがこれで一つ増えました^^

数年振りの地元産リンゴカミキリ幼虫の材採集(2018.2.20)

2月も下旬に入り、九州低地は寒さが和らぐ日もチラホラ出てきました。
「春」までもうちょっと。確実に今シーズンが近付く足音が聞こえます^^

今日は半日ほど空いたので、5~6年振りの地元(熊本低地)産リンゴカミキリの材採集を
行ってきました。
一般には低地性普通種のイメージが強い本種ですが、昔はあちこちで見かけたものの最近は
いざ探すと「あれ、居ない」といった必ずしもダモノとは言えない存在になって来たように思います。
(東京の一部海岸等のようなホスト植栽による「養殖場(真の産地は不明)」を除く)

ちょっとあちこちを探し回りましたが、運良く割と数が発生している一画を発見。
満足とまではいきませんでしたが、そこそこの数は採ってきました。

問題はホストのソメイヨシノがやや大樹、かつ元気が良いため次第に発生数が減っている
段階のようで、枝数の割には幼虫の数は少なく意外と苦労はしました。
本種に限らず、生木を食うタイプのカミキリはあまり大きな木を好まないのです(これ大事)。

下から見上げた食痕の様子。幾つかの食痕が見えます。

で、老熟幼虫は秋までに1~2年枝の先端部を斜めに切り落とし、荒い木屑で蓋をします。
こんな感じ。



枝を割って幼虫を確認してみます。
この時期はそのまま蛹室となる坑道の中で未だ活発に動いています。
かなり黄色っぽい色合いですね。

取り出した幼虫。
サペルディーニの中でも変わり種(成虫もだが)で、「エイリアン」のような顔付きが特徴的です。



このように春先までは幼虫の活性が高いため、材採集は出来ればサクラの葉や花が目立ち始める
直前が良いです。生木を食うタイプの幼虫の材採集は、可能な限り蛹化の直前を見計らって
行うのがベストです。事情が許せば成虫の羽脱直前が良いのは言うまでもありませんね。

幼虫を枝に戻した後は、しっかりとビニールテープで隙間なく巻いておきます。
水分さえあれば幼虫は長生きしますが、外敵にはいとも簡単にやられるのでこの作業は怠りなく
やりましょう。

久し振りにタダリンゴの標本がたくさん作れそうで、初夏の羽脱が楽しみですねえ^^
(ボクの地元産はカッコいいのだ!)

九州中部のタダリンゴカミキリ?(2013.12.1)

これまで意識していませんでしたが、近所(熊本市)のタダリンゴの標本を作っていて、「アレ?」と
気付きました。
コレってサツマリンゴじゃないの?

最新の文献によるとサツマリンゴの本来の生息地は九州南部となっており、完全に中部にカテゴライズ
される地元はこの分布域から外れています。
九州南部とは明らかに鹿児島および宮崎南部を指すわけですからね。

たまたま東京都産の同種の標本が近くにあったので比較してみました。
まず♂から。左が熊本県熊本市産、右が東京都産です。

エリトラ形状が違う、翅端のトゲが違う、腹端がエリトラから異様に飛び出している、
そして上翅側縁の黒色条はわずかに肩に届かない。

そして♀。
♂と一緒で熊本市産は一見してスマートですねえ。


やはり腹端がエリトラと比較してかなり長いのが目立ちます。
そして右の東京都産との比較で、上翅側縁の黒色条がどこまで肩に近づくかを見ると違いは歴然。
東京都産は全く肩に届きません。

うーん、やはり地元産は少なくとも関東産よりサツマリンゴに近いと言うべきだよな。
と言うか、その物じゃないの^^

実はサツマリンゴの記載者K氏(知人^^)は大学時代この辺に住んでいたんですよねえ。
タダリンゴ、採ったことなかったのかしら?

植木市で目に付いたカミキリ等のホスト(2013.2.25)

地元では、冬になると幾つかの大きな植木市が開催されます。
今日は庭いじりの好きな両親を連れてその一つに行って来ました^^

まあささやかな親孝行の一環ですが、僕としては蝶の飼育に使えそうな苗木があれば買ってこようという
プチ企てもありました。

ただ、やはり庭木向けの種類ばかりなので、虫の趣味に使えそうなものは殆ど無いというのも経験から
知っているのではありますが。

思った通り購入したくなるものは無かったのですが、虫屋(特にカミキリ屋^^)として目に付いた種類が
幾つかあったので、ご参考までアップしておきます。

ハイノキ。
九州ではモウセンハナ、ジャコウホソハナ、クロソンホソハナ等、やや得難いハナカミキリのホストです。
屋久島ではこれらに加えトガリバホソコバネ等も利用していますし、次種も含めハイノキ科の樹木には
小型種のカミキリがかなり付くので虫屋の知識としては欠かせない一群です。

クロキ。
ハイノキ科の中では南方地域で最も注意すべきものでしょう。
上の種類に加え、沖縄ではリュウキュウモウセンハナをはじめとしたハナカミキリ類、ニセコゲチャサビ、
各種グラフィラ属等、実に様々なカミキリのホストとなります。

近年ではオキナワナカボソタマも採れるのが確認されていますし、九州では冬季に花芽を蓄えるので、
サツマシジミの食樹としても重要です。

ソヨゴ。
モチノキ科の樹木はトゲウスバカミキリのホストとして知られていますが、多産地として有名な四国では
これが主なホストとなっています。
ソヨゴの南限は屋久島なので、採り難い大隅産、屋久島産スピニも当然食っているでしょう。
アオマダラタマムシも好んでモチノキ科をホストとして利用しています。

シキミ。
独特の芳香があり、クロモンヒゲナガヒメルリ、キイロイトヒゲカミキリのホストです。
毒性が強いらしく、僕も鹿児島の大隅半島でクロモンヒゲナガヒメルリ目的で散々材採集を行った後に、
これにやられたと思しき症状を患ったことがあります。扱いには注意すべき樹木かもしれません。

シマトネリコ。
南方ではアメイロカミキリの系統(広義の)が結構ホストとして利用しています。

レッドロビン。
カナメモチとオオカナメモチの交配によって育成された品種で、近年は都会の公園等でもルリカミキリが
手軽に採集できる庭木として親しまれていますね。場所によってはリンゴカミキリも利用しています。

リョウブ。
ホストとしてはあまり重要ではありませんが、花は夏の訪花性カミキリを狙う格好のポイントとなるので、
この樹肌は必ず覚えるようにしましょう。

以上、少ないですが採集の一助にでもなれば幸いです^^

リンゴカミキリの近所ジテコン採集( 2012.6.11)

梅雨の曇り空の中、ジテコンでお使いのついでに近所のリンゴカミキリを採りに行ってきました^^

向かうは自宅から徒歩でも5分位の神社で、幼小の頃からよく遊んでいた場所です。
参道の左右にあまり大きくないサクラが10本程あります。
ここでリンゴカミキリを採るのは中学時代以来でしょうか^^

右側にはかつてエノキ中木があって、クロマダラタマムシがしばしば幹を這っていました。
まだ小学生の頃でしたが、ヤマトタマムシには似ているけど何となく刺しそうで(^^)
手が出せなかった事を覚えています。
思い出すと笑っちゃいますが、今思えば惜しい話です。
晩春には夥しいヒオドシチョウの幼虫や蛹も見られましたが、現在は全く見られません@@

リンゴカミキリもかつてはあちこちで見かけましたが、数年前に東京から戻ってみると
ここ以外ではほとんど見られなくなっていました。
地元産のタダリンゴも標本を作っておこうと久しぶりに訪れたわけです。

東京では埴樹の影響で最近増えているようですが、産地が混ざり合って斑紋パターンが
いろいろ出てしまっているようです。
当地産は勿論昔ながらの純血で、全く無紋の個体群です^^

サクラの木にゆっくりと近付き葉裏を眺めます。
すると早速居ました^^


民家が隣接しているので建物が写り込みますが、それもまた現状の一端ということで^^


とりあえず2ペアだけ摘まんできました。
多数を見る事が出来たので、ここにはずっと居続けてくれるでしょう^^

リンゴカミキリがもう羽脱(2012.5.4)

室内で管理していたサクラの生枝から、もう気の早いリンゴカミキリが羽脱しました^^
冬の間は野外より暖かいため、生育がかなり早まったようです。
本来なら6月に入って出現するカミキリです。

東京近郊では近年、本種はかつてより増えて採りやすくなっているようですね。
しかし、私の地元では逆に少なくなりました。サクラに付く害虫を退治するため、薬剤が散布されている
ようです。

中学生の頃は自転車で近くの神社に行くと必ず幾つかのリンゴカミキリがサクラの葉裏に止っていた
ものですが、今ではほとんど見ることが出来ません。

下の写真はブドウの入っていた空き箱でサクラ小枝を産地ごとに管理している様子です。
右の箱に羽脱したリンゴカミキリが見えます^^

こうした厚紙で出来た箱はいろいろと使い道が広いので捨てずにとっておくと良いです。
密閉容器とは違うので蝶の飼育等に使っても病気が出ません^^

これが色付き始めたリンゴカミキリの蛹です。
つぶらな瞳が可愛いですね^^

なお、リンゴカミキリの幼虫が入っている材を冬場に見つけたい場合は、次の写真のように
幼虫によって先が斜めに切り落とされた枝を探すようにします。
幼虫が入っている場合は、写真のように荒い木屑が詰められているので分かりやすいと思います。

冬の間は幼虫の活性がまだ高いので、あまり早く枝を切ってしまうと良くありません。
出来れば、幼虫が蛹化の準備を始める春先に採るのがベストです。

巨峰の箱ですが、中に入っているのはブドウではなく「リンゴ」です^^

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