蝶 | 蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)

数年振りの盛夏の九州山地採集(2019.8.12)

ここ数年はタイミングの関係で地元:九州山地の高標高地帯における盛夏採集が出来ませんでしたが、
8月上旬に時間が採れたためナイター(月齢ギリギリ)やノリウツギの花掬いを行ってきました。
九州の高地も季節の多少の遅れから例年8月上旬にはほぼ散っているノリウツギの花が満開の状態で
盛夏の雰囲気は十分に堪能出来ました。

初日はライトフィット設置及びナイターから始める予定で午後から出発。未だ林内が見える時間帯に
直置き及び吊り下げライトフィットの準備を終え、見晴らしの良い地点でナイターのお店を開きます。
午後8時頃の点灯と共に少しずつ虫が集まってきますが、ほぼ駄蛾ばかり、しかも個体数が少ない。
奄美や屋久島と同様に九州本土でも「虫の出」が良くないと聞いていた通りで、甲虫ではたまに来る
ウンモンテントウ(九州では珍)やセリカ属ビロウドコガネ、面白そうなゴミムシ等を摘まみます。

生展翅が出来ないので蛾はセーブして採りますがカトカラ(シタバガ類)は狙いのヨシノキシタバ
には未だ早く1♂が来たのみ。ブナ帯なのに何故かアミメキシタバが5頭位来て驚きました。
他はビカビカのエゾシロシタバが少々、ゴマシオはかなり来ていました。

熊本市内の最高気温は37℃もあったのに標高1500メートル以上の此処での夜は寒く、車に退避
しながらテキトーに幕を見ていましたが、熊本県では珍種のキュウシュウシナ、フチグロヤツボシ
(いずれも♂)の両カミキリが来て嬉しい夜となりました。ただ完品なるも時期遅く採れた♂なので
共にエリトラがスレスレなのは仕方ないでしょう。九州産はこれも珍のコメツキガタナガクチキも
来てくれました。

翌朝はノリウツギの花に虫が集まる前にゆっくりフィット類の確認を行います。
良いものでは気の早いクロセダカコブ、コメツキガタナガクチキ、ダンダラコメツキ、オオキノコ、
そしてこれも気の早いキュウシュウオニクワガタ等が入っていました。

周辺にはヤナギが多くクロコムラサキも生息しています。以前よりは随分減ったものの今回は
ゆっくり確認出来たのでそれなりの個体数が見られ安心しました。数年後には地元に戻る予定と
しており、採集・飼育の優先種と位置付けています。
此処のは100パーがクロコムラサキ。リリースするので僕のキライな手掴み写真です。

巨大な九州産夏型ミヤマカラスアゲハ♂を捕獲。自らもアキリデス命、特に九州~屋久島の
ミヤマカラスは大人気なのでこれも地元回帰時には各産地・季節型の飼育を敢行します。
カラスザンショウやハマセンダン、エノキ等の植樹を植栽出来る「庭」も用意しないとなあ。
じゃあ、家もか? ハードル高過ぎ@@


 
そして陽が昇り気温が上がってからのノリウツギ花掬い。
これが全然ダメ(泣)。

かつてより花の分量は増えているくらい掬い甲斐があったものの良いカミキリ・甲虫は全く入らず。
全くの見掛け倒し。
ヨツスジハナ九州・四国亜種が多いくらいで後はタテジマハナ、ヒゲジロハナ、ミヤマクロハナ、
そしてトゲヒゲトラが少々・・・
本州以北の虫屋さんにはとても信じられないド貧果でしょうが、実は九州ではこうした事態が
珍しくありません。僕も関東甲信地方などでかつては何度も体験しましたが、場所によっては
パキタがたくさん、フタコブルリハナやイガブチ、オオヨツ、ルリハナ等の楽しいハナカミキリは
当然、多くのホソハナ類やピドニア類も当たり前、といった光景など九州では別世界なのです。
そう言えば今回ピドニアでさえ1頭も居なかった・・・

一つだけ良かったカンボウトラ♀。九州山地でもパキタの採れている宮崎県側では比較的得易い
ようですが熊本県側では珍品。特大個体で唯一嬉しかったもの。
  

そんなこんなで灯火関係はまあまあ、ノリウツギは撃沈という夏の九州山地マイポイント採集を
終えました。

次は今月下旬(月齢が良くなる頃)の「晩夏」における九州山地のナイター採集に赴く予定です。

トゲウスバカミキリ屋久島亜種、高山帯ゴミダマなど(2019.8.7)

今季屋久島でのちょこっと成果の第六弾、一連の報告はとりあえず今回で終了です。
最後はこれまでに取り上げなかった雑多な屋久島らしい虫達を紹介します。

今年の屋久島はヤクネキおよびギガン(アキヤマイ)のネキ等が全く不発、ポイントのリョウブの
花が咲かなかったことや、虫自体の発生が極めて不作だったこと、さらには虫の発生が例年より
1週間は遅れたことから多くの虫屋さんにとっては極めて厳しいシーズンだったと思います。
また、梅雨明けが7月20日過ぎといつまでも雨が止まなかったことも貧果に拍車を掛けたものと
思料します。

僕は各状況からネキ類には早々と見切りを付け、梅雨明けの7月最下旬にターゲットを絞り特定の
種類を狙ったので大多数の人達よりはトータルの成果は良かったものと踏んでいますが、利き腕の
故障から今年はビーティング・スウィーピングを全く行わなかったこともあり確保した標本数は
過去最低の結果となりました。

小型だが1頭だけ灯火に来てくれたトゲウスバ屋久島亜種♀
ナイターの成果も全くダメで、他採集者の分を合わせても本種はほんの数頭しか採れていません。

屋久島高山帯のみに現れるヒメエグリユミアシゴミムシダマシ
珍しい産卵場面及び滅多に無い二連発。割と成績は良かったものの時期的にほぼ♀ばかりでした。


同様に高所のみの稀種イリエヒサゴゴミムシダマシ
これも珍しい二連発。一応今年で恐怖の(オバQが出るので=ウソ)高山帯での夜間徘徊を一旦
卒業したので今後暫くは拝めない目算。

モリヒサゴゴミダマ、オニエグリゴミダマ
これらも屋久島で採集を始めた10年前に比べると随分減ってきました。


ベニモンオオキノコ
5ミリ程度の可愛らしい珍美オオキノコ。今期の夜間徘徊では僅か1頭しか見つからなかった・・・

ノムラハリオビハナノミ
屋久島はかつて大型ハナノミの宝庫と表現された時代もありましたが、今は昔・・・
近年大型ハナノミはとんと見られなくなりました。

ミヤマカラスアゲハ夏型♀
例年の如く今年も本種は不発で、確保したのはこの1♀のみ。大発生したのは過去10年に1回のみで
次に大量採集・飼育を楽しめるのはいつの日か。


今季屋久島の詳細は、次のメルマガ(9月配信)にまとめる予定です。

奄美大島産、フタオチョウ♀(2019.6.26)

尾根斜面を吹き上がって来た大きな白いタテハチョウ。姿の主は一発で分かります。
おお、フタオチョウの♀だ!

2017年から奄美大島で採れ始めた本来沖縄本島にしか居ないはずのフタオチョウ。
現実的には奄美で広範囲に広がっているようです。
自然状態での北上だ、あるいは人為的な拡散だ、など様々な意見が交わされているようです。
デリケートな問題も含むので個人的意見はメルマガにでも書きたいと思います。

いずれにしても最初に発見されて3年目。こっち(奄美)にも居付いちゃうんじゃないの?
奄美に住んでいる間に飼育くらい楽しんでみるかな^^

奄美、今どきのイワカワシジミ(2019.2.1)

昨日は昼間に25℃の夏日となったかと思えば、夕方前にはいきなり小型台風級の嵐に。
そして今日の気温は一気に10℃も低い15℃に。
一体、奄美の冬はどうなっているんでしょうねえ。全く安定せず常にフワフワした感じがしますわ。
どっしりとした冬の季節感が無く、どうも落ち着かないですね。

まあそれは良いとして、今手元にイワカワシジミの幼虫および蛹があります。
屋内飼育なのでさすがに野外よりは常に何℃かは高い環境下で管理しているのですが、全く暖房を
使わない部屋の暗所に置いているので自然状態とはそう大して変わりません。

一部の幼虫、蛹です。



それぞれが越冬態ということなのでしょうが、幼虫か蛹か、まちまちなんですね。
全ての幼虫が昨年12月中には摂食を止めたのですが、直ぐ蛹になって成虫になるのが居たり、
ある者は前蛹に近い形でじっとしていたりします(全くの前蛹ではないので多少動いたりもする)。
そして気が向いたら?たまに蛹に変態するヤツが居る。全く一貫性が無い。

野外でもこんな感じなんでしょうか。さすがに羽化までは至らないような気はしますが・・・
ただ数日前にモンキアゲハが飛んでいるのを見たので、イワカワも極一部が真冬にも親として
活動している個体が居るのかもしれません。ただ飛べるほど高温の日は連続しないし、吸蜜源や
幼虫の餌も無いので仮に羽化出来たとしてもそのうち死に至るのでしょう。もしかしたら、
成虫態でも越冬する?(と言うか低温期間をやり過ごす?)

12~1月に羽化したもの。喜べるほどの低温期型にはなっていない・・・
これからの羽化個体に期待、と。


今シーズンは人工採卵も駆使してイワカワシジミの大量飼育に励む予定です^^

奄美の本日の最高気温は24℃ (2018.12.22)

師走も20日を過ぎた本日、奄美大島の昼間の気温はグングン上がり、最高気温は24℃に達しました。
今日ほどではなかった昨日もかなり温かく、久し振りの短パン、Tシャツそしてノー・靴下で過ごせる
程です。
今日は久し振りに朝からフィールドへ出てきました。

路傍の花にはアサギマダラ、そしてリュウキュウアサギマダラが仲良く吸蜜しています。

日当たりの良い枝先では、数は少ないもののアマミウラナミシジミがテリトリーを張っています。
12月も下旬なのに^^

色付き始めたクチナシの実を見ていると、例の物陰が・・・

最終も最終、最も遅く成長中のイワカワシジミの幼虫です。これから蛹で越冬し、美しい春型として
来年3月頃に羽化してきます。
シーズン中の蛹は空になった実の中で見つかりますが、この時期は空っぽの実をいくら探しても
蛹を見ることはありません。越冬蛹は一体どこで冬を越すのだろうか・・・

飼育中のイワカワシジミの様子はいずれ記事にする予定です。
ちなみにアカボシゴマダラやアマミカラスアゲハといった大型種の飼育は奄美在住中は基本的に
行わないことにしました。そっちに住んでいるのに何故?と思われる方が殆どだと思いますが、
やっぱりアレもコレもは同時に出来ないのです。全ては選択と集中(近年の座右の銘の一つ)。
蝶や蛾、クワガタ等を飼育して遊べるのは「じーさん」になってからかもなあ、と思うこの頃。

他に林内で見た蝶はリュウキュウヒメジャノメ、キチョウ、ルリタテハくらいでしたが、ルリタテハは
明らかに産卵行動のようでした。この時期に産卵されたとして、成虫と卵(或いは若齢幼虫)の二態で
越冬するのかな?

人里近い公園では、ヒメシルビア、アオタテハモドキがそれぞれ結構飛んでいました。
いずれも低温期型をたんまり飼育しようと思っていたのですが上記の流れでとりあえず中止。
まあ、このヘンは何時でも出来るっしょ。

明日の最高気温は更に上がって25℃、昼頃までは天気のようなので明日も一応採集に出る予定。
その後の予報は雨マークが並ぶとともに、さすがに奄美も気温が下がってくるようなのでちょっと
頑張ってカミキリの材などを集めておこうと思います。

ヤノトラカミキリ長者を目指・・・さない^^ オオムラサキ幼虫も(2018.11.27)

先般幾つかの用件で地元・九州へ戻っていましたが、あろうことかカミキリ材が詰まった重い箱を
持ち上げたせいでいわゆる「ギックリ腰」になってしまいました。やっぱ歳ですなあ。
7~8割がた完治はしたものの未だちょっと野外での長時間の活動はキツイ・・・
よって今暫く先日九州での活躍の様子を記します。

大分・九重で開催された九州虫屋連絡会(一つ前の記事参照)から実家のある熊本市に向かう途中、
ヤノトラカミキリの材採集を行うべく阿蘇のマイポイントに寄りました。
(参考)
2017年夏のヤノトラカミキリ採集

場所は上記URLの阿蘇のポイントですが、今夏には既に昨夏発生したヤノトラの子孫達が順調に
エノキの枯木内で生育していることを確認していました。
(参考)
今夏段階のヤノトラ幼虫の食痕

今夏は細い枝を一本切って確認しただけでしたが、ふむふむ、当然ながら成虫はあちこちの枯れ枝に
産卵したようで食痕は広範囲に見られます。また断面に現れた食痕の太さも夏に比べると大きくなって
いることが確認出来ます。
ただ食痕の密度の高い部分はそれほど多くないため、あちこちを切るハメに陥りちょっとシンドイ。

とりあえず材箱の大きさに切り揃えた材の断面。勿論ヤノトラ長者を目指します。
ウソ、そんなつもりは全く無いが採れるものは仕方なかんべ。

どれ、幼虫はどれほど育っているかね、と幾つか割り出してみます。

いやあ、さすがヤノトラの子供達、おっきいおっきい。
トラカミキリではオオトラ、トラフに次ぐ巨大さで、これくらいの大きさがあるとテンションが
上がりますね。しっかり管理せねばとの意欲も膨らむものです^^


幾つかは菌糸カップにでも放り込んでみましょう。一般にトラカミキリは菌糸カップでは飼えない
(死亡または萎縮する)とされますが、全ての種類が本当に飼えないのか。そのヘンの検証も
面白そうです。
こうした検証・実験シリーズの成果はいずれ当方の個人媒体で公表していくつもりです。

当然近くにはエノキが多いので、蝶屋の遺伝子も持っている(^^)当方は気付くといつものように
オオムラサキの幼虫を探しておりました。
ただ奄美で飼育するわけにもいかず、2~30分程度で終了。成果はオオムラ5幼、ゴマダラ1幼。
僕が地元に戻って来ても一杯採れるように子孫をしっかり残せよ、と言いつつエノキ根本に戻しました。

で、冒頭の話に戻ります。採ったエノキ材の詰まったダンボール箱を車に積もうとエイッと
持ち上げた瞬間に「ギクッ」。
「!!!」
この状態で次記事の九州山地での材採集に向かうハメになってしまったのでありました。

奄美の晩秋の蝶を、少し観察(2018.11.7)

こうした泣き言はあまり書きたくないのですが、どうも何らかのアレルギー体質になっているようで
体調不良が長引いています。発症した頃に比べれば症状はかなり改善しているのですが、特に咳と
鼻詰まりがなかなか治りません。やはり歳ですかねえ。

というわけで、当初考えていたような秋~初冬の採集はとりあえず今年は諦める決意をしました。
少なくとも年末位までは激しい活動を控えて様子を見てみようと思います。
カミキリ等の材採りに傾注する頃にはそこそこ完治すれば良いかなあと。希望ですが。

そんな中、今日は最高気温が26℃にもなるという事で少し蝶の観察をしてきました。
勿論少しは採りましたよ^^

先般の台風24号の被害がことのほか大きく、未だ殆どの林道は通行止めが続いています。
よって勢い主要道沿いの行動ではありましたが、八重山方面と比較すると秋の蝶の個体数はそれほど
多くはないなあという印象ですね。やはりナンダカンダと言って奄美は本土・鹿児島の延長ですから。

目に付いたものと言えばツマベニチョウ、ジャコウアゲハ、モンキアゲハ、ナガサキアゲハといった
大型蝶に、ルリタテハ、アカタテハ、イシガケチョウ、タテハモドキ2種など。シジミはやはり
クロマダラソテツが優勢で煩わしく、他の種類を探すのが大変@@

ある一画で大型のブルーが結構飛んでいたので車を止めるとウラナミシジミでした。

本種は普通種とは言え低温期型は美しい上に大型で僕はとにかく好きな種類^^
ただ未だ最後の世代と言うわけではなさそうで、路傍のマメ科植物に固執して群れていました。
此処で低温期型の飼育材料が採れるなとマメ科草本のさやを見ると孵化直後の卵がありました。
でも未だ少ないのでこれからが産卵期でしょう。

ちょうど此処でツマベニの新鮮そうなヤツが飛んできたのでサッと採るとド完品@@
秋型?の個体は初めてなのでとても嬉すぃ^^ ♀も欲しいな。

で、大好きなイワカワシジミの様子を見に行くと、今度もまた「卵」の時期でアチャー。
ただこれからは低温期型が期待出来るのでスルーせずにちょっと卵を集めて飼育してみることに
しました。

この時期なので多くはないものの、10個程は確保。かつて関東各地や九州本土で散々ゼフの採卵を
やり込んだ身にとってはイワカワの採卵など赤子の手をちょっとだけ捻るが如し。
クチナシの実が激減する時期なので何時まで餌が調達出来るか不安ですが、美しい標本のためなら
頑張らなくてはなるまひ。

そんなこんなで体調のことも考えて数時間の活動を終えました。
やっぱり、蝶も面白いね^^

9月18日(火)夜、今期オークションの初出品を行います(2018.9.16)

いやいや、忙しさに首が回らなくなってきました。いえね、残念ながら採集に忙しいという事では
ありません。これからは僕にとって唯一の仕事の時節。オークションや昆虫フェアのための準備に
追われることになります。
もちろん採集も行うので、採集と仕事を両立させなければならないシーズンに入って行くわけです。

今日の主題の一つは告知です。オークション等にご興味の無い方には申し訳ない次第です。
今期初のオークション出品を今月18日(火)の夜に行います。詳しくは出品画面に表示しますが、
一連の基本的な流れは例年の様に以下の通りとなります。週始めに出品、週末日曜日の夜に落札終了、
その翌日からカウントして二日以内に取引ナビを頂き、金曜日までにご入金を頂くという流れです。
当方は基本的に在宅なので、上記をスムーズに行うため御連絡を頂けば直ちに返信します。
なお郵送費の値上げが2年前に行われましたが、据え置きは今期も引き続き行わせて頂きます。

でも毎年、オークション一回目の出品と東京大手町インセクトフェア(今年は10月11日開催)
(※後日記述:正しくは10月8日(体育の日)開催です。失礼しました)の準備が重なりいつも
この時期はてんてこ舞いの日々になりますねえ。まあ事業はそういうものだし、半年以内の労働で済み、
しかも在宅で出来るので泣き言を垂れている場合ではないですね^^
(利潤も極小だけど@@)

告知だけではナンなので、近所で採れる蝶の普通種の写真でも挙げておきましょう。
その普通種とは、外来種のクロマダラソテツシジミ。
この蝶、すっかり我が国に居ついちゃいましたね。珍種ならもっと注目されるのでしょうが、
かなりの普通種というデフレ体質のため近頃では誰も注目しなくなった感があります。

幼虫の集団に食われたソテツの若葉。堅い成葉はダメで、柔らかい新芽のみが餌となります。

多くの終齢幼虫はソテツの「ボール」の部分のヒダ内で集団で蛹化します。
「ボール」って? これです、雌花。この直上に新芽が出るわけ。

これを知っていると、蛹の採集が非常に楽です。何故か寄生率は甚だ低いですね。
飼育の労をとる必要が無いので、とても効率的にサンプルを集めることが出来ます。
殆どの蛹が羽化してくるので、採集は展翅出来る数に抑えるようにしましょう^^


でもね、普通種ではあるものの客観的には「美蝶」ではあると思うんですね。ブルー系のシジミの中でも
ケッコウなイケメンと思いますよ、僕は。変異は特に無いものの(あるかも?)季節型はあるし、
正直低温期型の♀は見事です。♂も決して悪くありません。
冬になる直前に「奄美大島産」の低温期型の標本もしっかり作っておきましょう^^

僕のコレクションとして標本箱に入れる判断の一つは珍種なのか、普通種なのかという珍品度の
基準だけではなく、「集めて楽しい」というコンセプトがあるので直感的に何らかの「美しさ」を
感じられるものは何でもアイテムとなります。あくまでも僕の場合ですが。

クロマダラソテツシジミだけではなく、イシガケチョウやテングチョウ、アカタテハなどの超普通種達も
こちらに居る間にしっかり展翅してコレクションを充実させていきたいと思っています。

阿蘇のクロシジミなど(2018.8.17)

せっかく年に一度の地元採集の機会があったわけなので、その際に確認した幾つかの蝶についても
ちょっと触れておきましょう。
僕が昆虫少年だった頃に比べれば随分と蝶の個体数は減りましたが、阿蘇の広大な草原においては
注意を払えば今も十分にこれらを観察することが出来ます。

最盛期は過ぎましたが夏の時期、最も阿蘇草原に特徴的な蝶の一つはクロシジミでしょう。
全国的にかなり局所的になってしまった本種も、ここ阿蘇草原では未だあちこちで見ることが可能
となっています。

路傍でチラチラとしている蝶を見て、直ぐクロシジミだと気付きました。
もうこの時期は写真の通りお腹の細っそりとした(産卵済みのため)♀しか居ません。

暫く見ていると、傍に居たクロオオアリがちょっかいを出し始めました。
クロシジミも逃げる様子は無く、両者が共生関係にあることがよく判ります。クロシジミは産卵を
促しているように見えましたが、近くにアブラムシのコロニーは無いし、第一に卵を既に産み尽くして
いる状態では何も起こりません。

近くの灌木枝先のアブラムシ・コロニーを探してみると、クロオオアリが何頭もアテンドしており
傍にパラパラとクロシジミの卵が産卵されているのが分かります。
そしてよく見ると、時期的に卵は既に孵化してしまっているようです。

逆光でよく分からなかったのですが、デジカメを近づけて接写してみたのが下の写真。
アブラムシ・コロニーの左側に、孵化したばかりのクロシジミの初齢幼虫が何頭も固まっているのが
分かります。

もしかするとクロオオアリが世話をし易いように当該幼虫を一か所に集めているのかもしれません。
あるいは幼虫が自発的に集合しているのかもしれないし、よく分からん。
いずれ本種はじっくり飼育してみるつもりで、地元にあっては何時でも飼育材料の確保は容易いでしょう^^

林道を歩いているとオオムラサキの♀が割と低くを飛びスギの枝先に留まりました。
これも逆光で分かり難い。もうちょっと低い所に留まってよ・・・

オオムラサキは随分減ったなあ。この辺りは食樹エノキが多いので未だ大丈夫でしょうが、樹液の出る
クヌギが昔ほどは無いし、なんだかんだ言って開発が進み環境は悪化するばかりなのが原因でしょう。
この辺りではミズイロオナガシジミとか、キマダラモドキ、スジグロ・ヘリグロチャバネセセリなども
殆ど居なくなったしなあ・・・

また路傍では湿った部分で阿蘇でも局所的なヒメシロチョウが数頭給水していました。
時期的に未だ♂しか出現していないようです。

阿蘇での分布は食草ツルフジバカマの分布から東部に偏る傾向があり、祖母山近辺には多い場所が
あるのですが、それ以外の所ではあまり目にしません。この日は数頭一度に見れたのでラッキー
でした。

ヒメシロチョウは中国地方の産地が喪失したので中部地方から九州まで一気に分布の空白が出来て
います。
環境の変化に相当弱い種類なので未だ地元では健在と言ってもちょっと注意しておくべき蝶です。
いつまでも優雅にチラチラ飛ぶ姿を見ていたいものです。

(参考)6年前の記事です^^
地元のヒメシロチョウ多産地における採集風景

なお本日早朝(フェリーの名瀬港着は朝5:00)、奄美大島の自宅に戻りました。
これからの時期は僕にとって未知の世界、晩夏以降の奄美大島を堪能していきます^^

オオシロモンセセリ、クロセセリの幼虫の区別点(2018.7.4)

日本産セセリチョウの中でもオオシロモンセセリおよびクロセセリは、大型かつ美麗、蝶屋の
コレクション欲をくすぐってくれる佳蝶です。

コレクターにとってセセリチョウの最も不都合な部分は、極めて羽がスレ易く他の蝶と比較して
完全な標本を得難い事でしょうか。
ネットに入れると羽化直後の美しい個体でも高速でバタバタ、バタバタと休みなく羽ばたき、どんなに
丁寧に扱っても鱗粉がある程度剥げ落ちてしまうのです。
セセリチョウの人気がイマイチなのは、展翅のやり難さに加えてそうした扱い難い部分を嫌う人が
多いことも一因だと思います。

これを防ぐ最も効率的な手法が飼育です。
ただオオシロモンセセリ、クロセセリ共に幼虫はショウガ科のゲットウ(月桃)をホストとし、
互いによく似ているので正確に同定しなければなりません。
これまでの観察で両種の終齢幼虫の写真が撮れたので区別点をお知らせします。

オオシロモンセセリ終齢幼虫

クロセセリ終齢幼虫

実は区別は簡単、オオシロモンセセリの頭部は真っ黒ですが、クロセセリのそれには写真のように
黒地に四つの明るく大きな斑紋があるので間違えようがないのです^^

珍品度からどうしてもオオシロモンの方をより求めるので、巣を暴いてクロセセリの幼虫が
出てくるとガッカリしますが、僕の経験上ゲットウから採れる幼虫はかなりの割合でオオシロモンの
確率が高いように思います。

クロセセリはゲットウ以外にミョウガも餌とするため、ミョウガに居る幼虫は全てクロセセリ
ということになります(上記クロセセリ幼虫が留まっているのもミョウガ)。

今日のネタは簡潔な事項ですが知っているか否かではフィールドでの成果が異なってきます。
両種の完全な標本を得たい方(そして飼育好きな方)は是非ご参考に^^

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